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第四十八話 捜査本部設置!

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 ごろつきたちが毒殺されたという話を聞いて、「チームメンバー」が招集された。
 チームメンバーというのはもちろん、ぼくとシルヴェストルお兄様とオディロン先生と、カミーユとアランのことだ。今、ぼくが決めた。

 集められたうちのカミーユとアランは痛々しく包帯を巻いていて、オディロン先生は疲れた顔で魔力回復ポーションを口にしている。一度魔力切れを起こした人間は、安静にして魔力回復ポーションを定期的に飲まなければならないらしい。
 うーん、疲れ果ててるなうちのチーム。

 ともかく、ぼく誘拐事件捜査本部の設置である。

「誘拐犯どもが毒殺されたらしいな」

 シルヴェストルお兄様が口を開いた。

「リュカ殿下曰く、誘拐犯たちはシルヴェストル殿下が依頼したと語ったそうですが……」
「もちろん、オレはそんなことはしていない。自分が依頼した誘拐を、自分で助けに行く人間がどこにいる」

 オディロン先生の問いに、お兄様は冷静に答えた。
 もちろんぼくだって、お兄様のことを疑ってはいない。

「そういえばおにいちゃま、どうしてここさいきんぼくにあってくれなかったの?」

 さっそく捜査会議を脱線させたのは、ぼくだ。
 だって寂しかったんだもん。

「それは、すまなかった。お母様に突然学力試験を課されたのだ。試験に受からなければ、二度とリュカに会うことを許可しないと言われ、仕方がなかった。せめてリュカに手紙だけでも出せないかと思ったのだが、側仕えたちはすべてお母様の手先で、それすらも許してくれなかった」

「そ、そんなことになってたの……⁉︎」

 知らなかった情報に、ぼくはビビり散らかした。

「え、じゃあ今は大丈夫なのここにいて?」

 試験で良い点を取れなければ、ぼくと二度と会えなくなってしまうのではないだろうか。

「今は試験なんかにかまけている場合ではないだろう。リュカの誘拐を命じた黒幕が、未だに捕まっていないのだ。いつまた誘拐されるか、わかったものではない」

「おにいちゃま……!」

 お兄様がどれほどぼくを想ってくれているか、想いの深さに胸を打たれる。

「幸いにして、お母様は誘拐の黒幕なのではないかと正妃殿下に疑いをかけられていて、その対応に追われている。オレが側仕えや護衛騎士らを振り切ってここにいたところで、お母様はオレに構っている場合ではない」
 
 なんてクールな判断力……!

「よかったー、じゃあ話し合いを再開させるよー」

 ほっと胸を撫で下ろし、脱線させた話題を元に戻す。

「つまり、誘拐犯たちはわざと嘘の依頼人をリュカ殿下に伝えたことになりますね。一体、誰がどうして?」

 オディロン先生が言いたかったのであろうことを、口にしてくれた。
 
「ふふふふふ、『誰』がはわかりかねますが、『どうして』ならばわかりますよ。敵は間違いなく、シルヴェストル殿下に濡れ衣を着せるために行ったのでございます」

 答えたのは、カミーユだ。

「助け出されたリュカ殿下が『シルヴェストル殿下が犯人だ』と証言し、シルヴェストル殿下が捕えられることを目論んでいたのでしょう。もしリュカ殿下を害するつもりであれば、わざわざ誘拐なんてする必要はないのです」

 たしかに身代金目的でないのならば、ぼくを殺せばいいだけの話だ。

「つまり今回の犯行は実はリュカ殿下ではなく、シルヴェストル殿下を害するためのものだったということですか!」

 アランが、大きな声を上げた。
 前の主人であるシルヴェストルお兄様のことも、心配なのだろう。

「ワタシにはそのように見えます」
「このオレを地に墜とすのが目的だった、というわけか」

 お兄様が怒りの表情で、前髪をくるくるさせる。

「おにいちゃまがねらわれてたなんて!」

 ぼくは両手でほっぺを潰した。あっちょんぷりけ!

「であれば、ローズリーヌ第二王妃殿下が黒幕という線は消えますね」

 シルヴェストルお兄様の母親は、ぼくのお母様に疑いをかけられてバチバチにバトルしてるって言ってたね。無罪なのに、可哀想に。
 ……毒々しい真っ赤なドレスをまとって高笑いしていた様を思い出し、やっぱり可哀想じゃないなと思い直した。

「では逆に、セレノスティーレ第一王妃殿下の仕業という線は?」

 カミーユが尋ねた。

「お、おかあしゃまはそんなことしないよ……」

 たとえ派閥争いに勝つためとはいえ、ぼくを危険に晒すなんてことをお母様がするとは思えない。
 だってお母様は、いつもぼくのことを案じてくれているのだ。
 怪我させるつもりはなくとも、ごろつきに誘拐を依頼するなんてありえない。

 ぼくはしょんぼりと項垂れた。
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