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第二部 セルフィニエ辺境伯領編

第百六十八話 湖でのピクニック ①

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 今日は待ちに待った新しい月の週末。
 つまりお兄ちゃんとの湖でのピクニックの日だ!

 アウトドア用の身軽な服装に着替えさせてもらって準備は万端だ。
 お兄ちゃんと共に馬車に乗り込み、僕らは湖へと出発した。

「森まで行った時より距離があるからな。寝られるなら寝た方がいい」

 隣に座っているお兄ちゃんが優しく言った。

「せっかくお兄ちゃんと一緒だもん。お兄ちゃんとお喋りする」
「体力が保つのならいいんだが」
「大丈夫だよ、僕最近元気だもん!」

 初めてお兄ちゃんと会話した時に僕がお兄ちゃんの部屋で倒れたことがすっかりトラウマらしい。お兄ちゃんはいつまでも僕のことをひ弱だと思っているのだ。

「湖に着いたら何をするの?」
「釣りをしよう。湖ではいくらでも魚が獲れるそうだ。そしてランチにそれを焼いて食べるんだ。今日の釣果いかんによってはランチは主菜なしになってしまうぞ?」
「頑張らなきゃ……!」

 ふん、と気合を入れる。

「お兄ちゃんとの釣り勝負には負けないからね!」
「ほう、勝負したいのか?」

 お兄ちゃんは片眉を上げてほくそ笑む。
 う、嫌な予感がする。
 カタクラズムで本気を出してきたお兄ちゃんのことだから、大人げなく本気を出してきそうだ。

「それはいいな。楽しい休日になりそうだ」

 何故だか僕たちは本気の釣り対決をすることになってしまったのだった。



「カレン。着いたそうだ」

 うとうとしてきた頃、声をかけられてはっと目を覚ます。
 大丈夫、寝てない寝てない。寝そうになっただけ。

 お兄ちゃんが先に馬車から降り、僕はお兄ちゃんに下ろしてもらった。
 それからお兄ちゃんは長い棒状の荷物を二本手に取る。
 大事そうに布に包まれているけれど、それはもしかして……

「お手製の釣り竿だ。カレンの分もあるぞ」

 この日のためにわざわざ作ってきたの!?

「まさかこの間みたいにまた徹夜とかしてないよね?」
「ははは、大丈夫だ。湖でピクニックの予定を立て始めた時から作り始めていたからな」

 お兄ちゃんは本当に物づくりが好きなんだなあ。
 それとも僕のためだろうか。
 お兄ちゃんの生き生きとした表情を見るに、その両方だと思われた。

 お兄ちゃんお手製の釣り竿を手に、釣り勝負開始である!
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