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第四十七話
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エトワールはおよそ生後半年になり、すっかり大きくなった。顔つきも随分と猫らしくなった。
心はまだまだ子供のようで、猫じゃらしを振ると大はしゃぎで飛びついてくる。
「エトワール、行くよー」
「ぷっ、にゃっ、にゃっ、にゃっ、にゃっ」
使役の術で結ばれているおかげでエトワールがどこにいるのか分かる。
二階にいるエトワールに呼びかけると、エトワールは元気に鳴きながら下りてきた。段差を下りながら返事をするせいで鳴き声に変な節がついている。
それから、反動をつけてシュタッと僕の肩に飛び乗る。ここが彼の定位置だ。
今日は病除けの魔術をエトワールにかけてもらいに獣医さんのところに行く日だ。
魔術師にとって使い魔は単なるペットであるだけでなく手足となってくれる相棒なので、そんなパートナーの健康を守るための魔術も発展している。
エトワールも痛いことはされないと分かっているので、大人しくついてきてくれる。
「おお、久しぶりだなエトワール。すっかり大きくなったじゃないか」
玄関の向こうには当たり前の顔をしてエルネスト先生が待っていた。
エトワールを獣医さんのところに連れて行く予定があると言ったら、ついていきたいと言い出したのだ彼は。
僕と会うため……というだけでなく、エトワールに会いたいというのも本当なのかもしれない。
だってエルネスト先生、動物好きそうだもんね。
学院の彼の私室にも実際にエトワールの休憩スペースを用意してくれたし。たまにエトワールをつれて彼の部屋を訪ねると、エトワールはティーテーブルの近くに置かれた柔らかい毛布がたっぷり敷かれたバスケットの中で寛ぐのだ。
エルネスト先生の顔を見るなり、エトワールの尻尾がピーンと真っ直ぐ上を向くのが分かった。喜びを表す尻尾の形だ。
(あっ、ご主人様の大好きなひとだ!)
そんな感じの思念が伝わってくる。
真実なのでそれは違うよと訂正することもできず、かあっと頬が熱くなる。
「ルインハイトくん、どうしたのかね? 顔色が赤いようだが、熱でも……?」
「ち、違います、大丈夫です!」
なんとか誤魔化して馬車に乗り込んだ。
もうすっかり毎日のように彼の馬車に乗っている気がする。
エトワールも初めてではないので、落ち着き払って僕の膝の上で丸くなっている。
馬車はアニマル・ストリートに着き、僕らはエトワールのかかりつけの獣医のところに向かう。
動物病院では動物を連れた人が何人か長椅子に座っていた。
使い魔ばかりがこの動物病院に通っているわけではなく、普通のペットもいる。普通のペットと思しき犬や猫たちはみな一様に震えていた。
使役の術でご主人様と思念が繋がっているわけでもない彼らにとっては、獣医は変な杖を振りかざして変な言葉をぶつぶつ呟き、自分に怪しい光や粉を降り注がせる恐ろしい存在でしかないからだ。
獣医さんはちゃんと魔導学院を卒業した魔術師しかなれない立派な職業なんだけどね。
僕も二年生になったら動物用の治癒魔術を学べる講義を取ろうと思っている。担当講師はもちろん隣にいるエルフの賢者様だろう。
ただ癒すだけでなく、今日のエトワールみたいに病除けの魔術をかけてあげたり、必要になる知識は多岐に渡る。恐らく勉強は大変になることだろう。
それでも最初から人間相手の治癒魔術士になると決めるのではなく、いろいろな可能性を探ってみようと思っている。
もう自分から自分の可能性を狭めたりしないと決めたのだから。
エトワールの名前が呼ばれ、僕たちは診察室に向かった。
「あら~、かわいいでちゅね~大きくなったね~」
顔面に大きな傷跡をつけた強面の獣医がエトワールの姿を目にした途端、デレデレの猫なで声になる。
……僕も猫なで声ができなきゃ獣医になれないのかな?
心はまだまだ子供のようで、猫じゃらしを振ると大はしゃぎで飛びついてくる。
「エトワール、行くよー」
「ぷっ、にゃっ、にゃっ、にゃっ、にゃっ」
使役の術で結ばれているおかげでエトワールがどこにいるのか分かる。
二階にいるエトワールに呼びかけると、エトワールは元気に鳴きながら下りてきた。段差を下りながら返事をするせいで鳴き声に変な節がついている。
それから、反動をつけてシュタッと僕の肩に飛び乗る。ここが彼の定位置だ。
今日は病除けの魔術をエトワールにかけてもらいに獣医さんのところに行く日だ。
魔術師にとって使い魔は単なるペットであるだけでなく手足となってくれる相棒なので、そんなパートナーの健康を守るための魔術も発展している。
エトワールも痛いことはされないと分かっているので、大人しくついてきてくれる。
「おお、久しぶりだなエトワール。すっかり大きくなったじゃないか」
玄関の向こうには当たり前の顔をしてエルネスト先生が待っていた。
エトワールを獣医さんのところに連れて行く予定があると言ったら、ついていきたいと言い出したのだ彼は。
僕と会うため……というだけでなく、エトワールに会いたいというのも本当なのかもしれない。
だってエルネスト先生、動物好きそうだもんね。
学院の彼の私室にも実際にエトワールの休憩スペースを用意してくれたし。たまにエトワールをつれて彼の部屋を訪ねると、エトワールはティーテーブルの近くに置かれた柔らかい毛布がたっぷり敷かれたバスケットの中で寛ぐのだ。
エルネスト先生の顔を見るなり、エトワールの尻尾がピーンと真っ直ぐ上を向くのが分かった。喜びを表す尻尾の形だ。
(あっ、ご主人様の大好きなひとだ!)
そんな感じの思念が伝わってくる。
真実なのでそれは違うよと訂正することもできず、かあっと頬が熱くなる。
「ルインハイトくん、どうしたのかね? 顔色が赤いようだが、熱でも……?」
「ち、違います、大丈夫です!」
なんとか誤魔化して馬車に乗り込んだ。
もうすっかり毎日のように彼の馬車に乗っている気がする。
エトワールも初めてではないので、落ち着き払って僕の膝の上で丸くなっている。
馬車はアニマル・ストリートに着き、僕らはエトワールのかかりつけの獣医のところに向かう。
動物病院では動物を連れた人が何人か長椅子に座っていた。
使い魔ばかりがこの動物病院に通っているわけではなく、普通のペットもいる。普通のペットと思しき犬や猫たちはみな一様に震えていた。
使役の術でご主人様と思念が繋がっているわけでもない彼らにとっては、獣医は変な杖を振りかざして変な言葉をぶつぶつ呟き、自分に怪しい光や粉を降り注がせる恐ろしい存在でしかないからだ。
獣医さんはちゃんと魔導学院を卒業した魔術師しかなれない立派な職業なんだけどね。
僕も二年生になったら動物用の治癒魔術を学べる講義を取ろうと思っている。担当講師はもちろん隣にいるエルフの賢者様だろう。
ただ癒すだけでなく、今日のエトワールみたいに病除けの魔術をかけてあげたり、必要になる知識は多岐に渡る。恐らく勉強は大変になることだろう。
それでも最初から人間相手の治癒魔術士になると決めるのではなく、いろいろな可能性を探ってみようと思っている。
もう自分から自分の可能性を狭めたりしないと決めたのだから。
エトワールの名前が呼ばれ、僕たちは診察室に向かった。
「あら~、かわいいでちゅね~大きくなったね~」
顔面に大きな傷跡をつけた強面の獣医がエトワールの姿を目にした途端、デレデレの猫なで声になる。
……僕も猫なで声ができなきゃ獣医になれないのかな?
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