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第五話 オコメ炊いた!
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当然のことながら城の厨房には炊飯器などなかった。
お米はかまどで炊くことになる。
かまどで炊くと美味しいらしいので俺はワクワクとしていた。
米俵を軽々と担いだセバスチャンが厨房に俵を下ろす。
俺をお姫様抱っこで運んだくらいだ、米俵も楽勝というわけか。
厨房には炊飯器はないが一通りの調理器具は揃っている。
鍋を使って米を炊くことにした。
まずは米俵を解いて米を取り出そう。
ええと、米俵って一体どう開くんだ?
俺は適当なところを掴んで引っ張ってみる。
ふんぬぅぅ……!
「魔王様、ここをこうして解くのではありませんか?」
「あ、そうか」
セバスチャンがスイスイと紐を解いていく。
「魔王様、作業は私が行いますので指示だけお願いします」
「はい」
これも他人を動かす練習の一端なのだろうが、戦力外通告を受けた気分になってしょんぼりとセバスチャンの作業を見守った。
「水と米は同量になるように鍋に入れてくれ」
「かまどに火を入れてくれ」
「はじめチョロチョロ、中パッパと言って……」
俺が指示するとセバスチャンはそれを的確にこなしてくれた。
悪魔って火の起こし方まで知ってるんだね。すごいなぁ。
セバスチャンと一緒にかまどの火加減を見張り、必要な時には調整を加えて米が炊き上がるのを待つ。
しばらくすると、炊き上がった米の美味しそうな匂いが漂い始めた。
「仄かに甘いような……不思議な香りですね」
「炊き上がったら一緒に食べような」
俺が提案すると、セバスチャンは微かに悲しげな顔をした。
「いえ、私は食べられません。悪魔は魂の輝きを喰らう種族ですので」
「えぇ……っ!?」
てっきりセバスチャンも一緒に食べれるものと思っていた。
それじゃあ彼は俺のためだけに苦労して米を炊いてくれたのか!
かまどで炊いたお米のおこげの味も知ることができないなんて!
「魔王様の優しさだけで私はお腹いっぱいですよ」
せめて彼の前では魂とやらをいっぱい輝かせてお腹をいっぱいにさせてあげなければと思ったのだった。
魂の輝きとは感情の揺らぎ……うん?
俺、セバスチャンの前ではずっと動揺しっ放しじゃないか?
セバスチャン、今すごくお腹いっぱいなんじゃないのか?
「ふふ、だから貴方様の"優しさ"でお腹がいっぱいだと申しましたでしょう?」
セバスチャンが悪戯っぽく微笑んだ。
彼のその表情で、「お米を食べられないなんて可哀想!」という感情の動きすら彼にとってはご馳走だったのだと察した。
むしろ彼の方が「魔王様は魂の輝く様を目にすることが出来ないなんて可哀想」と思っているのかもしれなかった。
その後、しっかり蒸らしてから鍋の蓋を取った。
途端に白い湯気がセバスチャンの顔を包み込む。
濃霧のような湯気が薄れると、炊き立ての新米が姿を現した。
水の分量も間違っていなかったようだ。ふっくらつやつやで美味しそうだ。
「これがオコメですか」
「ああ、これが主食になるんだ」
セバスチャンはしげしげと炊けた米を眺めている。
「野兎の蒸し焼きも出来上がっていることでしょう。それでは食事にいたしましょうか、魔王様」
あらかじめセバスチャンが獲ってきた兎も同時進行で窯で蒸し焼きにしていたのだ。
これは豪勢な昼食になりそうだ。
お米はかまどで炊くことになる。
かまどで炊くと美味しいらしいので俺はワクワクとしていた。
米俵を軽々と担いだセバスチャンが厨房に俵を下ろす。
俺をお姫様抱っこで運んだくらいだ、米俵も楽勝というわけか。
厨房には炊飯器はないが一通りの調理器具は揃っている。
鍋を使って米を炊くことにした。
まずは米俵を解いて米を取り出そう。
ええと、米俵って一体どう開くんだ?
俺は適当なところを掴んで引っ張ってみる。
ふんぬぅぅ……!
「魔王様、ここをこうして解くのではありませんか?」
「あ、そうか」
セバスチャンがスイスイと紐を解いていく。
「魔王様、作業は私が行いますので指示だけお願いします」
「はい」
これも他人を動かす練習の一端なのだろうが、戦力外通告を受けた気分になってしょんぼりとセバスチャンの作業を見守った。
「水と米は同量になるように鍋に入れてくれ」
「かまどに火を入れてくれ」
「はじめチョロチョロ、中パッパと言って……」
俺が指示するとセバスチャンはそれを的確にこなしてくれた。
悪魔って火の起こし方まで知ってるんだね。すごいなぁ。
セバスチャンと一緒にかまどの火加減を見張り、必要な時には調整を加えて米が炊き上がるのを待つ。
しばらくすると、炊き上がった米の美味しそうな匂いが漂い始めた。
「仄かに甘いような……不思議な香りですね」
「炊き上がったら一緒に食べような」
俺が提案すると、セバスチャンは微かに悲しげな顔をした。
「いえ、私は食べられません。悪魔は魂の輝きを喰らう種族ですので」
「えぇ……っ!?」
てっきりセバスチャンも一緒に食べれるものと思っていた。
それじゃあ彼は俺のためだけに苦労して米を炊いてくれたのか!
かまどで炊いたお米のおこげの味も知ることができないなんて!
「魔王様の優しさだけで私はお腹いっぱいですよ」
せめて彼の前では魂とやらをいっぱい輝かせてお腹をいっぱいにさせてあげなければと思ったのだった。
魂の輝きとは感情の揺らぎ……うん?
俺、セバスチャンの前ではずっと動揺しっ放しじゃないか?
セバスチャン、今すごくお腹いっぱいなんじゃないのか?
「ふふ、だから貴方様の"優しさ"でお腹がいっぱいだと申しましたでしょう?」
セバスチャンが悪戯っぽく微笑んだ。
彼のその表情で、「お米を食べられないなんて可哀想!」という感情の動きすら彼にとってはご馳走だったのだと察した。
むしろ彼の方が「魔王様は魂の輝く様を目にすることが出来ないなんて可哀想」と思っているのかもしれなかった。
その後、しっかり蒸らしてから鍋の蓋を取った。
途端に白い湯気がセバスチャンの顔を包み込む。
濃霧のような湯気が薄れると、炊き立ての新米が姿を現した。
水の分量も間違っていなかったようだ。ふっくらつやつやで美味しそうだ。
「これがオコメですか」
「ああ、これが主食になるんだ」
セバスチャンはしげしげと炊けた米を眺めている。
「野兎の蒸し焼きも出来上がっていることでしょう。それでは食事にいたしましょうか、魔王様」
あらかじめセバスチャンが獲ってきた兎も同時進行で窯で蒸し焼きにしていたのだ。
これは豪勢な昼食になりそうだ。
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