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第二部 セルフィニエ辺境伯領編
第百四十六話 ピクニックの時間 ①
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約束していたピクニックの日。
天気は快晴、絶好のピクニック日和だ。
僕は元気に飛び起きると、メイドさんたちにピクニック用の身軽な格好に着替えさせてもらった。
東の森までは馬車で向かうことになる。
僕はケイスくんとチェルソくんと同じ馬車に乗せてもらうことになった。
「えへへっ、楽しみですね」
馬車が動き出すとワクワクを抑え切れないようにチェルソくんが笑みを零す。
「はい、殿下にも来ていただけて良かったです」
チェルソくんの笑みに答えるのはケイスくんだ。
「そういえばケイスくんは剣術やってるんだよね。弓は使えないの?」
弓を使える年の子は大人たちと一緒に狩りをするというお兄ちゃんの話を思い出してケイスくんに聞いた。
「弓の修行も剣術と一緒に始めたのですが、まだまだ真っ直ぐに矢を飛ばすことすら難しくて……狩りなどとても参加できません」
「そうなんですかぁ……やっぱり弓は難しいんですね」
弓術を物にするにはやはり時間がかかるらしい。
ケイスくんですらまだ無理なのに、僕が狩りに参加できるようになるのはまだまだずっと先のことだろう。
「カレン殿下、森についたら"わたげキノコ"で競争しましょうね!」
チェルソくんが謎の言葉を口にする。
「わたげキノコ?」
「はい、わたげがついたキノコがあって、誰がいちばん遠くまでとばせたか競争するんです!」
チェルソくんがニコニコと教えてくれる。
僕はタンポポのようなキノコを想像した。
「森についたらまずわたげキノコをさがしましょうね!」
「はい!」
僕はすっかり森に着くのが楽しみになった。
お喋りをしていたらあっという間に時間は過ぎ去った。
馬車が止まり、僕たちは下ろされた。
「わぁ……ここが東の森?」
緑の葉が擦れてざわざわと音を立て、新鮮な空気が胸いっぱいに広がる。
僕は鼻をひくひくさせて自然の匂いを嗅いだ。
「領主様、よくぞおいで下さいました」
誰かが森の入口で待っていた。
弓矢を持った辺境伯とバスティアンさんがその人に気安く声をかける。
どうやら森番の人のようだ。
森も貴族の財産なので、管理する人が必要なのだ。
タソトキでは森番の人は森の奥深くまで入ろうとする冒険者のランクを確認して入場料を取ったり低ランクの冒険者は追い返したり、後は貴族が出入りするようなエリアに狂暴な魔物が出たら討伐依頼を出したりといった仕事もしている。
それにしてもバスティアンさんも狩りに参加するなんて意外だな。
それもしっかり弓矢で狩りをするつもりらしく、弓矢を背負っている。
将来魔術師になるつもりの人でも剣術や弓は一通り習わせられるのだろうか。
辺境伯とバスティアンさん、お兄ちゃん。あと見覚えのない大人ももう一人いる。
同じく弓矢を背負っていて立派な身なりをしているからきっと辺境伯のお友達の貴族なんだろう。お兄ちゃんが挨拶している。
狩りをする大人たちチームはこの四人に案内役の森番、それに何人かの従者を引き連れて狩りに行くらしい。
「さ、オレたちはこの辺でわたげキノコを探しましょう!」
一方僕たちはケイスくんとチェルソくん、そしてたくさんの護衛と従者に囲まれて森のほんの入り口の方を散策することになった。
天気は快晴、絶好のピクニック日和だ。
僕は元気に飛び起きると、メイドさんたちにピクニック用の身軽な格好に着替えさせてもらった。
東の森までは馬車で向かうことになる。
僕はケイスくんとチェルソくんと同じ馬車に乗せてもらうことになった。
「えへへっ、楽しみですね」
馬車が動き出すとワクワクを抑え切れないようにチェルソくんが笑みを零す。
「はい、殿下にも来ていただけて良かったです」
チェルソくんの笑みに答えるのはケイスくんだ。
「そういえばケイスくんは剣術やってるんだよね。弓は使えないの?」
弓を使える年の子は大人たちと一緒に狩りをするというお兄ちゃんの話を思い出してケイスくんに聞いた。
「弓の修行も剣術と一緒に始めたのですが、まだまだ真っ直ぐに矢を飛ばすことすら難しくて……狩りなどとても参加できません」
「そうなんですかぁ……やっぱり弓は難しいんですね」
弓術を物にするにはやはり時間がかかるらしい。
ケイスくんですらまだ無理なのに、僕が狩りに参加できるようになるのはまだまだずっと先のことだろう。
「カレン殿下、森についたら"わたげキノコ"で競争しましょうね!」
チェルソくんが謎の言葉を口にする。
「わたげキノコ?」
「はい、わたげがついたキノコがあって、誰がいちばん遠くまでとばせたか競争するんです!」
チェルソくんがニコニコと教えてくれる。
僕はタンポポのようなキノコを想像した。
「森についたらまずわたげキノコをさがしましょうね!」
「はい!」
僕はすっかり森に着くのが楽しみになった。
お喋りをしていたらあっという間に時間は過ぎ去った。
馬車が止まり、僕たちは下ろされた。
「わぁ……ここが東の森?」
緑の葉が擦れてざわざわと音を立て、新鮮な空気が胸いっぱいに広がる。
僕は鼻をひくひくさせて自然の匂いを嗅いだ。
「領主様、よくぞおいで下さいました」
誰かが森の入口で待っていた。
弓矢を持った辺境伯とバスティアンさんがその人に気安く声をかける。
どうやら森番の人のようだ。
森も貴族の財産なので、管理する人が必要なのだ。
タソトキでは森番の人は森の奥深くまで入ろうとする冒険者のランクを確認して入場料を取ったり低ランクの冒険者は追い返したり、後は貴族が出入りするようなエリアに狂暴な魔物が出たら討伐依頼を出したりといった仕事もしている。
それにしてもバスティアンさんも狩りに参加するなんて意外だな。
それもしっかり弓矢で狩りをするつもりらしく、弓矢を背負っている。
将来魔術師になるつもりの人でも剣術や弓は一通り習わせられるのだろうか。
辺境伯とバスティアンさん、お兄ちゃん。あと見覚えのない大人ももう一人いる。
同じく弓矢を背負っていて立派な身なりをしているからきっと辺境伯のお友達の貴族なんだろう。お兄ちゃんが挨拶している。
狩りをする大人たちチームはこの四人に案内役の森番、それに何人かの従者を引き連れて狩りに行くらしい。
「さ、オレたちはこの辺でわたげキノコを探しましょう!」
一方僕たちはケイスくんとチェルソくん、そしてたくさんの護衛と従者に囲まれて森のほんの入り口の方を散策することになった。
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