125 / 171
第二部 セルフィニエ辺境伯領編
第百二十五話 ケイスくんとお話
しおりを挟む
今日はクレア先生の授業を受ける日だ。
結局夕食の席ではケイスくんに避けられ続け、会う事が出来ていない。
授業では僕の方が先に教室に行ったらどうだろうと僕は時間より少し早めの時間に教室に向かっていた。
そしたら使用人に先導されて教室に向かうケイスくんと丁度鉢合わせることとなった。
「あ……っ!」
ケイスくんはハッと僕を睨み付ける。
「あ、おはよう!」
「……ふんっ」
僕がおずおずと挨拶をすると、ケイスくんは鼻を鳴らして無視して先に行こうとする。
そんな彼の後ろ姿に僕は思い切って声をかける。
「あのっ、良かったら二人で話しない……?」
「はあ……?」
外の景色が見えるバルコニーに移動し、ケイスくんと向かい合う。
「な、何だよ。何か文句あんのかよ」
内心自分の態度がいけないと分かっているらしいケイスくんはビクビクとしている。
怯えるくらいなら謝ればいいのに、幼いケイスくんはプライドを守る為に虚勢を張ることしか出来ないらしい。
「ううん、文句なんかないよ。ただね、ケイスくんには協力して欲しいことがあるの」
「協力!? 偉くて誰にでも威張れる皇子様に何の協力が必要だっていうんだよ!」
僕の言葉にケイスくんは目を剥く。
「僕は全然偉くなんかないよ。お母さんが死んじゃったから、僕には後ろ盾がないんだ」
後ろ盾がないせいで他の皇子とは随分待遇に差を付けられてきたことを話した。
教育一つとってもそうだ。この城ではケイスくんとチェルソくんの教育の為に専門家としてクレア先生とテルディナント先生を雇っているけれど、リューナジア城では元貴族階級とは言えあくまでも使用人のジルベールしか先生を付けてもらえなかった。
まあどうやら僕の存在は周りに隠されていたみたいだと分かった今では、外部から教師を雇わなかったのは情報統制の為でもあったのだろうと分かるんだけど。
とにかく僕は自分の身の上がなるべく可哀想に聞こえるようにケイスくんに話した。
「だからね、この城では皇子らしく振る舞えるようにケイスくんに協力して欲しいの」
「いいけど、俺にできることなんてあるのか……?」
ケイスくんは僕の話を聞いてすっかり鼻白んだ様子だった。
困惑気味に尋ねてくる。
「うん、あるよ。あのね、人前では僕に敬語を使ってほしいの。僕が皇子っぽく見えるように」
「は……?」
ケイスくんは顔を顰めるが、最初のような尖った雰囲気はない。
戸惑っているだけと言った感じだ。
これはあともう一押しだと思い、僕は思い切って彼の両手を握った。
「二人っきりの時は今みたいな口調のままでいいから……おねがい?」
子供らしい可愛さ満点に見えるように上目遣いに媚びた視線を送りながら小首を傾げた。
「な……っ!」
ケイスくんの手が熱くなったかと思うと、彼の顔が真っ赤になっているのが見えた。
「わ、分かったよ、敬語な。敬語使えばいいんだろ!」
恥ずかしそうに顔を逸らしてしまったけれど、彼は確かに了承してくれた。
よし、これでケイスくんとの関係は何とかなりそうだ。
ほらねお兄ちゃん、別に叩きのめさなくっても普通にお願いすれば分かってくれるんだから!
結局夕食の席ではケイスくんに避けられ続け、会う事が出来ていない。
授業では僕の方が先に教室に行ったらどうだろうと僕は時間より少し早めの時間に教室に向かっていた。
そしたら使用人に先導されて教室に向かうケイスくんと丁度鉢合わせることとなった。
「あ……っ!」
ケイスくんはハッと僕を睨み付ける。
「あ、おはよう!」
「……ふんっ」
僕がおずおずと挨拶をすると、ケイスくんは鼻を鳴らして無視して先に行こうとする。
そんな彼の後ろ姿に僕は思い切って声をかける。
「あのっ、良かったら二人で話しない……?」
「はあ……?」
外の景色が見えるバルコニーに移動し、ケイスくんと向かい合う。
「な、何だよ。何か文句あんのかよ」
内心自分の態度がいけないと分かっているらしいケイスくんはビクビクとしている。
怯えるくらいなら謝ればいいのに、幼いケイスくんはプライドを守る為に虚勢を張ることしか出来ないらしい。
「ううん、文句なんかないよ。ただね、ケイスくんには協力して欲しいことがあるの」
「協力!? 偉くて誰にでも威張れる皇子様に何の協力が必要だっていうんだよ!」
僕の言葉にケイスくんは目を剥く。
「僕は全然偉くなんかないよ。お母さんが死んじゃったから、僕には後ろ盾がないんだ」
後ろ盾がないせいで他の皇子とは随分待遇に差を付けられてきたことを話した。
教育一つとってもそうだ。この城ではケイスくんとチェルソくんの教育の為に専門家としてクレア先生とテルディナント先生を雇っているけれど、リューナジア城では元貴族階級とは言えあくまでも使用人のジルベールしか先生を付けてもらえなかった。
まあどうやら僕の存在は周りに隠されていたみたいだと分かった今では、外部から教師を雇わなかったのは情報統制の為でもあったのだろうと分かるんだけど。
とにかく僕は自分の身の上がなるべく可哀想に聞こえるようにケイスくんに話した。
「だからね、この城では皇子らしく振る舞えるようにケイスくんに協力して欲しいの」
「いいけど、俺にできることなんてあるのか……?」
ケイスくんは僕の話を聞いてすっかり鼻白んだ様子だった。
困惑気味に尋ねてくる。
「うん、あるよ。あのね、人前では僕に敬語を使ってほしいの。僕が皇子っぽく見えるように」
「は……?」
ケイスくんは顔を顰めるが、最初のような尖った雰囲気はない。
戸惑っているだけと言った感じだ。
これはあともう一押しだと思い、僕は思い切って彼の両手を握った。
「二人っきりの時は今みたいな口調のままでいいから……おねがい?」
子供らしい可愛さ満点に見えるように上目遣いに媚びた視線を送りながら小首を傾げた。
「な……っ!」
ケイスくんの手が熱くなったかと思うと、彼の顔が真っ赤になっているのが見えた。
「わ、分かったよ、敬語な。敬語使えばいいんだろ!」
恥ずかしそうに顔を逸らしてしまったけれど、彼は確かに了承してくれた。
よし、これでケイスくんとの関係は何とかなりそうだ。
ほらねお兄ちゃん、別に叩きのめさなくっても普通にお願いすれば分かってくれるんだから!
28
お気に入りに追加
4,107
あなたにおすすめの小説
【第1部完結】悪役令息ですが、家族のため精一杯生きているので邪魔しないでください~僕の執事は僕にだけイケすぎたオジイです~
ちくわぱん
BL
【11/28第1部完結・12/8幕間完結】(第2部開始は年明け後の予定です)ハルトライアは前世を思い出した。自分が物語の当て馬兼悪役で、王子と婚約するがのちに魔王になって結局王子と物語の主役に殺される未来を。死にたくないから婚約を回避しようと王子から逃げようとするが、なぜか好かれてしまう。とにかく悪役にならぬように魔法も武術も頑張って、自分のそばにいてくれる執事とメイドを守るんだ!と奮闘する日々。そんな毎日の中、困難は色々振ってくる。やはり当て馬として死ぬしかないのかと苦しみながらも少しずつ味方を増やし成長していくハルトライア。そして執事のカシルもまた、ハルトライアを守ろうと陰ながら行動する。そんな二人の努力と愛の記録。両片思い。じれじれ展開ですが、ハピエン。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
転生したら弟がブラコン重傷者でした!!!
Lynne
BL
俺の名前は佐々木塁、元高校生だ。俺は、ある日学校に行く途中、トラックに轢かれて死んでしまった...。
pixivの方でも、作品投稿始めました!
名前やアイコンは変わりません
主にアルファポリスで投稿するため、更新はアルファポリスのほうが早いと思います!
ある日、人気俳優の弟になりました。
樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。
拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ
親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。
え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか
※独自の世界線
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
双子攻略が難解すぎてもうやりたくない
はー
BL
※監禁、調教、ストーカーなどの表現があります。
22歳で死んでしまった俺はどうやら乙女ゲームの世界にストーカーとして転生したらしい。
脱ストーカーして少し遠くから傍観していたはずなのにこの双子は何で絡んでくるんだ!!
ストーカーされてた双子×ストーカー辞めたストーカー(転生者)の話
⭐︎登場人物⭐︎
元ストーカーくん(転生者)佐藤翔
主人公 一宮桜
攻略対象1 東雲春馬
攻略対象2 早乙女夏樹
攻略対象3 如月雪成(双子兄)
攻略対象4 如月雪 (双子弟)
元ストーカーくんの兄 佐藤明
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる