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第三十五話 ボニーの二人の兄を追放しま……あれ?
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年跨ぎを終え、ロベールは十九歳に、僕は十七歳になった。
さて、今日からまたダンジョン村経営を頑張るぞ!
「アントワーヌ様。ボニー様のご兄弟について相談があるのですが……」
爺やが言ってきた。
お、遂にあの二人が何か問題を起こしたか。
反乱分子を一掃する口実ができたな。
「お二人は真面目に勉学に取り組み、実によくボニー様を補佐していらっしゃいます。またボニー様も村長としての役目を努力してこなしていらっしゃいます。どうか三人に領主であるアントワーヌ様から正当な評価をいただきたく存じます」
爺やの口にしたことは平たく纏めると『三人はよくやっているので褒めてやってね』ということだった。
あれぇ?
ボニーだけでなく二人の兄も真面目にやっているだって?
一体全体何がどうなってるんだ。そんな訳がない。
村長家の次男と三男もゲーム内では事件を起こして処刑されることになるんだ。
「にわかには信じられんな。直接様子を見に行く」
村長の家には事務仕事をできるような場所がないので、ボニーには城の一室で仕事をしてもらっている。僕はボニーの執務室に向かった。
ちなみにロベールは年跨ぎのパーティで消費した食料や資材などの残りをチェックするのだと従者を連れて倉庫に向かった。時折こうして主人は従者の仕事ぶりをチェックしなければならないのだとか何とか。
ボニーはあてがわれた執務室でフロアマップの作製に勤しんでいるようだった。
冒険者たちから寄せられたフロアマップを繋ぎ合わせ、正しいと思われる地図を作るのだ。
そうして正しい地図を作ることで、今度は新しくダンジョンの探索を始めた新人冒険者に地図を売ることができるようになる。
なるべく冒険者の探索をサポートすることこそがダンジョン村の繁栄に繋がるのだから必要なことだ。
縮尺などを間違ってはならないから素人にはできないことだが、爺やに地図作りを教わったボニーはしっかりとフロアマップ作りを遂行しているようだ。
「ボニー……あ、いや村長。村民から聞いてきた意見を纏めましたのでここに置いておきます」
「最初のフロアボスを倒してから冒険者の探索は順調なようだな。最新のフロアマップではもう十四階まで突破した奴がいる」
ボニーの周りで甲斐甲斐しく働いているのはうちの従者たちではない。彼の二人の兄だった。
なんだこれ!? ゲームの中の二人と全然違うじゃないか!
「おい、そこの二人」
僕はボニーの二人の兄に声をかけた。
「りょ、領主様!」
彼らはたちまち緊張して姿勢を正す。
「どうやら真面目にやっているようだな」
「ええと、もったいないお言葉です……!」
僕に対する態度も反抗的なようには見えない。
どうしてしまったんだこいつらは。
「……直截に尋ねよう。お前らは僕のことが憎くないのか? 僕はお前らの長兄と父親をこの村から追放した」
もう手っ取り早く直接聞いてしまうことにした。
爺やに頼んで探らせておくとかそんな時間のかかるようなことはしない。
僕の問いにボニーの二人の兄は顔を見合わせた。
「あの、実を言うとロベール様に聞いたのです。父と兄の罪は本当ならば死罪になってもおかしくないものだったと。俺たちとボニーまで一緒に吊るし首にされても文句は言えなかったと」
「領主様の慈悲深い裁定があったと聞いたのです」
ロベールの奴、いつの間にか二人に刷り込んでいたようだ。
ロベールも僕の目を盗んで積極的に働いているようだ。
「本当だったら死んでいるところをこうして文字まで教えてもらって働かせてもらっているんです。恨みなどあろうはずがありません」
次男の言葉に三男が頷いた。
彼らが事件を起こす素振りなどわずかも見当たらない。
どうやらロベールの活躍によりあらかじめ反乱分子が消えてしまったらしいことを僕は悟ったのだった。
さて、今日からまたダンジョン村経営を頑張るぞ!
「アントワーヌ様。ボニー様のご兄弟について相談があるのですが……」
爺やが言ってきた。
お、遂にあの二人が何か問題を起こしたか。
反乱分子を一掃する口実ができたな。
「お二人は真面目に勉学に取り組み、実によくボニー様を補佐していらっしゃいます。またボニー様も村長としての役目を努力してこなしていらっしゃいます。どうか三人に領主であるアントワーヌ様から正当な評価をいただきたく存じます」
爺やの口にしたことは平たく纏めると『三人はよくやっているので褒めてやってね』ということだった。
あれぇ?
ボニーだけでなく二人の兄も真面目にやっているだって?
一体全体何がどうなってるんだ。そんな訳がない。
村長家の次男と三男もゲーム内では事件を起こして処刑されることになるんだ。
「にわかには信じられんな。直接様子を見に行く」
村長の家には事務仕事をできるような場所がないので、ボニーには城の一室で仕事をしてもらっている。僕はボニーの執務室に向かった。
ちなみにロベールは年跨ぎのパーティで消費した食料や資材などの残りをチェックするのだと従者を連れて倉庫に向かった。時折こうして主人は従者の仕事ぶりをチェックしなければならないのだとか何とか。
ボニーはあてがわれた執務室でフロアマップの作製に勤しんでいるようだった。
冒険者たちから寄せられたフロアマップを繋ぎ合わせ、正しいと思われる地図を作るのだ。
そうして正しい地図を作ることで、今度は新しくダンジョンの探索を始めた新人冒険者に地図を売ることができるようになる。
なるべく冒険者の探索をサポートすることこそがダンジョン村の繁栄に繋がるのだから必要なことだ。
縮尺などを間違ってはならないから素人にはできないことだが、爺やに地図作りを教わったボニーはしっかりとフロアマップ作りを遂行しているようだ。
「ボニー……あ、いや村長。村民から聞いてきた意見を纏めましたのでここに置いておきます」
「最初のフロアボスを倒してから冒険者の探索は順調なようだな。最新のフロアマップではもう十四階まで突破した奴がいる」
ボニーの周りで甲斐甲斐しく働いているのはうちの従者たちではない。彼の二人の兄だった。
なんだこれ!? ゲームの中の二人と全然違うじゃないか!
「おい、そこの二人」
僕はボニーの二人の兄に声をかけた。
「りょ、領主様!」
彼らはたちまち緊張して姿勢を正す。
「どうやら真面目にやっているようだな」
「ええと、もったいないお言葉です……!」
僕に対する態度も反抗的なようには見えない。
どうしてしまったんだこいつらは。
「……直截に尋ねよう。お前らは僕のことが憎くないのか? 僕はお前らの長兄と父親をこの村から追放した」
もう手っ取り早く直接聞いてしまうことにした。
爺やに頼んで探らせておくとかそんな時間のかかるようなことはしない。
僕の問いにボニーの二人の兄は顔を見合わせた。
「あの、実を言うとロベール様に聞いたのです。父と兄の罪は本当ならば死罪になってもおかしくないものだったと。俺たちとボニーまで一緒に吊るし首にされても文句は言えなかったと」
「領主様の慈悲深い裁定があったと聞いたのです」
ロベールの奴、いつの間にか二人に刷り込んでいたようだ。
ロベールも僕の目を盗んで積極的に働いているようだ。
「本当だったら死んでいるところをこうして文字まで教えてもらって働かせてもらっているんです。恨みなどあろうはずがありません」
次男の言葉に三男が頷いた。
彼らが事件を起こす素振りなどわずかも見当たらない。
どうやらロベールの活躍によりあらかじめ反乱分子が消えてしまったらしいことを僕は悟ったのだった。
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