12 / 84
第十二話 フロアマップ作製依頼を出します
しおりを挟む
宿屋の隣は酒場だ。
当面は冒険者たちの暇つぶしとパーティ募集の場を兼ねるはずである。
中を覗いてみるが、流石にまだ客はいないようだった。
唯一の食事処でもあるのだから、もう少しすれば昼からでも賑わうようになるだろう。
酒場からまた少し道の先を進むと、開けた丸い空間が現れる。一応村の広場のつもりである。
この村に大道芸人などが訪れるくらい発展すれば、この広場で出し物をしてもらうつもりだ。
今はただ村の子供の遊び場になっている。
子供たちは地面に輪っかをいくつも描いてけんけんぱのような遊びをしている。
広場を越えると武器屋、防具屋、道具屋が並んでいる。
鍛冶屋はないので武器屋や防具屋に並んでいる品はよそから輸入したものだ。
診療所も教会もない状況では道具屋で売られている薬が冒険者たちの生命線である。
そう考えると教会も早急に建てるべきだろうか?
教会の役割はいくつかある。
教会があればヒーラーが常に村に常駐することになる。
外傷であれば教会の神父に寄付金を払えば治してもらえるようになる。後は毒や呪いの類も。病は治せない。
それから井戸水や川から汲んだ水を聖別して聖水にすることができる。魔物を一定時間寄せ付けないようにすることができる冒険者の必需品だ。
まあ聖水は少し割高になるが道具屋でも売っている。
ちなみに市民権を得る為にフランツが連れてきたのが道具屋の主人である。
フランツと同じ行商人の師匠に教えを受けていた弟弟子であり、フランツとは違うルートで行商をしていたらしい。調子の良さそうな陽気な男だった。
「いま村に必要なのは冒険者ギルドと教会といったところか……」
「何を悩んでいるんだアン?」
ロベールが僕の悩んだ顔を見て尋ねる。
「冒険者ギルドも教会も領主が金を出して建てなければならないんだ。教会の方は一旦建ててしまえば後は寄付金で運営されるが、冒険者ギルドの方は維持費も人件費もかかる」
「なんだ、冒険者ギルドとは金ばかり出ていく損な施設なのだな」
ロベールは鼻を鳴らす。
「いやいやロベール。冒険者ギルドは冒険者からダンジョンから発見された宝を買い取る機能がある。買い取った宝を商人に売り、差額で儲けることができるんだ。だから冒険者のダンジョン攻略が順調であればあるほど儲かる」
「なるほど、つまりもっと人が増えてからでないと儲けが出ないのか」
彼は納得したように頷いた。
建物を建てると決めてから実際に出来上がるまで数ヶ月のロスが生まれてしまうから、RTAの為には金がある限り建物を建て尽くしてしまいたいところだが、金食い虫の施設はそうもいかない。
「ロベールと話して考えが整理できた。やはり冒険者ギルドの建設はまだ見送ろう。教会はもう建ててしまってもよさそうだ。移住者が増えて税収が増えてきたからね」
「方針が定まって良かった」
本当ならもっと色々やりたいところだが、冒険者たちによるダンジョン攻略の初動を見てからでないと決められないこともある。
「ああそうだ、忘れるところだった」
僕は酒場に戻り、ある張り紙をしてくれるように店主に頼んだ。
冒険者たちへの依頼である。
冒険者ギルドがないと酒場に張るしかない。
内容は以下の通りである。
・ダンジョンのフロアマップを作製した者には報奨金を出す。完成した物でなくても可。報奨金は描き上がっている面積に比例して増える。城にて買い取り。
冒険者たちの探索の進み具合を逐一把握する為の方策である。
本来ならば冒険者ギルドでやることだが、背に腹は変えられないので、仕方なく城がその機能の一部を担うしかない。
「ほう、このダンジョン村でもフロアマップの買い取りはやっているのか」
後ろから聞き覚えのない……いや、前世では物凄くよく聞いたことのある声が聞こえた。
振り返るとそこには赤髪金眼のイケメンがいた。
「あ、攻略対象だ」
彼こそはゲーム内での攻略対象その一である。
当面は冒険者たちの暇つぶしとパーティ募集の場を兼ねるはずである。
中を覗いてみるが、流石にまだ客はいないようだった。
唯一の食事処でもあるのだから、もう少しすれば昼からでも賑わうようになるだろう。
酒場からまた少し道の先を進むと、開けた丸い空間が現れる。一応村の広場のつもりである。
この村に大道芸人などが訪れるくらい発展すれば、この広場で出し物をしてもらうつもりだ。
今はただ村の子供の遊び場になっている。
子供たちは地面に輪っかをいくつも描いてけんけんぱのような遊びをしている。
広場を越えると武器屋、防具屋、道具屋が並んでいる。
鍛冶屋はないので武器屋や防具屋に並んでいる品はよそから輸入したものだ。
診療所も教会もない状況では道具屋で売られている薬が冒険者たちの生命線である。
そう考えると教会も早急に建てるべきだろうか?
教会の役割はいくつかある。
教会があればヒーラーが常に村に常駐することになる。
外傷であれば教会の神父に寄付金を払えば治してもらえるようになる。後は毒や呪いの類も。病は治せない。
それから井戸水や川から汲んだ水を聖別して聖水にすることができる。魔物を一定時間寄せ付けないようにすることができる冒険者の必需品だ。
まあ聖水は少し割高になるが道具屋でも売っている。
ちなみに市民権を得る為にフランツが連れてきたのが道具屋の主人である。
フランツと同じ行商人の師匠に教えを受けていた弟弟子であり、フランツとは違うルートで行商をしていたらしい。調子の良さそうな陽気な男だった。
「いま村に必要なのは冒険者ギルドと教会といったところか……」
「何を悩んでいるんだアン?」
ロベールが僕の悩んだ顔を見て尋ねる。
「冒険者ギルドも教会も領主が金を出して建てなければならないんだ。教会の方は一旦建ててしまえば後は寄付金で運営されるが、冒険者ギルドの方は維持費も人件費もかかる」
「なんだ、冒険者ギルドとは金ばかり出ていく損な施設なのだな」
ロベールは鼻を鳴らす。
「いやいやロベール。冒険者ギルドは冒険者からダンジョンから発見された宝を買い取る機能がある。買い取った宝を商人に売り、差額で儲けることができるんだ。だから冒険者のダンジョン攻略が順調であればあるほど儲かる」
「なるほど、つまりもっと人が増えてからでないと儲けが出ないのか」
彼は納得したように頷いた。
建物を建てると決めてから実際に出来上がるまで数ヶ月のロスが生まれてしまうから、RTAの為には金がある限り建物を建て尽くしてしまいたいところだが、金食い虫の施設はそうもいかない。
「ロベールと話して考えが整理できた。やはり冒険者ギルドの建設はまだ見送ろう。教会はもう建ててしまってもよさそうだ。移住者が増えて税収が増えてきたからね」
「方針が定まって良かった」
本当ならもっと色々やりたいところだが、冒険者たちによるダンジョン攻略の初動を見てからでないと決められないこともある。
「ああそうだ、忘れるところだった」
僕は酒場に戻り、ある張り紙をしてくれるように店主に頼んだ。
冒険者たちへの依頼である。
冒険者ギルドがないと酒場に張るしかない。
内容は以下の通りである。
・ダンジョンのフロアマップを作製した者には報奨金を出す。完成した物でなくても可。報奨金は描き上がっている面積に比例して増える。城にて買い取り。
冒険者たちの探索の進み具合を逐一把握する為の方策である。
本来ならば冒険者ギルドでやることだが、背に腹は変えられないので、仕方なく城がその機能の一部を担うしかない。
「ほう、このダンジョン村でもフロアマップの買い取りはやっているのか」
後ろから聞き覚えのない……いや、前世では物凄くよく聞いたことのある声が聞こえた。
振り返るとそこには赤髪金眼のイケメンがいた。
「あ、攻略対象だ」
彼こそはゲーム内での攻略対象その一である。
64
お気に入りに追加
2,641
あなたにおすすめの小説
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。
【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい
おだししょうゆ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。
生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。
地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。
転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。
※含まれる要素
異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛
※小説家になろうに重複投稿しています
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる