俺魔王だけど、悪魔の執事に溺愛されてたくさんエッチなことされて美味いもんたらふく食わされてます

野良猫のらん

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第十話 作戦会議します!

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 翌日。

 最近では自分の格好にも慣れてきて、マントで中のワンピースというかチュニック的な格好を隠すのを忘れるようになってきた。
 考えてみればセバスチャンと俺しかいないのだから誰かに見られるワケでもないからな。
 確かにセバスチャンがじっと俺のことを見つめていることはあるが、あれは多分身体ではなく魂の色とやらを見ているのだと思う。

 さて今日は何をしようかなと考えていると、窓から飛び込んでくる者があった。
 燐光を散らして翅をパタパタさせているその姿は、昨日斥候に出したピクシーだった。

「キヒキヒキヒッ」

 ピクシーは楽しそうに笑っている。
 偵察に行った先で辛いことがあったワケではなさそうで一安心だ。

「斥候が戻ってきたのですね。早速報告させましょう。ピクシー、この羊皮紙に偵察してきた場所の地図を記しなさい」

 セバスチャンがテーブルに手早く羊皮紙と羽ペンを用意した。

「キヒッ」

 ピクシーは笑いを漏らすと、羽ペンを身体全体で掴んで一生懸命に地図を描き出した。彼は何をしている時も楽しそうで非常によろしいと思う。

 そんな小さな身体でペンを上手く扱えるのかな、と思っていたらピクシーはまるで他の紙に描かれたものをコピー機で転写したかのように恐ろしく緻密な地図を描き上げたのだった。……うわお。

「ふむ、なかなか興味深いですね」

 セバスチャンの感心した声はピクシーの地図を描く腕前についてではなく、地図の内容についてのようであった。

「魔王様、ご覧ください」

 地図には魔界化した陣地の周辺についての地形などが描かれていた。

「この辺りはずっと草原が続いているようでございます。草原地帯から吸い取れる魔力量は平均的なものです。ですが、ここ。ここに森がございますね?」
「ああ」

 地図を見下ろして頷く。
 魔界の周りのほとんどは草原が続いているようだが、端にポツリと森が描かれている。

「どのくらい深い森であるかまでは確かめてこなかったようですが、ともかくここに森があることは確かです。そして深い森であればあるほど魔界化すれば多くの魔力を吸い取れるのです」

 そこまで聞いてセバスチャンの言いたいことが理解できた。

「つまりこの森の方に向けて魔界の陣地を伸ばしていった方がいいということだな?」
「ええ、その通りでございます。しかしこちらをご覧ください」

 セバスチャンが一点を指し示す。
 そこには何やらよく分からない四足歩行の怪物の絵が描かれていた。

「これは何だ?」
「恐らくこれははぐれモンスターを見かけたのでしょう」
「はぐれモンスター?」

 きょとん、と首を傾げた。

「ええ、前の魔王様に生み出され、人間たちに狩られずにこの世界に棲み付いたモンスターの子孫です。それゆえ、魔王様に忠誠を誓っていません。はぐれモンスターは魔王様が相手でも理性なく襲い掛かってくることでしょう」
「森を魔界化するためにはそのはぐれモンスターを倒さなければならないということか」

 セバスチャンが首肯する。
 それに合わせてピクシーもうんうんと頷いている。

「それならはぐれモンスターを倒すための兵がいるな。スライムを連れて行けば倒せそうなのか?」

 俺はピクシーに質問した。
 ピクシーはぶんぶんと首を横に振っている。

「陣地の哨戒をさせているスライムは対人間に特化した大きさですからね。以前にもお伝えした通り、スライムの主な攻撃法は相手の顔を身体で包み込んで窒息死させることです。この絵を見る限り巨大なモンスターのようです。このような巨大なモンスターを窒息死させるにはスライムたちの体積が足りないでしょう」

 なるほど、モンスターたちには適した相手というものがあるようだ。

「この四本足の……イノシシ? のようなはぐれモンスターを討伐するにはどのようなモンスターが適任だと思う?」

 俺はセバスチャンに意見を求めた。

「ふふ、魔王様が自分の頭で色々考えられるようになってきたようで、成長を感じますね。それはともかくとして、適任者ですか、ふむ……」

 セバスチャンは顎に手を当てて考える。
 俺も頑張ってどんなモンスターがいるか思い出そうとする。
 イノシシなんて所詮草食動物だ。いや雑食だったような気もするが、ともかく肉食動物には敵わないに違いない。

「よし、狼のモンスターにしよう。ヘルハウンドだ!」
「良い選択かと存じますが、ヘルハウンドはまだ魔王様には無理でございます。ワンランク下のブラックドッグにいたしましょう」

 セバスチャンのアドバイスに従い、ブラックドッグを生み出すことに決めた。

 何をするとどれくらい魔力が減るのか掴めてきた。
 俺の魔力では三頭のブラックドッグを生産して魔力切れするかどうかといったところだ。スライムよりもだいぶ複雑な構造をしていて、ピクシーよりもだいぶ大きいブラックドッグは魔力もずいぶんと食うらしい。

「……二頭で倒せると思うか?」

 魔力切れはなるべく起こすなと言われたから、安全を期すならば生産できるのは二頭。
 俺はセバスチャンとピクシーに意見を求める。

「作戦と相手次第でしょうか。もし魔王様の手に負えないクラスのモンスターであれば、傍から見ただけでそれと分かる魔力圧を放っているはずです。その場合は逃げ帰るとして、そうでないのならブラックドッグが二頭もいれば作戦次第でいかようにでもなるでしょう」

 セバスチャンの言葉に、ピクシーもこくりと頷いている。

「もしよほど弱いモンスターであればブラックドッグをただ放つだけで勝利できるでしょうが、ピクシーの彼がわざわざ地図に描き入れたということは要注意の敵だということ。そうですね?」

 こくこくとピクシーは頷きを繰り返した。

「作戦次第、か……」

 俺は地図に視線を落とし、よくよく考えてみることにした。
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