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第二部 セルフィニエ辺境伯領編
第百四話 僕のお祖父ちゃん
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「失礼します」
そっと入って来たのは茶髪に白髪がちらほらと混ざった五十代後半くらいのおじさんだった。
おじさんは僕がいるのを目にするなり、ぱちぱちと目を瞬かせた。
その瞳がじわじわと大きく見開かれていく。
「僕の、お祖父ちゃん……?」
おそるおそる尋ねる。
「おお、あまりにカレリーナそっくりで思わず驚いてしまいました。カレン殿下、よう南部まで来なすった」
僕のお祖父ちゃんは潤んだ瞳でにこりと微笑んだ。
微笑みに目を細めた瞬間にほろりと煌めくものが眦から零れたような気がした。
お祖父ちゃんのその顔を見た瞬間、僕は初めて南に来て良かったと少し思えた。
「エヴァレット、雑用を言いつけてすまないが殿下を寝室までお送りしてくれないか」
「かしこまりました」
辺境伯の頼みにお祖父ちゃんが頭を下げる。
少しでも僕がお祖父ちゃんと一緒にいられる時間を持てるように辺境伯が配慮してくれたのだろう。優しい人だ。
皇族である僕の部屋とそうではないかかりつけ医のジョンさんの部屋は全然別の場所に用意されているようで、ジョンさんは執事さんに案内されていった。
「さ、参りましょう」
微笑むお祖父ちゃんに僕はにっこりと笑った。
絨毯の道が敷かれた城の廊下を歩きながらお祖父ちゃんを見上げる。
「それにしても殿下は……」
「家族なんだから、僕らしかいない時は『殿下』っていうのやめてカレンって呼んでよ! 敬語もなし!」
お祖父ちゃんが殿下と口にしかけた言葉を遮って頼む。
「よろしいのですか?」
「うん!」
にこりと笑うと、お祖父ちゃんもくすりと微笑んでくれた。
「じゃあ、カレンと呼ぼうかね」
「えへへ」
祖父との距離がぐっと縮まったような気がして、胸の中がほかほかと暖かくなる感じがした。
それから寝室までの距離、祖父と色々な話をした。
体調はどうだとか。今度家に遊びに来てお祖母ちゃんに会って欲しいとか。
どんなことを勉強してるとか。
「ああ、そういえば」
話が祖父の仕事について及んだ時のことだった。
お祖父ちゃんは何かを思い出したかのように呟いた。
「明日も中央から来る予定の人がいての」
「へー」
南部の人は僕が来た首都がある辺りの地域のことを中央と呼んでいるらしい。
「それが公爵家の嫡男で、将来領土を治める時の為に勉強をしにわざわざ此処まで来てセルフィニエ様の元で見習いとして働くというらしい。見上げた若者もいたものだ」
「へえー」
うんうんと頷く。
「私がその教育係を任されたんだよ」
「すごいねお祖父ちゃん!」
「それでその子がどんな子が聞いたんだよ。何でもまだ十三歳でね」
十三歳。奇しくもお兄ちゃんと同い年だ。
この間に誕生日を迎えお兄ちゃんは十二から十三歳になっていた。
「目鼻の整った顔立ちをしている黒髪の子で」
黒髪のイケメン。これもお兄ちゃんと同じだ。
「それで、何ととっても頭のいい子らしい!」
頭もいい! まるでお兄ちゃんそのものだ!
そんなにお兄ちゃんそっくりな人が公爵家にいるなんて知らなかったなぁ。
明日ここに来るならその人にも会えるかな。
そっと入って来たのは茶髪に白髪がちらほらと混ざった五十代後半くらいのおじさんだった。
おじさんは僕がいるのを目にするなり、ぱちぱちと目を瞬かせた。
その瞳がじわじわと大きく見開かれていく。
「僕の、お祖父ちゃん……?」
おそるおそる尋ねる。
「おお、あまりにカレリーナそっくりで思わず驚いてしまいました。カレン殿下、よう南部まで来なすった」
僕のお祖父ちゃんは潤んだ瞳でにこりと微笑んだ。
微笑みに目を細めた瞬間にほろりと煌めくものが眦から零れたような気がした。
お祖父ちゃんのその顔を見た瞬間、僕は初めて南に来て良かったと少し思えた。
「エヴァレット、雑用を言いつけてすまないが殿下を寝室までお送りしてくれないか」
「かしこまりました」
辺境伯の頼みにお祖父ちゃんが頭を下げる。
少しでも僕がお祖父ちゃんと一緒にいられる時間を持てるように辺境伯が配慮してくれたのだろう。優しい人だ。
皇族である僕の部屋とそうではないかかりつけ医のジョンさんの部屋は全然別の場所に用意されているようで、ジョンさんは執事さんに案内されていった。
「さ、参りましょう」
微笑むお祖父ちゃんに僕はにっこりと笑った。
絨毯の道が敷かれた城の廊下を歩きながらお祖父ちゃんを見上げる。
「それにしても殿下は……」
「家族なんだから、僕らしかいない時は『殿下』っていうのやめてカレンって呼んでよ! 敬語もなし!」
お祖父ちゃんが殿下と口にしかけた言葉を遮って頼む。
「よろしいのですか?」
「うん!」
にこりと笑うと、お祖父ちゃんもくすりと微笑んでくれた。
「じゃあ、カレンと呼ぼうかね」
「えへへ」
祖父との距離がぐっと縮まったような気がして、胸の中がほかほかと暖かくなる感じがした。
それから寝室までの距離、祖父と色々な話をした。
体調はどうだとか。今度家に遊びに来てお祖母ちゃんに会って欲しいとか。
どんなことを勉強してるとか。
「ああ、そういえば」
話が祖父の仕事について及んだ時のことだった。
お祖父ちゃんは何かを思い出したかのように呟いた。
「明日も中央から来る予定の人がいての」
「へー」
南部の人は僕が来た首都がある辺りの地域のことを中央と呼んでいるらしい。
「それが公爵家の嫡男で、将来領土を治める時の為に勉強をしにわざわざ此処まで来てセルフィニエ様の元で見習いとして働くというらしい。見上げた若者もいたものだ」
「へえー」
うんうんと頷く。
「私がその教育係を任されたんだよ」
「すごいねお祖父ちゃん!」
「それでその子がどんな子が聞いたんだよ。何でもまだ十三歳でね」
十三歳。奇しくもお兄ちゃんと同い年だ。
この間に誕生日を迎えお兄ちゃんは十二から十三歳になっていた。
「目鼻の整った顔立ちをしている黒髪の子で」
黒髪のイケメン。これもお兄ちゃんと同じだ。
「それで、何ととっても頭のいい子らしい!」
頭もいい! まるでお兄ちゃんそのものだ!
そんなにお兄ちゃんそっくりな人が公爵家にいるなんて知らなかったなぁ。
明日ここに来るならその人にも会えるかな。
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