異世界転生した僕、実は悪役お兄様に溺愛されてたようです

野良猫のらん

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第三十二話 ロベールとのんびりデート

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 エーミールとも平和的に話し合いを終え、無事にオークションが終了した。めでたしめでたしである。
 すぐさま爺やのことを褒め称えたいところではあるが、慎重を期して爺やは先にグリーンヴィレッジに帰っている。村に帰ったら爺やを労わってやるとしよう。

「じゃあ午後からは王都観光開始だね?」

 宿に戻る馬車の中でロベールのことを見上げる。

「ああ。王城で料理長をしていた者が開いたレストランがあるんだ。そこでランチにしようじゃないか」
「うん!」

 ロベールとのデートの始まりだ。
 実のところ僕はこれをデートどころか新婚旅行と捉えているのは秘密だ。だって式を挙げていようがなかろうが、僕の心の中ではもう僕らは夫夫ふうふなんだから。
 そんなこと、ロベールを揶揄うためですら口に出せない。

 一度宿に戻って一休みすると、僕らはロベールおススメのレストランに行って昼食を摂った。これが王族が普段摂っている食事なんだな、とご馳走に舌鼓を打った。
 その後は王都の中心を流れるフリューサクレ川とそこに架かる橋を見に行った。川は本当に時折白銀に煌めいていてとても綺麗だった。真冬の川辺は寒かったけれど、ロベールとのデートは楽しいので気にならなかった。
 それから街のあちこちを散策して回った。よくよく見ると真っ白だと思っていた王都の建物は地区によってはクリーム色がかっていたり灰色っぽかったりするところもあった。建物が建てられた年代によって微妙に色味が変わっていたりするのだろうか。

 次の日はお芝居を見に行った。
 王族お抱えの有名な劇団の公演である。なんでも超天才劇作家が団長をしていて、役者として舞台に上がることもあるのだとか。
 その日の演目は『鳥に焦がれた獅子は』である。
 とある小国の王子が自由気ままな冒険者の男に恋をした。だが冒険者の男は平民であるが故に男同士の恋情に理解がなく、王子は片想いを募らせることになる。
 この王子役を務めるのが件の天才劇作家らしく、それは見事な演技力で片想いの苦しみを表現し、情熱的に相手役の男を口説いた。相手役の男が演技ではなく本当に絆されかけているように見えたくらいである。
 最後には王子の国は戦争に負け、捕らえられた王子はギロチンで処刑されることになる。危うく首が刎ねられる寸前だった王子を冒険者の男が助け出し、二人は逃避行へ。王子は冒険者になり、二人はいつまでも幸せに暮らしましたとさというハッピーエンドだった。
 ロベールは感動して号泣し、ハンカチをべしょべしょに濡らしていた。僕はそんなロベールを眺めるのが楽しかった。

 その次の日も、そのまた次の日も、大聖堂や天高くそびえる魔術塔や全てがガラスでできた水晶のような建造物など本当に色々なものを見た。
 色んな店も見て回った。宝飾店でロベールは僕にペンダントを買ってくれた。ロベールは本当に僕に物を買い与えるのが好きだ。大事な物が増えてしまうじゃないか。

 本当にRTAなど一欠片も関係ないひと時だった。
 常に何かをどうにかして省略できないか、金を増やせないかと考えていた僕がこの数日間はRTAのことなど少しも考えなかった。
 とても楽しい休日だった。
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