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第十七話 ニンゲンちゃん捕まえた!
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俺はまず魔力で大豆畑を作った。ぽんっ。
それから大豆を城の地下蔵に送り込み、地下蔵に向かう。
大豆と塩を瓶に詰め込み、その二つを合成するイメージをした。
ぽぽんっ。
「おおっ!」
瓶の中には見慣れた茶色の液体が波打っていた。
匂いを嗅ぐと、芳しく醤油が香った。
「醤油の生成に成功! やったぜ、いえー!」
俺は一人でひとしきり騒ぐ。
それから。
「……割に合わないな」
肩を落としたのだった。
たかだか調味料を瓶一本分作る為に食糧地を一つ作るのと同等くらいの魔力を消費してしまった。
食糧地と違って継続的に調味料を得られるワケではないし、割に合わない。
魔界の陣地をもっと増やして魔力に余裕が出るまでは合成で調味料を作るのはやめにしようと結論付けた。
俺の魔力は新たなモンスターを作るのに使ったりとか、もっと大事な利用法がある。
「魔王様、大変です!」
地下蔵で実験をしていた俺の元にセバスチャンが飛び込んできた。
「ピクシーからの報告で、新たに魔界化した領地の近くをうろついている人間を発見したとのことです!」
セバスチャンからの報告を聞き、そういえば新たに増やした陣地の方には哨戒用のスライムをまだ放ってなかったなと思い出したのだった。
やべっ、醤油作ってる場合じゃなかった。
後で忘れずにスライムを放っておかねば。
「その人間は魔界に入ったのか?」
「いえ、まだだと思います。もしも入ったのであれば魔王様が感知できているはずでございますから」
なるほど。
確かに魔界に何者かが入って来たという異常を感じた覚えはない。
「セバスチャン、今すぐ直行しその人間を生け捕りにしてこい!」
「は! ……は、生け捕り?」
俺の言葉に反射的に返事をした後、セバスチャンは何て言われたのか理解して目を丸くした。
「出でよ、イビルフラワー!」
俺はその場で植物状のモンスターを一体生成する。
うねうねと蔦を動かす緑色のモンスターが出現した。名前はイビルフラワーだがまだ蕾のようで花は咲いていない。
「これは、ドライアドのワンランク下の……!」
「こいつの蔦で人間を捕まえてこい、分かったな」
「かしこまりました!」
セバスチャンはイビルフラワーを抱えると、羽を動かして飛んでいった。
セバスチャンが飛んでいくと、俺はニヤニヤを抑えきれなくなった。
やったやった、これで人間を飼えるぞ!
どんな名前を付けよっかな。
「魔王様、陣地付近を徘徊していた人間を生け捕りにして地下牢に入れました」
「でかした!」
しばらくして戻ってきたセバスチャンに報告を受けると、俺はすぐさま地下牢に様子を見に行った。
「うわぁ……」
牢の中の様子を見て思わず呻いてしまった。
中では一人のおっさんが緑色の蔦に四肢を縛り上げられ、口の中に触手の一本を突っ込まれていたからだ。
「イビルフラワーはああして人間を嬲って魔力を吸い取ろうとする習性があるのです」
セバスチャンがにこにこと解説する。
縛り上げられたおっさんを絶句して眺めていると、イビルフラワーが今まさにおっさんの下衣の中に触手を潜り込ませようとしているところだった。
「ああだめだめ、そんなの食べたらお腹を壊すよ。牢の中から出て来なさい」
イビルフラワーに声をかけると、彼は大人しく蔦を引っ込めて牢の中から出てきた。セバスチャンが素早く牢の扉を閉じて鍵を閉める。
「外で光合成でもしてなさい」
イビルフラワーに命じて彼を地下から追い出した。
ついさっきまで触手を上の口に突っ込まれていた人間のおっさんは床に蹲って咳き込んでいる。
人間は顎髭の生えた中年の男だった。栗色の体毛なのがリスっぽくて俺は気に入った。顔つきもしゅっとしていて可愛らしい。
質素な服装だから、おそらく人間の中では平民階級なのだろう。
「さていかがされますか魔王様。拷問してどこから来たのか吐かせますか?」
「拷問? まさか。可愛いニンゲンちゃんにそんなの可哀想だよ。こいつは俺のペットにするんだ」
その言葉にニンゲンちゃんが牢の中から俺を見上げ、茶色い瞳を大きく見開いたのだった。怖がってるのかな。可愛いね。
「ペット……? この魔力の全然ない醜悪な生き物を? 魔王様、本気ですか?」
「何を言ってるんだよセバスチャン、ほら見てみろこのくりくりのお目目を。可愛いだろう?」
「愛玩用ならばアルミラージなど、もっと魔力を豊富に持った美しい生き物が他にいるではないですか」
どうやらセバスチャンの審美眼では魔力をもっていればいるほどその生き物は美しいという判断基準になるらしかった。もしかしたら悪魔には魔力の多寡で魂がより美しく見えたりするのかもしれない。
かくいう俺も魔王としてこの世界で目を覚ましてからというもの、魔力量の全然違う人間を自分と同じ生き物だとは思えなかった。見た目だけならば俺も人間とほぼ変わらない姿をしているのに。
「ほらニンゲンちゃん、チチチチ」
格子の間から手を出して人間を撫でようとしたが、人間は大仰に仰け反って牢の奥まで逃げてしまった。臆病な子だ。
これが野良猫ならば餌をちらつかせればいずれ寄って来る。
ニンゲンちゃんにも餌付けしてみることにしよう。
「よしセバスチャン、焼きおにぎりを作ってくれ!」
「焼きおにぎり……?」
早速、新兵器醤油の威力を試す時が来たのだ!
それから大豆を城の地下蔵に送り込み、地下蔵に向かう。
大豆と塩を瓶に詰め込み、その二つを合成するイメージをした。
ぽぽんっ。
「おおっ!」
瓶の中には見慣れた茶色の液体が波打っていた。
匂いを嗅ぐと、芳しく醤油が香った。
「醤油の生成に成功! やったぜ、いえー!」
俺は一人でひとしきり騒ぐ。
それから。
「……割に合わないな」
肩を落としたのだった。
たかだか調味料を瓶一本分作る為に食糧地を一つ作るのと同等くらいの魔力を消費してしまった。
食糧地と違って継続的に調味料を得られるワケではないし、割に合わない。
魔界の陣地をもっと増やして魔力に余裕が出るまでは合成で調味料を作るのはやめにしようと結論付けた。
俺の魔力は新たなモンスターを作るのに使ったりとか、もっと大事な利用法がある。
「魔王様、大変です!」
地下蔵で実験をしていた俺の元にセバスチャンが飛び込んできた。
「ピクシーからの報告で、新たに魔界化した領地の近くをうろついている人間を発見したとのことです!」
セバスチャンからの報告を聞き、そういえば新たに増やした陣地の方には哨戒用のスライムをまだ放ってなかったなと思い出したのだった。
やべっ、醤油作ってる場合じゃなかった。
後で忘れずにスライムを放っておかねば。
「その人間は魔界に入ったのか?」
「いえ、まだだと思います。もしも入ったのであれば魔王様が感知できているはずでございますから」
なるほど。
確かに魔界に何者かが入って来たという異常を感じた覚えはない。
「セバスチャン、今すぐ直行しその人間を生け捕りにしてこい!」
「は! ……は、生け捕り?」
俺の言葉に反射的に返事をした後、セバスチャンは何て言われたのか理解して目を丸くした。
「出でよ、イビルフラワー!」
俺はその場で植物状のモンスターを一体生成する。
うねうねと蔦を動かす緑色のモンスターが出現した。名前はイビルフラワーだがまだ蕾のようで花は咲いていない。
「これは、ドライアドのワンランク下の……!」
「こいつの蔦で人間を捕まえてこい、分かったな」
「かしこまりました!」
セバスチャンはイビルフラワーを抱えると、羽を動かして飛んでいった。
セバスチャンが飛んでいくと、俺はニヤニヤを抑えきれなくなった。
やったやった、これで人間を飼えるぞ!
どんな名前を付けよっかな。
「魔王様、陣地付近を徘徊していた人間を生け捕りにして地下牢に入れました」
「でかした!」
しばらくして戻ってきたセバスチャンに報告を受けると、俺はすぐさま地下牢に様子を見に行った。
「うわぁ……」
牢の中の様子を見て思わず呻いてしまった。
中では一人のおっさんが緑色の蔦に四肢を縛り上げられ、口の中に触手の一本を突っ込まれていたからだ。
「イビルフラワーはああして人間を嬲って魔力を吸い取ろうとする習性があるのです」
セバスチャンがにこにこと解説する。
縛り上げられたおっさんを絶句して眺めていると、イビルフラワーが今まさにおっさんの下衣の中に触手を潜り込ませようとしているところだった。
「ああだめだめ、そんなの食べたらお腹を壊すよ。牢の中から出て来なさい」
イビルフラワーに声をかけると、彼は大人しく蔦を引っ込めて牢の中から出てきた。セバスチャンが素早く牢の扉を閉じて鍵を閉める。
「外で光合成でもしてなさい」
イビルフラワーに命じて彼を地下から追い出した。
ついさっきまで触手を上の口に突っ込まれていた人間のおっさんは床に蹲って咳き込んでいる。
人間は顎髭の生えた中年の男だった。栗色の体毛なのがリスっぽくて俺は気に入った。顔つきもしゅっとしていて可愛らしい。
質素な服装だから、おそらく人間の中では平民階級なのだろう。
「さていかがされますか魔王様。拷問してどこから来たのか吐かせますか?」
「拷問? まさか。可愛いニンゲンちゃんにそんなの可哀想だよ。こいつは俺のペットにするんだ」
その言葉にニンゲンちゃんが牢の中から俺を見上げ、茶色い瞳を大きく見開いたのだった。怖がってるのかな。可愛いね。
「ペット……? この魔力の全然ない醜悪な生き物を? 魔王様、本気ですか?」
「何を言ってるんだよセバスチャン、ほら見てみろこのくりくりのお目目を。可愛いだろう?」
「愛玩用ならばアルミラージなど、もっと魔力を豊富に持った美しい生き物が他にいるではないですか」
どうやらセバスチャンの審美眼では魔力をもっていればいるほどその生き物は美しいという判断基準になるらしかった。もしかしたら悪魔には魔力の多寡で魂がより美しく見えたりするのかもしれない。
かくいう俺も魔王としてこの世界で目を覚ましてからというもの、魔力量の全然違う人間を自分と同じ生き物だとは思えなかった。見た目だけならば俺も人間とほぼ変わらない姿をしているのに。
「ほらニンゲンちゃん、チチチチ」
格子の間から手を出して人間を撫でようとしたが、人間は大仰に仰け反って牢の奥まで逃げてしまった。臆病な子だ。
これが野良猫ならば餌をちらつかせればいずれ寄って来る。
ニンゲンちゃんにも餌付けしてみることにしよう。
「よしセバスチャン、焼きおにぎりを作ってくれ!」
「焼きおにぎり……?」
早速、新兵器醤油の威力を試す時が来たのだ!
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