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第一部 リューナジア城編

第九十二話 ガラスの瞳、氷の視線 ①

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「それは確かに凄いかもしれないけれど、でもだからといってウィルがハンデを持つか弱い存在だということには変わりはないよ」

 それでもエリオットは意見を変えようとはしなかった。

「いや、オレは気に入ったぞ? オレの下に付けば、オレが皇帝になった暁にはお前が作った物を優先的に流通させる権利をくれてやってもいい」

 逆に目を輝かせているのはロイだ。
 血統以外にお兄ちゃんの利用価値を見出した、と言わんばかりに目を爛々とさせている。

「なっ、ロイ!?」

 ロイまでもお兄ちゃんのことを認め、この場で兄のことを認めていないのはエリオットただ一人になってしまった。

「エリオット、これでもオレの作った物はおもちゃだと言うつもりか?」

 お兄ちゃんは勝ち誇って笑う。
 エリオットはそんな兄を見つめて静かに唇を噛んだ。

「ああ……言うよ。ウィルを傷つけたくはないけれど、金属とガラスで作った道具なんて、魔術を使えば簡単に再現できるものさ」

 エリオットの顔からは笑みが消え、彼の蒼い瞳は鋭く兄を睨んでいた。
 柔和な笑みを形作るのは止めることにしたようだ。

「例えば今着けているソレ、少し見せてくれるかな」
「ああ」

 お兄ちゃんはかけていた眼鏡を外して簡単にエリオットに手渡してしまったので、壊されやしないかと僕はハラハラとした。
 予想に反してエリオットは丁寧な手つきで眼鏡を観察する。

「……ふうん、ガラスを特定の形に湾曲させることで光を屈折させ、視界を補強する方向に見える物を歪ませるんだね。視力を強化するのではなくて見える物の方を変えるなんて独特の発想だね」

 エリオットは一目で眼鏡の仕組みを見抜いてしまった。
 お兄ちゃんのお兄ちゃんは伊達ではなかった……! この兄弟、二人とも頭がいいんだ!

「つまりは光の屈折がかなめなんだ。ということはガラスでなくとも透明な材質でさえあればこの現象は再現できる。そうだろう?」

 エリオットは顔を歪めて不敵に微笑んだ。
 その表情は驚くほど兄と似ていた。

「まさか……!」

 エリオットが何をしようとしているのか思い当たったのか、お兄ちゃんが声を上げる。
 僕はぴんと来ずにただただ起きようとしていることを見つめるしかなかった。

「だからさ、こういうことなんだよ。Srajs Üste e Srajs Gœlスレズ・ウスティ・エ・スレズ・グル , rütas jüstïr m'èrgouルタス・ジュスティル・メルグ.」

 エリオットが早口で何かよく分からない言葉を口にした。
 きっと魔法の呪文だ……!

 エリオットの手の中に冷気が集まっていく。
 そして――――
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