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第十二話 フロアマップ作製依頼を出します

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 宿屋の隣は酒場だ。
 当面は冒険者たちの暇つぶしとパーティ募集の場を兼ねるはずである。
 中を覗いてみるが、流石にまだ客はいないようだった。
 唯一の食事処でもあるのだから、もう少しすれば昼からでも賑わうようになるだろう。

 酒場からまた少し道の先を進むと、開けた丸い空間が現れる。一応村の広場のつもりである。
 この村に大道芸人などが訪れるくらい発展すれば、この広場で出し物をしてもらうつもりだ。
 今はただ村の子供の遊び場になっている。
 子供たちは地面に輪っかをいくつも描いてけんけんぱのような遊びをしている。

 広場を越えると武器屋、防具屋、道具屋が並んでいる。
 鍛冶屋はないので武器屋や防具屋に並んでいる品はよそから輸入したものだ。
 診療所も教会もない状況では道具屋で売られている薬が冒険者たちの生命線である。

 そう考えると教会も早急に建てるべきだろうか?

 教会の役割はいくつかある。
 教会があればヒーラーが常に村に常駐することになる。
 外傷であれば教会の神父に寄付金を払えば治してもらえるようになる。後は毒や呪いの類も。病は治せない。
 それから井戸水や川から汲んだ水を聖別して聖水にすることができる。魔物を一定時間寄せ付けないようにすることができる冒険者の必需品だ。
 まあ聖水は少し割高になるが道具屋でも売っている。

 ちなみに市民権を得る為にフランツが連れてきたのが道具屋の主人である。
 フランツと同じ行商人の師匠に教えを受けていたおとうと弟子であり、フランツとは違うルートで行商をしていたらしい。調子の良さそうな陽気な男だった。

「いま村に必要なのは冒険者ギルドと教会といったところか……」
「何を悩んでいるんだアン?」

 ロベールが僕の悩んだ顔を見て尋ねる。

「冒険者ギルドも教会も領主が金を出して建てなければならないんだ。教会の方は一旦建ててしまえば後は寄付金で運営されるが、冒険者ギルドの方は維持費も人件費もかかる」

「なんだ、冒険者ギルドとは金ばかり出ていく損な施設なのだな」

 ロベールは鼻を鳴らす。

「いやいやロベール。冒険者ギルドは冒険者からダンジョンから発見された宝を買い取る機能がある。買い取った宝を商人に売り、差額で儲けることができるんだ。だから冒険者のダンジョン攻略が順調であればあるほど儲かる」

「なるほど、つまりもっと人が増えてからでないと儲けが出ないのか」

 彼は納得したように頷いた。
 建物を建てると決めてから実際に出来上がるまで数ヶ月のロスが生まれてしまうから、RTAの為には金がある限り建物を建て尽くしてしまいたいところだが、金食い虫の施設はそうもいかない。

「ロベールと話して考えが整理できた。やはり冒険者ギルドの建設はまだ見送ろう。教会はもう建ててしまってもよさそうだ。移住者が増えて税収が増えてきたからね」
「方針が定まって良かった」

 本当ならもっと色々やりたいところだが、冒険者たちによるダンジョン攻略の初動を見てからでないと決められないこともある。

「ああそうだ、忘れるところだった」

 僕は酒場に戻り、ある張り紙をしてくれるように店主に頼んだ。
 冒険者たちへの依頼である。
 冒険者ギルドがないと酒場に張るしかない。

 内容は以下の通りである。

 ・ダンジョンのフロアマップを作製した者には報奨金を出す。完成した物でなくても可。報奨金は描き上がっている面積に比例して増える。城にて買い取り。

 冒険者たちの探索の進み具合を逐一把握する為の方策である。
 本来ならば冒険者ギルドでやることだが、背に腹は変えられないので、仕方なく城がその機能の一部を担うしかない。

「ほう、このダンジョン村でもフロアマップの買い取りはやっているのか」

 後ろから聞き覚えのない……いや、前世では物凄くよく聞いたことのある声が聞こえた。
 振り返るとそこには赤髪金眼のイケメンがいた。

「あ、攻略対象だ」

 彼こそはゲーム内での攻略対象その一である。
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