悪逆第四皇子は僕のお兄ちゃんだぞっ! ~商人になりたいので悪逆皇子の兄と組むことにします~

野良猫のらん

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第一部 リューナジア城編

第五十六話 魔法のお薬、それは

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「その成長を助ける薬って一体どんな物なんですか……?」

 僕は恐る恐る尋ねた。

「ちょっと待ってろ。取ってくる」

 部屋を去り、ほどなくして戻ってきたシアの手には小瓶が握られていた。

「ほらよ、これだ」

 シアが手渡すそれを受け取る。
 小瓶の中には丸薬がたくさん詰まっていた。

「これは一体……?」

 こんな物を飲むだけで成長が促進されるのだろうか。
 一体どんな魔法が秘められているのだろうかと小瓶の中を見つめる。

「ははっ、そんな大したもんじゃねえよ」

 訝っている様子の僕を見てシアが噴き出す。
 僕はむっとした顔をしてシアを見上げた。

「それには人間の肉体を構成するのに必要なありとあらゆる栄養素がぶち込まれている。ただそれだけだ」
「そ、それって……!」

 ――――つまりこれは所謂ビタミン剤!?
 サプリメントってこと!?
 僕は今度は驚愕に目を見開いて手の中の丸薬を見下ろした。

「お貴族様ってぇのは栄養バランスなんざ何も考えねえでバカスカと自分の好きなもん食ってんだろ? 特に生っちろいパン。ありゃぁ駄目だ。庶民みたいに黒いパンを食べねェから栄養が不足する」

 そういえば前世でも小麦粉のパンよりライ麦パンの方が栄養価が高いって聞いたことがあるなとシアの言葉を聞いて思い出す。

「だからそれで精々栄養を付けな。そしたらデカくなれる」
「ありがとうございます……!」

 僕は小瓶を大切に握り込んで頭を下げた。
 栄養学の発達していないこの世界ではこの薬は本当に貴重なものだ。

「ああ、ただし一日一粒までだからな。大量に飲むんじゃねえぞ」
「何故ですか? 身体に良い物なら大量に取り込めばそれだけ身体が丈夫になるのではないですか?」

 兄がシアに疑問を呈する。

「どんな物でも過ぎれば毒になるもんだ。例えば塩だって生き物が生きるには必須のものだが摂り過ぎれば病を引き起こす。その丸薬も大量に飲んだら蕁麻疹や腫物が出来るぜ」

 ひえー。一日一粒を厳守しないと。

「確かにそういうことなら理解が及びます。恐らく正しい理論なのでしょう。しかし、あなたは何故そのようなことをご存知なのでしょうか? オレの初めて聞く知識ばかりです」

 兄の目が知的好奇心に輝いている。
 専門分野こそ違うものの、シアもまたこの世界において科学的知識を有する珍しい人物だ。
 兄にとっては初めて見つけた同胞とも言えるかもしれない。

「あぁ? そりゃ死霊術士ネクロマンサーが人間の魂と肉体を構成するものについて知っているのは当然だろ?」

 シアは事も無げに答えた。
 そうか、死霊術士ネクロマンサーだから人体に詳しい! 盲点だった!

「……納得しました。ここまで聞いてあなたにお願いしたいことが出来ました」

 兄は居住まいを正してシアを見つめる。
 一体どうしたんだろう。

「おう、なんだ。言ってみろ」

 シアに促され、兄は意を決して口を開く。

「どうか、弟の専属医師になっていただけないでしょうか……!」
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