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第二部 セルフィニエ辺境伯領編
第百五十九話 チェンバロ猛練習
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音楽の授業、僕は一生懸命にチェンバロに向かっていた。
お兄ちゃんが新しい椅子とメトロノームを届けてくれる日に演奏の披露をしなければならないからだ。
これこれこういう理由でミニ発表会を行うので椅子とメトロノームは出来たら直接持って来て下さい、とお兄ちゃんには伝えてある。
お兄ちゃんは「楽しみにしてる」と言ってくれた。だから僕は頑張って練習しなければならないのだ。
ところでお兄ちゃんが科学大好き少年であることは秘密事項である。
知られたらこの世界では悪魔憑きではないかと噂されるようなことだからである。
というか科学に長けている人間なんてお兄ちゃんくらいなので、簡単に「公爵家の嫡男の正体は第四皇子なのでは!?」と結び付いてしまう。
……うん、テルディナント先生に言っちゃったね。
『ウィルは科学の大天才なんだぞ』って。
でもお兄ちゃんは許してくれた。
『まあアレになら教えても構わんだろう。音楽のことしか頭になさそうな人間だから』と言って。
お兄ちゃんとテルディナント先生は晩餐の時ぐらいにしか顔を合わせたことがないはずだが、それだけの接触でもテルディナント先生の人柄は充分にお兄ちゃんに伝わっているようだった。……目立つ人だからね。
そもそも椅子とメトロノームはごくシンプルな仕組みの物だから、これぐらいの物では迫害されるようなことはないってお兄ちゃんは言ってた。
確かにメトロノームよりも柱時計の方がよほど複雑だもんね。その理屈で行けば全ての時計職人が迫害対象になってしまう。
この世界ではどこからどこまでがただの道具でどこからが科学の発明品扱いになるのか、僕はその感覚をよくよく掴んでおかなければならないかもしれない。僕の不注意でお兄ちゃんに不利益をもたらす訳にはいかない。
「テルディナント先生、なんでせっかく弾けるようになった『その1』と今練習してる『その2』じゃなくて、『その2』とまだ弾いたことない『その3』の披露なんですか? 『その1』でいいじゃないですか!」
難しさに泣きたくなった僕は唇を尖らせてぶーたれる。
「何を言っているのだ、練習の為の時間があるのであれば折角であればより難度の高い曲を聞かせたいだろう?」
テルディナント先生は不思議そうな顔をする。
駄目だ、僕には理解できない。僕は絶対に失敗しない安全な難易度でやりたい。
でもどうやらテルディナント先生の考えは違うようだった。
そういうことで僕は必死にチェンバロの練習を続けたのだった。
授業が終わる頃には『その3』もある程度弾けるようになっていた。
とても大変だった……。
お兄ちゃんが新しい椅子とメトロノームを届けてくれる日に演奏の披露をしなければならないからだ。
これこれこういう理由でミニ発表会を行うので椅子とメトロノームは出来たら直接持って来て下さい、とお兄ちゃんには伝えてある。
お兄ちゃんは「楽しみにしてる」と言ってくれた。だから僕は頑張って練習しなければならないのだ。
ところでお兄ちゃんが科学大好き少年であることは秘密事項である。
知られたらこの世界では悪魔憑きではないかと噂されるようなことだからである。
というか科学に長けている人間なんてお兄ちゃんくらいなので、簡単に「公爵家の嫡男の正体は第四皇子なのでは!?」と結び付いてしまう。
……うん、テルディナント先生に言っちゃったね。
『ウィルは科学の大天才なんだぞ』って。
でもお兄ちゃんは許してくれた。
『まあアレになら教えても構わんだろう。音楽のことしか頭になさそうな人間だから』と言って。
お兄ちゃんとテルディナント先生は晩餐の時ぐらいにしか顔を合わせたことがないはずだが、それだけの接触でもテルディナント先生の人柄は充分にお兄ちゃんに伝わっているようだった。……目立つ人だからね。
そもそも椅子とメトロノームはごくシンプルな仕組みの物だから、これぐらいの物では迫害されるようなことはないってお兄ちゃんは言ってた。
確かにメトロノームよりも柱時計の方がよほど複雑だもんね。その理屈で行けば全ての時計職人が迫害対象になってしまう。
この世界ではどこからどこまでがただの道具でどこからが科学の発明品扱いになるのか、僕はその感覚をよくよく掴んでおかなければならないかもしれない。僕の不注意でお兄ちゃんに不利益をもたらす訳にはいかない。
「テルディナント先生、なんでせっかく弾けるようになった『その1』と今練習してる『その2』じゃなくて、『その2』とまだ弾いたことない『その3』の披露なんですか? 『その1』でいいじゃないですか!」
難しさに泣きたくなった僕は唇を尖らせてぶーたれる。
「何を言っているのだ、練習の為の時間があるのであれば折角であればより難度の高い曲を聞かせたいだろう?」
テルディナント先生は不思議そうな顔をする。
駄目だ、僕には理解できない。僕は絶対に失敗しない安全な難易度でやりたい。
でもどうやらテルディナント先生の考えは違うようだった。
そういうことで僕は必死にチェンバロの練習を続けたのだった。
授業が終わる頃には『その3』もある程度弾けるようになっていた。
とても大変だった……。
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