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『ある列車』
しおりを挟む深い森を縫って電車が走る。
眠たくなるような線路の鼓動は
とく、とく、と間延びしている
窓枠に凭れ掛かって
霞む山達を眺めて
また何か微睡むように目を閉じる。
車内は話し声以外に静かだ。
キィと鳴きながら列車が止まって
扉が開くと
蝉の声と熱気が乗り込んでくる。
いつの間にか窓枠に1匹
物思いに耽る羽虫がいて
何が見えるでもない
山ばかりの外の景色を
ただじっと眺めていた。
あと30分もすれば終点だ。
深く、暗く、優しい
秘める様な深い森。
青く澄んだダム湖の
悲しい水の中の町。
その青に沈んだ廃線と
それを見下ろす終点は
ただ揺らぐ蝉の声に
灼かれるようであった。
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