56 / 171
第一部 リューナジア城編
第五十六話 魔法のお薬、それは
しおりを挟む
「その成長を助ける薬って一体どんな物なんですか……?」
僕は恐る恐る尋ねた。
「ちょっと待ってろ。取ってくる」
部屋を去り、ほどなくして戻ってきたシアの手には小瓶が握られていた。
「ほらよ、これだ」
シアが手渡すそれを受け取る。
小瓶の中には丸薬がたくさん詰まっていた。
「これは一体……?」
こんな物を飲むだけで成長が促進されるのだろうか。
一体どんな魔法が秘められているのだろうかと小瓶の中を見つめる。
「ははっ、そんな大したもんじゃねえよ」
訝っている様子の僕を見てシアが噴き出す。
僕はむっとした顔をしてシアを見上げた。
「それには人間の肉体を構成するのに必要なありとあらゆる栄養素がぶち込まれている。ただそれだけだ」
「そ、それって……!」
――――つまりこれは所謂ビタミン剤!?
サプリメントってこと!?
僕は今度は驚愕に目を見開いて手の中の丸薬を見下ろした。
「お貴族様ってぇのは栄養バランスなんざ何も考えねえでバカスカと自分の好きなもん食ってんだろ? 特に生っ白いパン。ありゃぁ駄目だ。庶民みたいに黒いパンを食べねェから栄養が不足する」
そういえば前世でも小麦粉のパンよりライ麦パンの方が栄養価が高いって聞いたことがあるなとシアの言葉を聞いて思い出す。
「だからそれで精々栄養を付けな。そしたらデカくなれる」
「ありがとうございます……!」
僕は小瓶を大切に握り込んで頭を下げた。
栄養学の発達していないこの世界ではこの薬は本当に貴重なものだ。
「ああ、ただし一日一粒までだからな。大量に飲むんじゃねえぞ」
「何故ですか? 身体に良い物なら大量に取り込めばそれだけ身体が丈夫になるのではないですか?」
兄がシアに疑問を呈する。
「どんな物でも過ぎれば毒になるもんだ。例えば塩だって生き物が生きるには必須のものだが摂り過ぎれば病を引き起こす。その丸薬も大量に飲んだら蕁麻疹や腫物が出来るぜ」
ひえー。一日一粒を厳守しないと。
「確かにそういうことなら理解が及びます。恐らく正しい理論なのでしょう。しかし、あなたは何故そのようなことをご存知なのでしょうか? オレの初めて聞く知識ばかりです」
兄の目が知的好奇心に輝いている。
専門分野こそ違うものの、シアもまたこの世界において科学的知識を有する珍しい人物だ。
兄にとっては初めて見つけた同胞とも言えるかもしれない。
「あぁ? そりゃ死霊術士が人間の魂と肉体を構成するものについて知っているのは当然だろ?」
シアは事も無げに答えた。
そうか、死霊術士だから人体に詳しい! 盲点だった!
「……納得しました。ここまで聞いてあなたにお願いしたいことが出来ました」
兄は居住まいを正してシアを見つめる。
一体どうしたんだろう。
「おう、なんだ。言ってみろ」
シアに促され、兄は意を決して口を開く。
「どうか、弟の専属医師になっていただけないでしょうか……!」
僕は恐る恐る尋ねた。
「ちょっと待ってろ。取ってくる」
部屋を去り、ほどなくして戻ってきたシアの手には小瓶が握られていた。
「ほらよ、これだ」
シアが手渡すそれを受け取る。
小瓶の中には丸薬がたくさん詰まっていた。
「これは一体……?」
こんな物を飲むだけで成長が促進されるのだろうか。
一体どんな魔法が秘められているのだろうかと小瓶の中を見つめる。
「ははっ、そんな大したもんじゃねえよ」
訝っている様子の僕を見てシアが噴き出す。
僕はむっとした顔をしてシアを見上げた。
「それには人間の肉体を構成するのに必要なありとあらゆる栄養素がぶち込まれている。ただそれだけだ」
「そ、それって……!」
――――つまりこれは所謂ビタミン剤!?
サプリメントってこと!?
僕は今度は驚愕に目を見開いて手の中の丸薬を見下ろした。
「お貴族様ってぇのは栄養バランスなんざ何も考えねえでバカスカと自分の好きなもん食ってんだろ? 特に生っ白いパン。ありゃぁ駄目だ。庶民みたいに黒いパンを食べねェから栄養が不足する」
そういえば前世でも小麦粉のパンよりライ麦パンの方が栄養価が高いって聞いたことがあるなとシアの言葉を聞いて思い出す。
「だからそれで精々栄養を付けな。そしたらデカくなれる」
「ありがとうございます……!」
僕は小瓶を大切に握り込んで頭を下げた。
栄養学の発達していないこの世界ではこの薬は本当に貴重なものだ。
「ああ、ただし一日一粒までだからな。大量に飲むんじゃねえぞ」
「何故ですか? 身体に良い物なら大量に取り込めばそれだけ身体が丈夫になるのではないですか?」
兄がシアに疑問を呈する。
「どんな物でも過ぎれば毒になるもんだ。例えば塩だって生き物が生きるには必須のものだが摂り過ぎれば病を引き起こす。その丸薬も大量に飲んだら蕁麻疹や腫物が出来るぜ」
ひえー。一日一粒を厳守しないと。
「確かにそういうことなら理解が及びます。恐らく正しい理論なのでしょう。しかし、あなたは何故そのようなことをご存知なのでしょうか? オレの初めて聞く知識ばかりです」
兄の目が知的好奇心に輝いている。
専門分野こそ違うものの、シアもまたこの世界において科学的知識を有する珍しい人物だ。
兄にとっては初めて見つけた同胞とも言えるかもしれない。
「あぁ? そりゃ死霊術士が人間の魂と肉体を構成するものについて知っているのは当然だろ?」
シアは事も無げに答えた。
そうか、死霊術士だから人体に詳しい! 盲点だった!
「……納得しました。ここまで聞いてあなたにお願いしたいことが出来ました」
兄は居住まいを正してシアを見つめる。
一体どうしたんだろう。
「おう、なんだ。言ってみろ」
シアに促され、兄は意を決して口を開く。
「どうか、弟の専属医師になっていただけないでしょうか……!」
62
あなたにおすすめの小説
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
異世界で孵化したので全力で推しを守ります
のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる