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第六話 オコメ美味しい!
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「こちら野兎の香草蒸しでございます」
香草を添えた兎肉の皿が目の前にそっと置かれる。
俺が兎の形が残っていることを嫌がったので、肉は綺麗に切り分けられている。
どうやらこの世界には香り付けに使える野草がそこら辺に生えているようだ。
「こちらが炊き立てのオコメでございます」
ファミレスで頼むライスのようにご飯が平たい皿に盛られて出てきた。
まだほかほかと湯気を立てている。
皿には俺の希望通りおこげが添えられていた。
肉も米もどちらもすごく美味しそうだ。
ところで兎の肉だけを食べているとウサギ飢餓という状態になってしまう。
兎の肉にはほとんど糖質や脂質が含まれていないから、肉を食べているのに餓死するという羽目に陥るのだ。
まあ今回は米という主食があるので関係はない。
そもそもこの魔王の身体が人間と同じ栄養分を必要としているかどうかすら定かではない。
主食と主菜だけになってしまったから、次は野菜が採れる食糧地を作ろうと心に決めながら手を合わせる。
「いただきます!」
「……」
セバスチャンは俺が手を合わせたのに片眉を上げたが、何も言わなかった。
きっと妙なお祈りだなーと思ったのだろう。
まずはスプーンでご飯をすくって――お箸が欲しいところだ――念願の白米を口に運んだ。
「美味しい!」
粒々のお米を噛み締めると、口の中で甘味と旨味が広がった。
収穫したばかりの新米はそれだけでご馳走だった。
俺が晴れやかな笑顔になると、セバスチャンも嬉しそうにニコニコとしている……きっと俺の魂の輝きを喰っている最中なのだろう。
それからフォークを手に取って兎の蒸し焼きに手を伸ばす。
柔らかい蒸し焼き肉に容易にフォークが刺さる。その感触にもう口の中に入れる前から美味であろうことが予想されて、唾が出てくる。
そして想像は裏切られなかった。
柔らかく蒸された肉は口の中で解けるようだ。
兎肉自体の味は淡泊だが、一緒に蒸された香草のおかげか刺激的な味付けになっている。少しバジルに似た風味だ。
ご飯も肉も美味し過ぎてすぐに食べ終わってしまった。
ふう、満足満足。
「ご満足いただけたようで何よりです。では、少しの休憩を取ったら次なる仕事に参りましょう」
「そうだね。次は野菜の畑を作らなきゃ」
俺の言葉にセバスチャンは眉を上げた。
「何を仰っているのです? それよりも先にすべきことがございますよ」
先にすべきこと?
一体それは何だろう。
「それはもちろん、魔王様の魔界にモンスターを生み出すことでございます」
「モンスター……!」
そうだ、今の俺たちには軍隊が足りないではないか。
理想の魔王軍を作らねば……!
「……非常にワクワクしてらっしゃるところ悪いのですが、流石にいきなり軍隊は無理ですよ。今の魔王様の魔力量では」
魂の色を見て取るセバスチャンに釘を刺されてしまった。
なんだ、魔王軍は無理なのか。がっくし。
そういうことで次は魔界の陣地の中にモンスターを生み出すことになった。
香草を添えた兎肉の皿が目の前にそっと置かれる。
俺が兎の形が残っていることを嫌がったので、肉は綺麗に切り分けられている。
どうやらこの世界には香り付けに使える野草がそこら辺に生えているようだ。
「こちらが炊き立てのオコメでございます」
ファミレスで頼むライスのようにご飯が平たい皿に盛られて出てきた。
まだほかほかと湯気を立てている。
皿には俺の希望通りおこげが添えられていた。
肉も米もどちらもすごく美味しそうだ。
ところで兎の肉だけを食べているとウサギ飢餓という状態になってしまう。
兎の肉にはほとんど糖質や脂質が含まれていないから、肉を食べているのに餓死するという羽目に陥るのだ。
まあ今回は米という主食があるので関係はない。
そもそもこの魔王の身体が人間と同じ栄養分を必要としているかどうかすら定かではない。
主食と主菜だけになってしまったから、次は野菜が採れる食糧地を作ろうと心に決めながら手を合わせる。
「いただきます!」
「……」
セバスチャンは俺が手を合わせたのに片眉を上げたが、何も言わなかった。
きっと妙なお祈りだなーと思ったのだろう。
まずはスプーンでご飯をすくって――お箸が欲しいところだ――念願の白米を口に運んだ。
「美味しい!」
粒々のお米を噛み締めると、口の中で甘味と旨味が広がった。
収穫したばかりの新米はそれだけでご馳走だった。
俺が晴れやかな笑顔になると、セバスチャンも嬉しそうにニコニコとしている……きっと俺の魂の輝きを喰っている最中なのだろう。
それからフォークを手に取って兎の蒸し焼きに手を伸ばす。
柔らかい蒸し焼き肉に容易にフォークが刺さる。その感触にもう口の中に入れる前から美味であろうことが予想されて、唾が出てくる。
そして想像は裏切られなかった。
柔らかく蒸された肉は口の中で解けるようだ。
兎肉自体の味は淡泊だが、一緒に蒸された香草のおかげか刺激的な味付けになっている。少しバジルに似た風味だ。
ご飯も肉も美味し過ぎてすぐに食べ終わってしまった。
ふう、満足満足。
「ご満足いただけたようで何よりです。では、少しの休憩を取ったら次なる仕事に参りましょう」
「そうだね。次は野菜の畑を作らなきゃ」
俺の言葉にセバスチャンは眉を上げた。
「何を仰っているのです? それよりも先にすべきことがございますよ」
先にすべきこと?
一体それは何だろう。
「それはもちろん、魔王様の魔界にモンスターを生み出すことでございます」
「モンスター……!」
そうだ、今の俺たちには軍隊が足りないではないか。
理想の魔王軍を作らねば……!
「……非常にワクワクしてらっしゃるところ悪いのですが、流石にいきなり軍隊は無理ですよ。今の魔王様の魔力量では」
魂の色を見て取るセバスチャンに釘を刺されてしまった。
なんだ、魔王軍は無理なのか。がっくし。
そういうことで次は魔界の陣地の中にモンスターを生み出すことになった。
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