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第二十一話 グロスマン商会、販売祭りですって

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 それからあっという間に三日が過ぎた。
 エーミールは大量の地耐性リングを持って駆け付けてくれた。

「なるほど、そういう事情でございましたか」

 名刺ではほんの短いメッセージしか発信出来ないので、エーミールには地耐性リングがなるだけ沢山必要になった理由を直接会ってやっと伝えることができた。

「なるほど、クラウセン様の知識は商機にな……いえ、非常に重要でございますね。次にフロアボスが現れた時はより多くの魔導具デバイスを素早くご用意できるよう体制を整えていこうと存じます」

 どうやらエーミールはフロアボスの出現をきっかけとして在庫を一気に処分する作戦を立てる気のようだ。

 グロスマン商会を見習って、フロアボス出現の折には村が一丸となってフロアボスと対する為の姿勢を素早く取れるように何か体制を作っておくべきなのかもしれない。
 具体的な方策は浮かばないが考えておこう。

「それでは今すぐにでも臨時の露店を設置して地耐性リングの販売を始めたいと思います」

 支店はまだ出来上がっていないので店で売ることはできないのだ。

「それなら広場を使うといい」

 客が殺到することを見越して広場を勧める。

「ありがとうございます」
「ああそうだ、欲しい魔導具デバイスがあるんだが……」

 思いついたことがあって踵を返すエーミールの背に声をかける。事前に伝えていなかったから持っていないかもしれない。その時は大人しく諦めよう。

「こういう魔導具デバイスが欲しくてな……」

 僕はその魔導具デバイスの特徴を伝えた。
 エーミールはメガネをくいっと直すと言った。

「その魔導具デバイスでしたら、用意がございます」

 キラーンと彼のメガネが光った。
 まさかそこまで予想していたのだろうか。まさか、たまたま持って来ていただけだろう。
 僕は無事その魔導具デバイスを購入することができたのだった。

 面白そうなのでグロスマン商会臨時店の様子を僕とロベールも見に行くことにした。
 少し時間を置いてから広場に行くと、もう露店が設置されていて販売が始まっていた。寒空の下、冒険者たちが露店に集まっている。
 グロスマン商会の方も複数人の従業員で迎え撃つ気のようだ。用意がいい。

「今日はフロアボスの討伐に挑む冒険者の皆様のために、地耐性リングを特別価格でご用意いたしました! どうぞご利用下さいませ!」

 エーミールが声を張り上げている。

 従業員が次から次へと代金の銀貨を受け取り、冒険者へ指輪を手渡していく。あれが地耐性リングなのだろう。
 冒険者の中には受け取った傍から早速指にリングを嵌めている者もいる。

 ダンジョンに潜れなくても今のこの村には日雇いの仕事がいくらでもあるので、金がない冒険者も耐性リングを買うための資金をこの三日間で用意できたようだ。
 間もなく冒険者の大半にリングが行き渡ったように見えた。

 最初のフロアボスはそれほどステータスが高くない。
 ゴリ押しでも倒せなくはないほどだ。
 これだけ念入りに冒険者たちに耐性装備を着けさせたのだから、きっと苦もなく倒せることだろう。不安要素はない。

 さて、後は先ほど購入したこの魔導具デバイスを誰に担当してもらうかだが……。
 僕はメイジの少年に目を付けた。つい今しがたリングを購入できたところのようだった。
 よし、あの子に頼んでみるとしよう。
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