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聖女と魔王と魔女編
夏をなくす
しおりを挟む「無様ねと笑おうと思っていたの。
でも、今はもうどうでもいいわ」
「人の領域で悪さをするものではないよ。
それを学ぶには遅かったようだがね」
「うそつき。
誰も幸せになれなかったじゃない」
床に伏したもの。
それを二人の神が見ていた。
「本当に女の子っておっかないなぁ」
闇の固まりが呟いた。
近くにある光るものが少し首をかしげたのが見えた。
「そういえば、あれの妹がなにか最後聞いてたみたいだけど、知ってる?」
「先代の王について。
王城にいたときはほとんど、女神だったようだからね。少しは気にしていたのかと思ったようだよ」
「なんて答えたわけ?」
「なにも。
なにを言われているか全く理解していない顔をしていた。それで理解したんじゃないかな。彼の王は、道具でしかなかった、ということ」
「そこに少しでも情があれば違っただろうな。あの子は優しいから」
闇は少しだけ憐れむように床のものを見た。
彼女の願いならば少しは考えてもよかった。ほんの一部見逃すくらい。砕けて壊れてしまうほどに脆い一部ならばと。
だが、とちらりと光へ意識を向けた。
光は許しはしないだろう。
なににも干渉しないのは、苛烈すぎるからだ。あれは遠くの出来事であるとかかわりができないものであるとしておかなければ、干渉しすぎる。
闇ほどに何でも呑み込みはしない。その代わりに、光に染めるのだ。
「さて、喰らってしまおう」
光と闇で半分ずつ。
声もない悲鳴ごと飲み込んだ。
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