悪逆第四皇子は僕のお兄ちゃんだぞっ! ~商人になりたいので悪逆皇子の兄と組むことにします~

野良猫のらん

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第一部 リューナジア城編

第二十七話 久しぶりの発熱

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「ううーん……」

 おにいちゃんに懐中時計をもらって嬉しくてはしゃぎ過ぎたせいだろうか。
 誕生日会の翌日、僕は久しぶりに熱を出して寝込んでしまっていた。

「あたまいたい……」
「今日は授業もお休みにしてもらいましょう。ゆっくり休んでいて下さいませ」
「うん……」

 乳母の言葉に大人しく頷いた。

「今日は特別良く効くという解熱剤をもらったのです。飲んで下さいませ」
「うん」

 寝込んでいる間にお医者さんでも来てたのかなと思いながら、粉薬と水を受け取って大人しく飲み干した。

 兄にもらった大切な懐中時計は僕に時計盤が見えるようにベッド脇のサイドテーブルの上に置いてある。
 規則正しく時を刻んでいる針のおかげで、身体を起こさなくても今が何時か分かる。
 それを見ているだけで何だか安心してくる。
 段々と瞼が重くなってくるのを感じた。

「んう……」



「カレン殿下」

 いつの間にか寝入っていたらしい。
 乳母に静かに声をかけられて目を覚ます。

「殿下にお客様がいらっしゃいましたよ」
「お客さん……?」

 僕を訪ねてくるなんて一体誰だろうと首を傾げる。

「カレン」

 乳母の後ろから姿を現したのはウィルフリートだった。

「おにーちゃん……!」

 ぱっと顔を輝かせて、ベッドから身体を起こそうとすると、それをお兄ちゃんに押し止められた。

「寝ていろ。お前が熱を出したと聞いて見舞いに来たんだ」
「ありがとう、僕嬉しい」

 にこにことしている僕を見て乳母がそっと席を外す。

「具合はどうだ?」
「寝てたから大丈夫だよ。なんか頭がふわふわするの」
「確かに。解熱剤が効いたようだな」

 兄がそっと僕の額に手を当てる。

「熱くない。平熱だ」

 僕の体温を確認してほっとした様子の兄を見上げて、ひょっとしてと思う。

「もしかして解熱剤もおにーちゃんが……?」
「ああ」

 兄は肩を竦めて肯定する。
 特別良く効く解熱剤っていうのはお兄ちゃんが作ってくれたものだったんだ。
 最高のお見舞い品だ。

「すごいなあ。おにーちゃんはお薬も作れちゃうんだ」

 薬の副作用か、ぽやぽやした頭で兄を見上げる。

「効いたようで何よりだ。ところでカレン、もし元気になればの話なんだが」
「うん」
「眼鏡や望遠鏡作りのことで相談したいことがある。オレの部屋に来てくれないか」
「いいよお」
「ああ。だから早く元気になれよ」

 兄が慈愛に満ちた視線と形容しても構わないぐらい優しい視線を僕に降り注がせる。
 兄のこんな顔を見るのは初めてかもしれない。

 もしかして僕は兄に大切な存在だと思ってもらえているのだろうか。
 そうだといいなと思いながら、再びの眠気が瞼を閉ざしていく……。



 * * *



「寝たか」

 美しいビスクドールのような寝顔で、弟が自らの金髪に包まれている。
 弟が眠りに落ちるだけでそこには一幅の絵画が生まれてしまう。

 まるで天使のような愛おしい弟。
 オレには彼しか存在しない。
 だから彼にとってもオレが唯一の存在であればいいのにと願う。

「カレン……」

 祈るように彼の額に接吻くちづけを落とした。
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