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第五十六話 花蜜の秘事 ③*

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「ランプの灯りを消したことを少しばかり後悔した。今から点けても?」

 射精してしまった僕を前にロベールはぽつりと零した。
 彼にイキ顔なんか絶対に見せられない!

「だ、だめ! ロベールのえっち! 点けたら怒るよ!」
「ふふっ、冗談だ」

 彼が笑いを零す吐息を感じたかと思うと、唇の横に愛おしげに接吻を落とされた。
 それから彼は確認する。

「後ろに触れても?」
「うん、いいよ……」

 僕の答えを聞くと、くちゅりと湿った感触を纏った指が茎の下を撫でていく。双嚢の形を撫ぜ、そして後孔の入口に触れる。何もしていないのにヒクヒクとしているそこが彼の指に吸い付いた。

「痛かったらすぐに言ってくれ」

 彼の言葉に、これから自分の内側に触れられるのだと悟った。
 僕は覚悟を決めてぎゅっと目を閉じた。
 微かな水音を立て、彼の指の先端が埋まった。

「アン、大丈夫か?」
「……意外に平気」

 指の一本くらいならば想像していたような痛みはなかった。ロベールの指は細くて綺麗な指をしているからだろうか。
 拍子抜けして身体から力が抜ける。それに合わせて指先が埋まっていく。
 自分でも触れたことないような場所を撫で上げられる感覚はなんだか不思議だった。

 彼は僕の身体を労わっているかのようにゆっくりと指を進めていく。
 万が一にも傷つけたらいけないと思っているかのような神経質な進みようだ。
 やがて指が根本まで埋まったのか、動きが止まる。

「ふう……」

 僕は大きく息を吐いた。

「これから中を拡げていく。大丈夫そうか?」
「うん」

 案じる声に頷いた。
 円を描くように彼の指がゆっくりと動いていく。
 僕はしばらくの間ベッドにだらりと横になってくちゅくちゅと音が響くのを楽しんだ。自分の中で他人の指が動いているのは意外にもじんわりと心地いい。

「指を増やしても?」
「うん、大丈夫」

 だからそう尋ねられた時もリラックスして頷くことができた。
 人差し指に加えて中指も中に入ってくる。
 ペンだこのある彼の中指は人差し指よりも少し太い。流石に圧迫感を覚える。

「……っ」

 彼の指はさらに慎重に動く。
 決して負担をかけまいとしているのだろう。
 彼の二本の指が肉壁を撫でていく。

 少しすると圧迫感にも慣れてきた。
 初めてなのにこんなにも楽なのは蜜の効果なのだろうか。
 力が抜けた瞬間に彼の指が陰茎の裏辺りの肉壁を擦った。

「あ……っ!」

 瞬間、走った快感に小さな嬌声が漏れた。
 そこが性感帯なのだと瞬時に悟った。

「そこ、もっかい……」

 僕は彼にねだる。
 彼はごくりと唾を飲んだようだ。
 ゆるりとした動きで再度その性感帯を撫でる。

「あっ、あぁ……っ!」

 腹の底が熱くなるような今までにない快感。
 少し刺激されるだけで圧迫感などどうでもよくなり、もっともっとと欲しくなる。

「あ、ロベールっ、そこっ、いいの……! もっと……っ!」

 腰を揺らすと、期待に応えようとしているのか指の動きが激しくなっていく。強まる快感に僕は背を反らして善がった。

「あぁンっ、あっ、ぁ、イイ……っ!」

 こりこりと性感帯を擦られる快感に口端から涎を垂らして嬌声を上げる。
 触れられてもいないのに陰茎が再び兆している。
 僕は彼に顔を見られていないのをこれ幸いとばかりに、夢中になって新しく知った快感に溺れた。

「くるっ、なんかきそう……っ!」

 中心に触れてもいないのに達しそうな気配を感じる。
 ぐに、と強く内側の性感帯を圧された瞬間、快感が弾けた。

「あぁ…………っ!!」

 気が付けば陰茎からだらだらと何かが流れる感触がしていた。
 白濁が緩慢に流れ落ちていく間、射精の快感がずっと続いていた。
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