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第四話 オコメ作った!
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「あれだけ私の精を注ぎ込んだのですから、孕んでくれていると嬉しいのですが」
翌朝。
セバスチャンは俺の腹を愛おしげに撫でてうっとりと呟いた。
「男同士なんだから孕むわけないだろ」
「おや。魔王様、忘れてしまわれたのですか?」
俺が掠れた声で反論すると、セバスチャンは意外そうに眉を上げた。
え? まさか……?
「魔王様はナカ出しされると稚児を孕むことができる身体なのですよ」
う……嘘だろー!?!?!?
「もしも無事孕めば魔王様はそのうち卵を産むことになります」
「卵生!? 俺卵生なの!?!?」
乳首もヘソもあるのに、俺は卵生の生き物らしい。
「その卵を地中に埋めておけばやがて芽が出ます」
「植物!?!? 動物ですらなかった!?!?」
魔王の生態、摩訶不思議過ぎ!?
「やがて魔王樹と呼ばれる大木へと成長し、千年に一度花を咲かせます。その花は大きな実を付けます。その実の中に私と魔王様の稚児となる赤ん坊が生まれるのです」
子孫を残すのに千年かかるの!? スパン長っ!
「まずは卵が生まれるかどうかですね。魔王様が孕める確率はあまり高くありませんから」
「孕んでたらやっぱり腹が膨らんできたり……」
「いえ、体型にはあまり変化は出ません。……やはり魔王様からは勇者に倒される前の記憶のほとんどが失われてしまっているようですね」
セバスチャンは心配そうに眉を下げた。
彼は純粋に心配してくれてるし、忠誠心も高いのだと思う。
ただ、そう、気を抜くとあわよくば俺のことを食べようとしてくるだけで。
「デキると知ってたらあんなにたくさんナカ出しを許したりしなかったのに……」
「……? どうしてでしょう、子孫を残せることは良いことでは?」
魔族であるセバスチャンに俺が日本で培った倫理観は通用しない。本気で理解ができないという顔をしていた。
その時、ぐきゅるると俺の腹の音が鳴った。
そういえば蘇ってから何も食べていない。
「魔王様、外に出ましょう。食料を確保するのです」
昨日よりもさらに多くの魔力が身体に漲っているのを感じる。
魔界化した土地から吸い上げた魔力のおかげだろう。
昨日よりもさらに多くのことができそうだ。
城の外へと出た。
魔界化しても城の周りがひたすらに緑の草原であることには変わりはない。
「それでは魔王様、食糧を作りましょう」
「食糧を……作る?」
「正確には食材が採れる土地を作るのです。魔界化した領域内はすべて魔王様の自由になりますから。甘い木の実のなる木が生えているのでも、小麦畑でもなんでもご自由に想像して下さい。ただし、城からはある程度離して下さいね」
城はいずれ拡張するので、城のすぐ隣に畑なりを作ってしまったらいずれ潰すことになってしまうらしい。
セバスチャンは好きなものを想像すればいいと言った。
俺は思った。和食が食べたいと。
好きなものを何でも食べられるのであれば和食が食べたい。
いくらなんでも和食がぽんぽん自動的に湧き出てくる土地というのは想像ができないので、まずは和食の基本となる米を生産することに決めた。
水田が城から見えると気持ちが良いと思うので、城から見える位置に設置するイメージで米の実った田んぼを想像する。
そして身体の中に魔力を巡らせる。ぽんっ。
一反ほどの面積だろうか。
季節を無視して稲穂を実らせた米でいっぱいの水田が出現した。
「おめでとうございます、最初の食糧地ですね。ええと……これは変わった麦畑ですね」
このように食糧を生産するための土地のことを食糧地と呼称するようだ。
セバスチャンが羽を羽ばたかせて空中から水田の出現を確認する。
米を見たことのない彼はそれを麦だと思ったようだ。
「もしかして飯を食うためにはこれからこの米を収穫して脱穀しなければならないのか?」
「いいえまさか。この穀物を城の中に入れるイメージさえすれば、最適な状態で城の地下蔵に保存されますよ」
セバスチャンの言葉に俺は眉を顰めた。
いくら魔王だからって収穫と脱穀が全自動だなんて、そんなことがあり得るだろうか。
俺は疑い半分で試しに米を収穫して城の中に入れる想像をした。
ぽんっ。
いっぱいに実っていた稲穂が一瞬で消失し、空っぽの水田が残された。
「!?」
俺は急ぎ足で城へ戻り、地下蔵とやらを見に行く。
「地下蔵はこちらでございます」
空を飛べるセバスチャンの方が戻ってくるのが早かった。
彼に先導されて地下蔵へと下りた。
「おお……!」
米俵が十俵ほどだろうか。
地下蔵の隅っこに整然と積み重なっていた。
ワイン樽の方が似合いそうな西洋の城の地下室に米俵が詰まれているのがシュールだった。
「これで主食ができましたね。それでは私は魔王様のために動物でも狩ってきましょう」
「そうか。じゃあ俺は米を炊いておこう」
セバスチャンの申し出に頷く。
どうやら動物は土地から自動的に獲ることはできないらしい。
「そうですか、コメを……え!?」
セバスチャンが驚いた顔をした。どうしたのだろう。
「だってお米を炊くのには時間がかかるし、何もしないで待ってるワケにはいかないし」
「いえ、そうではなく魔王様が自ら!?」
「そうだよ。だってセバスチャンはお米の炊き方知らないだろ?」
俺の言葉に彼は目を丸くする。
それからキッと眉を怒らせた。
「私の知らないことであれば、私に教えて下さい! 魔王様、自分が動かなくて済むように他者を動かすのが上に立つ者のすべきことですよ!」
セバスチャンに叱られてしまった……。
俺はセバスチャンにお米の炊き方を教えることになったのだった。
翌朝。
セバスチャンは俺の腹を愛おしげに撫でてうっとりと呟いた。
「男同士なんだから孕むわけないだろ」
「おや。魔王様、忘れてしまわれたのですか?」
俺が掠れた声で反論すると、セバスチャンは意外そうに眉を上げた。
え? まさか……?
「魔王様はナカ出しされると稚児を孕むことができる身体なのですよ」
う……嘘だろー!?!?!?
「もしも無事孕めば魔王様はそのうち卵を産むことになります」
「卵生!? 俺卵生なの!?!?」
乳首もヘソもあるのに、俺は卵生の生き物らしい。
「その卵を地中に埋めておけばやがて芽が出ます」
「植物!?!? 動物ですらなかった!?!?」
魔王の生態、摩訶不思議過ぎ!?
「やがて魔王樹と呼ばれる大木へと成長し、千年に一度花を咲かせます。その花は大きな実を付けます。その実の中に私と魔王様の稚児となる赤ん坊が生まれるのです」
子孫を残すのに千年かかるの!? スパン長っ!
「まずは卵が生まれるかどうかですね。魔王様が孕める確率はあまり高くありませんから」
「孕んでたらやっぱり腹が膨らんできたり……」
「いえ、体型にはあまり変化は出ません。……やはり魔王様からは勇者に倒される前の記憶のほとんどが失われてしまっているようですね」
セバスチャンは心配そうに眉を下げた。
彼は純粋に心配してくれてるし、忠誠心も高いのだと思う。
ただ、そう、気を抜くとあわよくば俺のことを食べようとしてくるだけで。
「デキると知ってたらあんなにたくさんナカ出しを許したりしなかったのに……」
「……? どうしてでしょう、子孫を残せることは良いことでは?」
魔族であるセバスチャンに俺が日本で培った倫理観は通用しない。本気で理解ができないという顔をしていた。
その時、ぐきゅるると俺の腹の音が鳴った。
そういえば蘇ってから何も食べていない。
「魔王様、外に出ましょう。食料を確保するのです」
昨日よりもさらに多くの魔力が身体に漲っているのを感じる。
魔界化した土地から吸い上げた魔力のおかげだろう。
昨日よりもさらに多くのことができそうだ。
城の外へと出た。
魔界化しても城の周りがひたすらに緑の草原であることには変わりはない。
「それでは魔王様、食糧を作りましょう」
「食糧を……作る?」
「正確には食材が採れる土地を作るのです。魔界化した領域内はすべて魔王様の自由になりますから。甘い木の実のなる木が生えているのでも、小麦畑でもなんでもご自由に想像して下さい。ただし、城からはある程度離して下さいね」
城はいずれ拡張するので、城のすぐ隣に畑なりを作ってしまったらいずれ潰すことになってしまうらしい。
セバスチャンは好きなものを想像すればいいと言った。
俺は思った。和食が食べたいと。
好きなものを何でも食べられるのであれば和食が食べたい。
いくらなんでも和食がぽんぽん自動的に湧き出てくる土地というのは想像ができないので、まずは和食の基本となる米を生産することに決めた。
水田が城から見えると気持ちが良いと思うので、城から見える位置に設置するイメージで米の実った田んぼを想像する。
そして身体の中に魔力を巡らせる。ぽんっ。
一反ほどの面積だろうか。
季節を無視して稲穂を実らせた米でいっぱいの水田が出現した。
「おめでとうございます、最初の食糧地ですね。ええと……これは変わった麦畑ですね」
このように食糧を生産するための土地のことを食糧地と呼称するようだ。
セバスチャンが羽を羽ばたかせて空中から水田の出現を確認する。
米を見たことのない彼はそれを麦だと思ったようだ。
「もしかして飯を食うためにはこれからこの米を収穫して脱穀しなければならないのか?」
「いいえまさか。この穀物を城の中に入れるイメージさえすれば、最適な状態で城の地下蔵に保存されますよ」
セバスチャンの言葉に俺は眉を顰めた。
いくら魔王だからって収穫と脱穀が全自動だなんて、そんなことがあり得るだろうか。
俺は疑い半分で試しに米を収穫して城の中に入れる想像をした。
ぽんっ。
いっぱいに実っていた稲穂が一瞬で消失し、空っぽの水田が残された。
「!?」
俺は急ぎ足で城へ戻り、地下蔵とやらを見に行く。
「地下蔵はこちらでございます」
空を飛べるセバスチャンの方が戻ってくるのが早かった。
彼に先導されて地下蔵へと下りた。
「おお……!」
米俵が十俵ほどだろうか。
地下蔵の隅っこに整然と積み重なっていた。
ワイン樽の方が似合いそうな西洋の城の地下室に米俵が詰まれているのがシュールだった。
「これで主食ができましたね。それでは私は魔王様のために動物でも狩ってきましょう」
「そうか。じゃあ俺は米を炊いておこう」
セバスチャンの申し出に頷く。
どうやら動物は土地から自動的に獲ることはできないらしい。
「そうですか、コメを……え!?」
セバスチャンが驚いた顔をした。どうしたのだろう。
「だってお米を炊くのには時間がかかるし、何もしないで待ってるワケにはいかないし」
「いえ、そうではなく魔王様が自ら!?」
「そうだよ。だってセバスチャンはお米の炊き方知らないだろ?」
俺の言葉に彼は目を丸くする。
それからキッと眉を怒らせた。
「私の知らないことであれば、私に教えて下さい! 魔王様、自分が動かなくて済むように他者を動かすのが上に立つ者のすべきことですよ!」
セバスチャンに叱られてしまった……。
俺はセバスチャンにお米の炊き方を教えることになったのだった。
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