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第十七話 アベル視点――使い魔ロビー
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「そういう訳だからオレはケンジ―じゃない。でもケンジ―として生きようとは思っている」
告白、その一単語を耳にした途端に舞い上がった自分が恥ずかしい。
ランドルフ先生は……ランドルフ先生だった人は大事なことをオレに打ち明けてくれたのだった。
もしも彼が、彼をランドルフ先生だと思ってキスしたオレを嘲笑うような人間だったなら、オレは「ランドルフ先生を返せ」と怒ったかもしれない。
でも彼はただ真剣にオレに向き合ってくれていた。
何よりその懺悔するような表情に、オレは気が付いたら彼の手をぎゅっと掴んでいたのだった。
「なら、それなら、貴方はオレにとってランドルフ先生です。だからそんな顔をしないで下さい……っ!」
オレが彼の支えになってあげたい。
瞬間的にそう思っていた。
胸を突く衝動だった。
彼は目をぱちくりとさせてオレを見つめる。
「そうか……お前はそう言ってくれるのか」
彼の眦に光るものが見えたような気がした。
彼が優しくオレの手を握り返す。
「ありがとう。お前が味方になってくれて助かった」
彼はオレの愛しい人ではないのに、ランドルフ先生に頼りにされているようで優越感を覚える。
これはいけない。オレは自分の心を慰めてくれるなら誰でもいいような男だったのか。
いやいや、彼にはランドルフ先生としての記憶もある。
そしてランドルフ先生として振る舞うと言っている。
だから彼はランドルフ先生なのだ。オレの愛しい人だ。
だからオレが支えになってあげなければならない。
「オレに打ち明けて下さってありがとうございます。オレ、貴方がこの学園でランドルフ先生として過ごす為の助けになります」
自分にできることならなんだってする。
その一心で彼を見つめた。
「ああ、ありがとう。何かあった時にはお前を頼ろう」
彼が安堵したようににこりと微笑む。
彼がそんな笑みをオレに向けてくれているという事実だけで、オレは天にも昇る心地だった。
「オレはこれから、この事を他の人にも話そうと思う」
「え」
だから、その言葉を聞いてオレは一瞬固まった。
秘密を打ち明けられただけで彼を独占したつもりになっていた自分が愚かしい。
たまたま打ち明けられる順番が早かったというだけの話で。
オレが誰かの一番になることなんてないのだ。
「それは……相手は選んだ方がいいと思います」
彼の助けになると言ったのだから、せめて彼を応援してあげなければ。
こうして頼られるだけでオレには充分じゃないだろうか。
「誰もがオレのように貴方を受け入れるとは限りません。先ほどのスワンプマンの例えで言えば、異物の紛れてないそのままのスワンプマンであっても元の死んだ男とは別物だと考える人もいるでしょう。ましてや他人の記憶を受け継いでいるとなれば、それだけで貴方を拒絶しかねない」
だから彼の為を思って助言する。
「貴方の身の安全の為にも、相手は慎重に選んで下さい」
オレの言葉に、彼は困ったように笑うのだった。
きっと彼は自分が大事だと思う人には全員秘密を打ち明けるつもりだろう。
そうでなければ自分がケンジ―・ランドルフとして生きることはできないと思っている。
仕方がない。
これも彼の為だ。
「ロビー」
オレの使い魔、小っちゃなハムスターのロビーに囁く。
ロビーはオレのポケットから飛び出すと、死角から彼の身体をよじ登り始めた。
彼の護衛だ。
いざとなればロビーの視界から彼の様子を知ることもできる。
大丈夫、悪用したりはしない……。
彼の私生活を覗くために使ったりはしない、絶対にだ。
「うん、何か言ったか?」
「いいえ、何でもないです!」
こうしてオレは彼のポケットに使い魔ロビーを忍び込ませたのだった。
告白、その一単語を耳にした途端に舞い上がった自分が恥ずかしい。
ランドルフ先生は……ランドルフ先生だった人は大事なことをオレに打ち明けてくれたのだった。
もしも彼が、彼をランドルフ先生だと思ってキスしたオレを嘲笑うような人間だったなら、オレは「ランドルフ先生を返せ」と怒ったかもしれない。
でも彼はただ真剣にオレに向き合ってくれていた。
何よりその懺悔するような表情に、オレは気が付いたら彼の手をぎゅっと掴んでいたのだった。
「なら、それなら、貴方はオレにとってランドルフ先生です。だからそんな顔をしないで下さい……っ!」
オレが彼の支えになってあげたい。
瞬間的にそう思っていた。
胸を突く衝動だった。
彼は目をぱちくりとさせてオレを見つめる。
「そうか……お前はそう言ってくれるのか」
彼の眦に光るものが見えたような気がした。
彼が優しくオレの手を握り返す。
「ありがとう。お前が味方になってくれて助かった」
彼はオレの愛しい人ではないのに、ランドルフ先生に頼りにされているようで優越感を覚える。
これはいけない。オレは自分の心を慰めてくれるなら誰でもいいような男だったのか。
いやいや、彼にはランドルフ先生としての記憶もある。
そしてランドルフ先生として振る舞うと言っている。
だから彼はランドルフ先生なのだ。オレの愛しい人だ。
だからオレが支えになってあげなければならない。
「オレに打ち明けて下さってありがとうございます。オレ、貴方がこの学園でランドルフ先生として過ごす為の助けになります」
自分にできることならなんだってする。
その一心で彼を見つめた。
「ああ、ありがとう。何かあった時にはお前を頼ろう」
彼が安堵したようににこりと微笑む。
彼がそんな笑みをオレに向けてくれているという事実だけで、オレは天にも昇る心地だった。
「オレはこれから、この事を他の人にも話そうと思う」
「え」
だから、その言葉を聞いてオレは一瞬固まった。
秘密を打ち明けられただけで彼を独占したつもりになっていた自分が愚かしい。
たまたま打ち明けられる順番が早かったというだけの話で。
オレが誰かの一番になることなんてないのだ。
「それは……相手は選んだ方がいいと思います」
彼の助けになると言ったのだから、せめて彼を応援してあげなければ。
こうして頼られるだけでオレには充分じゃないだろうか。
「誰もがオレのように貴方を受け入れるとは限りません。先ほどのスワンプマンの例えで言えば、異物の紛れてないそのままのスワンプマンであっても元の死んだ男とは別物だと考える人もいるでしょう。ましてや他人の記憶を受け継いでいるとなれば、それだけで貴方を拒絶しかねない」
だから彼の為を思って助言する。
「貴方の身の安全の為にも、相手は慎重に選んで下さい」
オレの言葉に、彼は困ったように笑うのだった。
きっと彼は自分が大事だと思う人には全員秘密を打ち明けるつもりだろう。
そうでなければ自分がケンジ―・ランドルフとして生きることはできないと思っている。
仕方がない。
これも彼の為だ。
「ロビー」
オレの使い魔、小っちゃなハムスターのロビーに囁く。
ロビーはオレのポケットから飛び出すと、死角から彼の身体をよじ登り始めた。
彼の護衛だ。
いざとなればロビーの視界から彼の様子を知ることもできる。
大丈夫、悪用したりはしない……。
彼の私生活を覗くために使ったりはしない、絶対にだ。
「うん、何か言ったか?」
「いいえ、何でもないです!」
こうしてオレは彼のポケットに使い魔ロビーを忍び込ませたのだった。
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