悪逆第四皇子は僕のお兄ちゃんだぞっ! ~商人になりたいので悪逆皇子の兄と組むことにします~

野良猫のらん

文字の大きさ
72 / 171
第一部 リューナジア城編

第七十二話 ボードゲームで遊ぼう ③

しおりを挟む
 さらに一手一手、進ませていく。
 ゲームは中盤。現在は一点差で僕の方が勝っている。
 まだお兄ちゃんも僕も駒は一つも落ちていない。

 僕は皇帝の駒を主に動かしてマナを回収していた。
 そろそろ皇帝が取れる黒のマナが残っているマスも少なくなってきた。
 僕は数少ない黒のマナが残っているマスへと皇帝を進ませた。

「ふっ、本当にそこでいいのか?」
「え?」

 不意にお兄ちゃんがニヤリとほくそ笑んだ。
 そしてお兄ちゃんは愚者の駒を手に取り動かす。
 動かした先は……僕の皇帝の駒の一つ隣だ!
 マナを取るのに夢中でいつの間にか愚者の駒に近づきすぎてしまってたんだ!

「あわわっ!」

 逃げなきゃ!
 皇帝の駒が取られたら負けちゃう!
 僕は慌てて黒のマナが残ってて愚者から遠ざかる方向のマスへ皇帝を逃がした。
 皇帝だけ動かしまくっていたから、他の駒はほとんど自陣付近に固まったままだ。

「ふふっ」

 お兄ちゃんの愚者の駒は当然追ってくる。

「あれっ」

 不味い、もう逃げる方向にはもう白いマナしか残っていない。
 だけど皇帝を取られたら負けだから逃げなきゃいけない。
 僕は仕方なく白いマナの上に駒を動かした。
 ちなみに駒はどれも足を広げて立っているポーズなので、マナを足の間に挟むようにして駒を置くことができる。

「あっ、あっ」

 お兄ちゃんの愚者の駒は尚も追いすがってくる。
 僕が慌てて駒を動かすのを面白そうにニヤニヤと眺めながらお兄ちゃんは駒を動かす。
 僕の皇帝の駒が白いマナを回収できないのを後目に、お兄ちゃんの愚者の駒は悠々と白のマナを回収していく。

 結局自陣営まで皇帝の駒が逃げ込む頃にはお兄ちゃんと僕の点差は逆転していた。
 そのまま僕は点差を覆すことができずにゲームは終了した。

「もおーっ! おにーちゃん初心者相手に大人気ない!」

 僕はゲームが終わるなり足をぱたぱたさせて抗議した。

「はははっ、すまんすまん。慌てるお前が可愛くてつい」
「おにーちゃんって好きな子に意地悪しちゃうタイプでしょ」
「す、好きな子!? いやそんなことはないとは思うが」

 ぷくっと頬を膨らませてむくれていると、お兄ちゃんはあの手この手で宥めようと慌てたのだった。

「えへへっ、そんなに怒ってないよ」

 機嫌を直してにこりと笑うと、兄はほっと胸を撫で下ろした。

「さ、もっかいやろ! 今度は僕が勝つぞー!」

 そうしてもう一度対戦が始まったのだった。



 何度も対戦し、大満足の休日を過ごした。

「それにしても何で愚者なんて名前なんだろうね、この駒。『暗殺者』とかにした方がかっこいいんじゃないかな」

 駒を手に取り眺めながらしみじみと呟く。

「ふっ、そりゃ為政者の命を狙う者など愚かだと刷り込んでおきたいんだよ」
「あっ、そうか」

 暗殺者が皇帝を下すゲームなんて庶民が遊んでいたら、皇帝としては縁起が悪いか。

「だがオレは嫌いじゃないぞこの愚者という駒。周りから愚者と目されている者こそが皇帝を下せる……ククク、いいじゃないか」

 お兄ちゃんは愚者の駒に自分を重ねて笑うのだった。
しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

異世界で孵化したので全力で推しを守ります

のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL

処理中です...