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第十六話 ソラのお見舞い!
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「あっ、あー、ちょっと待って下さい!」
リュウとソラにあてがわれた城の一室を訪ねると、慌てたようなリュウの返事が返ってきた。
しばらく待っていると、汗だくでズボンだけ履いた上半身裸のリュウが扉を開けた。
セバスチャンが前もって見舞いに行っても大丈夫か確認を入れたはずなのだが、一体何をしていたのだろう。
「お見舞いですね、兄ちゃんも喜びます!」
リュウの尻尾はソワソワと揺れているから、入ってもいいのだろう。
犬ではなく立派なモンスターである彼らの感情を尻尾で推し量るのは読心術を使っているようで気が引けるのだが、見えるものは見えるのだから仕方ない。
「兄ちゃん、魔王様だぞ!」
部屋の奥に嬉しそうに声をかけるリュウの後に続いて部屋に足を踏み入れた。
ソラはベッドに横になっており、俺たちが姿を現すと上体を起こした。
リュウと同じく上半身裸である。下半身も裸かどうかは毛布に隠れていて分からない。
傷があると思われる場所には裂いた布が巻かれていた。
「魔王様……! 我々に名付けをして下さった御恩、一生忘れません!」
ソラは開口一番に礼を口にした。
「今はそういうのはいい。傷の具合はどうだ?」
「魔界の陣地内にいると微量ながら魔力が回復するようで、リュウの助けもあって豊富な魔力によりだいぶ傷は小さくなってきています。ただ、血が足りないようで起き上がろうとするとふらふらするのです」
「後で生肉を持って来ましょう。お二人の活躍により肉ならたっぷりあるのです」
セバスチャンがニコニコと口にする。
どうやらブラックドッグの二人は生肉の方が好きらしい。
「それなら二人にはレバーの部位も持って行ってくれ、セバスチャン」
「かしこまりました」
何はともあれ、ソラの傷が治りそうで良かった。
とはいえまだまだ安静にさせなければならないし、リュウもソラに『治療行為』をしてあげたいことだろう。
二人には当分の間休んでいてもらわなければ。
領土をさらに拡げるのは少し延期した方がいいかもしれない。
それにしても視線が気になる。
自分の格好には慣れてきたつもりだったが、リュウとソラが加わったことにより再び気になってきた。
服が欲しい。もっと文明的な格好がしたい。せめて下着くらい穿きたい。
しかし人間の町にお出かけしてショッピングをしようにも、人間の金を持ってないし服を買うための服がないし、そもそも人間の町がどこにあるのかも分からないのだった。
ちなみにセバスチャンに服をねだるつもりはない。彼が俺にまともな服を着せる気があるのならば最初から渡しているだろう。
お見舞いの後はセバスチャンが予告した通り、肉たっぷりの昼食を振舞われた。
俺の分の肉はきちんと調理されていた。
美味かったが、調味料があれば豚丼になるのに……と少し残念な気もした。
そろそろ挑戦すべき時が来たようだ――調味料作りに。
「なあセバスチャン」
リュウたちにレバーを含めた生肉を届け終わったセバスチャンに俺は声をかける。
「前の俺は発酵食品とかどうやって作ってたんだ? というかそもそも発酵食品って食べてた?」
「はっこう……?」
「ええと、バターとかチーズみたいな加工した食品って食ってた?」
言い直すと意を得たようにセバスチャンはにこりと頷く。
「ああ、それでしたら魔王様の御力を使えば牛や羊の乳から直接作り出せるそうでございます」
「俺の力?」
セバスチャンに詳しいことを聞くことにする。
「私の知識では、魔王様は魔界の中でならば物と物を合体させて新しい物を作り出すことができるそうです。その力を利用して加工食品を作り出していたようです」
「ほう」
そんな力があるなんて初耳だ。
「合成にも魔力を消費しますからね。よく注意して使って下さいね魔王様。いきなり蔵一杯の食糧を全部加工するとかは駄目ですよ」
「はいはい分かった分かった」
こうして俺は調味料を手に入れるための手がかりを入手したのだった。
リュウとソラにあてがわれた城の一室を訪ねると、慌てたようなリュウの返事が返ってきた。
しばらく待っていると、汗だくでズボンだけ履いた上半身裸のリュウが扉を開けた。
セバスチャンが前もって見舞いに行っても大丈夫か確認を入れたはずなのだが、一体何をしていたのだろう。
「お見舞いですね、兄ちゃんも喜びます!」
リュウの尻尾はソワソワと揺れているから、入ってもいいのだろう。
犬ではなく立派なモンスターである彼らの感情を尻尾で推し量るのは読心術を使っているようで気が引けるのだが、見えるものは見えるのだから仕方ない。
「兄ちゃん、魔王様だぞ!」
部屋の奥に嬉しそうに声をかけるリュウの後に続いて部屋に足を踏み入れた。
ソラはベッドに横になっており、俺たちが姿を現すと上体を起こした。
リュウと同じく上半身裸である。下半身も裸かどうかは毛布に隠れていて分からない。
傷があると思われる場所には裂いた布が巻かれていた。
「魔王様……! 我々に名付けをして下さった御恩、一生忘れません!」
ソラは開口一番に礼を口にした。
「今はそういうのはいい。傷の具合はどうだ?」
「魔界の陣地内にいると微量ながら魔力が回復するようで、リュウの助けもあって豊富な魔力によりだいぶ傷は小さくなってきています。ただ、血が足りないようで起き上がろうとするとふらふらするのです」
「後で生肉を持って来ましょう。お二人の活躍により肉ならたっぷりあるのです」
セバスチャンがニコニコと口にする。
どうやらブラックドッグの二人は生肉の方が好きらしい。
「それなら二人にはレバーの部位も持って行ってくれ、セバスチャン」
「かしこまりました」
何はともあれ、ソラの傷が治りそうで良かった。
とはいえまだまだ安静にさせなければならないし、リュウもソラに『治療行為』をしてあげたいことだろう。
二人には当分の間休んでいてもらわなければ。
領土をさらに拡げるのは少し延期した方がいいかもしれない。
それにしても視線が気になる。
自分の格好には慣れてきたつもりだったが、リュウとソラが加わったことにより再び気になってきた。
服が欲しい。もっと文明的な格好がしたい。せめて下着くらい穿きたい。
しかし人間の町にお出かけしてショッピングをしようにも、人間の金を持ってないし服を買うための服がないし、そもそも人間の町がどこにあるのかも分からないのだった。
ちなみにセバスチャンに服をねだるつもりはない。彼が俺にまともな服を着せる気があるのならば最初から渡しているだろう。
お見舞いの後はセバスチャンが予告した通り、肉たっぷりの昼食を振舞われた。
俺の分の肉はきちんと調理されていた。
美味かったが、調味料があれば豚丼になるのに……と少し残念な気もした。
そろそろ挑戦すべき時が来たようだ――調味料作りに。
「なあセバスチャン」
リュウたちにレバーを含めた生肉を届け終わったセバスチャンに俺は声をかける。
「前の俺は発酵食品とかどうやって作ってたんだ? というかそもそも発酵食品って食べてた?」
「はっこう……?」
「ええと、バターとかチーズみたいな加工した食品って食ってた?」
言い直すと意を得たようにセバスチャンはにこりと頷く。
「ああ、それでしたら魔王様の御力を使えば牛や羊の乳から直接作り出せるそうでございます」
「俺の力?」
セバスチャンに詳しいことを聞くことにする。
「私の知識では、魔王様は魔界の中でならば物と物を合体させて新しい物を作り出すことができるそうです。その力を利用して加工食品を作り出していたようです」
「ほう」
そんな力があるなんて初耳だ。
「合成にも魔力を消費しますからね。よく注意して使って下さいね魔王様。いきなり蔵一杯の食糧を全部加工するとかは駄目ですよ」
「はいはい分かった分かった」
こうして俺は調味料を手に入れるための手がかりを入手したのだった。
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