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第一部 リューナジア城編
第八話 お兄ちゃんの発明はすごくすごい!
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彼の語り口は唐突だった。
まるで自分の発明品について他人に語るのが初めてであるかのように。
「蝋で出来た管を取り付け、針をセットする。すると蝋管が回転し始め針が蝋に溝を刻み付ける。その状態でこの筒に向かって声を出すと、波長の通りに針が揺れて蝋管に凹凸が刻まれる。今度はその凹凸に沿うように針を動かすと、筒に向かって出した声をそっくりそのまま再生することができる」
「そ……それって――――」
――――蓄音機だ!
現代日本での知識がある僕にはすぐにピンと来た。
ウィルフリートが発明していたものは蓄音機だったのだ。
蓄音機と聞いて思い浮かぶようなラッパの先っぽのようなものは付いておらず、代わりに機関銃の銃身のような長い金属の筒が付いているだけだ。集音に適した形はまだ模索している最中なのだろう。
「ふっ、意味不明か? こんな物下らないと笑うなら笑えばいい!」
僕が何か言う前にウィルフリートが自らの発明品を自虐した。
まるで悪口を言われる前に先んじて自分で貶せば心にダメージを負わないで済むとばかりに。
「そんなことない!」
でも僕はこれが下らないとは思わなかった。
だからはっきりと言った。
「おにーちゃんの発明はすごくすごい! だって音を形にできるんだよ? 音を売り物にできるじゃん!」
僕の頭にはこの発明品をどのように行商に利用できるかということしかなかった。思わず幼児の振りが少し崩れるほどに。
レコードが出来れば音の再生装置とレコードをセットにして売ることが出来る。生のオーケストラやオペラを聞くことができる上級貴族相手には微妙かもしれないが、下級貴族や平民の富裕層が購買層になるかもしれない!
理解不能なことを聞いた、とばかりにウィルフリートは眉を吊り上げる。
「売り……? お前は、今、オレの作った物を『すごい』と言ったのか?」
彼の視線の方が僕の遥か上にあって僕のことを見下ろしているのにも関わらず、彼の口調は恐る恐るとしたもので、それが何だか可笑しかった。
「うん!」
自信を持って元気に溌剌と頷いた。
「ふ……はは、はははははははははっ!」
ウィルフリートは突然哄笑を漏らし始める。
「父上も母上も兄も宰相も、誰もがオレが作る物を『下らない、不気味だ、止めろ』と言った! それをお前は『すごい』と言うのか? はは、そんな変なことを言う奴は……お前が初めてだ!」
彼は顔を覆って天井を仰ぐ。
「はは、は……はは……」
「おにーちゃん、なかないで?」
絨毯の上に膝を突くように崩れ落ちた彼の頬に光る粒が見えたような気がして、僕は静かに兄の頭に手を伸ばし撫でたのだった。
まるで自分の発明品について他人に語るのが初めてであるかのように。
「蝋で出来た管を取り付け、針をセットする。すると蝋管が回転し始め針が蝋に溝を刻み付ける。その状態でこの筒に向かって声を出すと、波長の通りに針が揺れて蝋管に凹凸が刻まれる。今度はその凹凸に沿うように針を動かすと、筒に向かって出した声をそっくりそのまま再生することができる」
「そ……それって――――」
――――蓄音機だ!
現代日本での知識がある僕にはすぐにピンと来た。
ウィルフリートが発明していたものは蓄音機だったのだ。
蓄音機と聞いて思い浮かぶようなラッパの先っぽのようなものは付いておらず、代わりに機関銃の銃身のような長い金属の筒が付いているだけだ。集音に適した形はまだ模索している最中なのだろう。
「ふっ、意味不明か? こんな物下らないと笑うなら笑えばいい!」
僕が何か言う前にウィルフリートが自らの発明品を自虐した。
まるで悪口を言われる前に先んじて自分で貶せば心にダメージを負わないで済むとばかりに。
「そんなことない!」
でも僕はこれが下らないとは思わなかった。
だからはっきりと言った。
「おにーちゃんの発明はすごくすごい! だって音を形にできるんだよ? 音を売り物にできるじゃん!」
僕の頭にはこの発明品をどのように行商に利用できるかということしかなかった。思わず幼児の振りが少し崩れるほどに。
レコードが出来れば音の再生装置とレコードをセットにして売ることが出来る。生のオーケストラやオペラを聞くことができる上級貴族相手には微妙かもしれないが、下級貴族や平民の富裕層が購買層になるかもしれない!
理解不能なことを聞いた、とばかりにウィルフリートは眉を吊り上げる。
「売り……? お前は、今、オレの作った物を『すごい』と言ったのか?」
彼の視線の方が僕の遥か上にあって僕のことを見下ろしているのにも関わらず、彼の口調は恐る恐るとしたもので、それが何だか可笑しかった。
「うん!」
自信を持って元気に溌剌と頷いた。
「ふ……はは、はははははははははっ!」
ウィルフリートは突然哄笑を漏らし始める。
「父上も母上も兄も宰相も、誰もがオレが作る物を『下らない、不気味だ、止めろ』と言った! それをお前は『すごい』と言うのか? はは、そんな変なことを言う奴は……お前が初めてだ!」
彼は顔を覆って天井を仰ぐ。
「はは、は……はは……」
「おにーちゃん、なかないで?」
絨毯の上に膝を突くように崩れ落ちた彼の頬に光る粒が見えたような気がして、僕は静かに兄の頭に手を伸ばし撫でたのだった。
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