嫌われてたはずなのに本読んでたらなんか美形伴侶に溺愛されてます 執着の騎士団長と言語オタクの俺

番外編

現パロ編 第一話 エルムート視点

　一纏めに結ばれた金髪が艶やかに煌めき、眉の形は美しくアーチを描き、白い肌は人形のようでくすみ一つない。ツリ目の中央に位置する赤い瞳は、宝石と見まがうほど美しい。極めつきには通り過ぎざまに花の香りがする男。
　
　それがエルムートから見た、同僚のフランソワであった。
　
　それ以上でもそれ以下でもない。同じオフィスに勤務するものの、特に個人的な会話を交わしたこともない、同僚である以外の関わりのない人間であった。
　いつも通り花の香りをまとわせて通り過ぎていくフランソワを見送り、エルムートは仕事に邁進した。
　
「はあ……」
　
　残業を終え、エルムートは自宅のマンションに帰宅した。夕食、いや、夜食を食べて風呂に入れば、残された余暇は少しもない。
　そういうとき、エルムートのすることは決まっていた。ベッドに寝転がりながら、スマホで動画サイトを開く。エルムートは目的の動画を開いた。
　
「にゃ～ん」
　
　すぐに愛らしい声が動画から流れてきた。
　エルムートのもっぱらのストレス解消法は、猫ちゃん犬ちゃん動画を見ることであった。可愛い猫ちゃんの姿に、会社では「鋼鉄のエルムート」なんて呼ばれている鉄面皮が綻ぶ。
　
　猫ちゃん犬ちゃんの映るショート動画が、いくつも流されていく。このショート動画という機能は便利だ。何もしなくても、勝手に次の犬ちゃん猫ちゃん動画を流してくれるのだから。
　
「おや」
　
　そう思っていると、スマホは犬ちゃん猫ちゃん動画ではないものを流した。「フルール」という名前の美容系配信者のメイク動画だった。
　
　メイク動画には興味がないのだが、犬猫動画に切り替える気力もなく、惰性で動画を眺めた。
　フルールは動画の中で次々にメイクを切り替え、様々な姿に変身していく。そのどれもが鮮やかで美しかった。何より宝石のような赤い瞳に見入られ、エルムートは気がつけば食い入るように動画を見つめていた。
　
　ショート動画はあっという間に終わってしまった。エルムートはショート動画を何度も再生し、チャンネル登録した。エルムートの指は勝手に動き、フルールの他の動画を再生し始めていた。
　
　いくつもの動画を見て気がついたのだが、フルールは驚いたことに男だった。メンズメイク、というやつらしい。同じ男がこんなにも美しく変身できるなんて。
　
　エルムートはフルールの動画を見漁り、ほとんど徹夜してしまった。
　フルールの動画を見続け空が白み始めたころ、エルムートは一つ気がついたことがあった。
　
「このフルールという男……フランソワに似ているな？」

※気がつくのが遅い。

　
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いきなりですが、今日から一日一話現パロ編を上げていこうと思います。
理由は書きたくなったからです！
今のところ、全六話の予定です。