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第四十一話
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週明けの授業初日。
エルネスト先生はいつでも部屋に来るといいと言ってくれたが、僕だって授業があるし彼にも担当している授業はある。
昼休みに食事のついでにするような話でもないし、いつ彼の担当している授業があるのかは何となく把握していたので僕の授業が終わった後で彼の空いてる時間に部屋を訪ねることにした。
「ルインハイトくん、おめでとう。満点だ」
古代語の授業の時、満面の笑みのエルネスト先生から小テストを返してもらった。小テストの用紙には朱いインクでエルフにとって「とても良い」という意味の花を表した図柄、いわゆる『はなまる』が大きく描かれていた。
おおー、と感嘆の声が周囲から上がる。
愛の力かしら、なんて囁き声が聞こえるのが居心地悪い。
最近では妬み嫉みの視線を感じることはほとんどと言っていいほどなく、僕がこうして注目を浴びると「やはり聖女様の生まれ変わりだから」と思考停止したような崇拝の的になることがほとんどだった。
暇だからとはいえ、きちんと勉強した結果なんだけどね。
「ハッ」
そんな中、突き刺すような敵意を感じた。
振り向くと、後方の席に座っている男子学生が僕のことを睨んでいた。同じ一年生の証である赤色のローブを纏っている。
特徴的なツリ目と栗色の髪色が相まってキツネっぽい印象の顔つきをした男の子だった。
「……」
見覚えのない子だ。
強いて言えば栗色の髪の毛がお父さんと似ていなくもない。
知らない子から敵意を向けられる理由が分からず、不気味さを覚えた。
「おい、貴様」
授業の後、問題のその子に声をかけられた。
立ち振る舞いそのものは上品だが、彼が僕を睨む目付きには明らかな侮蔑が籠っていた。
「私は騙されぬからな」
「は、はあ……?」
いきなりの言葉である。
周りを憚るような囁き声だったが、意味が分からない。
「聖女の生まれ変わりを気取ってはいるが、私は騙されぬ。父上から聞いたのだ、貴様が街娼の子だとな」
「え……ッ!?」
思わぬ不意打ちに胸がグサリと見えない刃で刺されたような気がした。
一体、何故目の前の男子学生がそんなことを知っているのか。
ドクンドクンと心臓が嫌な感じで打つ。
その時、彼が耳に付けた銀のピアスが目に入った。
王家の薔薇の紋章が刻印されている。
ということは、この男子学生も王家の一員なんだ……。
この子の言う「父上」が誰なのか何となく予想がついた。
恐らくは僕のことを認知してくれなかった本当の父親だ。
ということは目の前の彼は正妻との間に生まれた僕の異母兄弟なのだろう。王家の血を引いているなら、道理でお父さんやお祖父様とそっくりの栗色の髪をしているわけだ。
僕は血縁上の兄弟との最悪の邂逅を果たした。
「フンッ」
彼はそそくさと僕から離れていく。
学生たちから半ば崇拝の対象になっている僕に因縁をつけたことがバレたら学生生活に支障が出るからだろう。
どうしよう、あの子に噂を広められたら……。
実はスラム街育ちの平民だったとバレて同級生らに手の平を返されることになるのだろうか。騙したなと罵られることになるのだろうか。
今後のことを考えると鉛を呑み込んだような気分だった。
このままにしておいたらいけないのは分かるけれど、何をどうすればいいのかまったく分からない。
僕は上の空でエルネスト先生の部屋へとトボトボ向かったのだった。
エルネスト先生はいつでも部屋に来るといいと言ってくれたが、僕だって授業があるし彼にも担当している授業はある。
昼休みに食事のついでにするような話でもないし、いつ彼の担当している授業があるのかは何となく把握していたので僕の授業が終わった後で彼の空いてる時間に部屋を訪ねることにした。
「ルインハイトくん、おめでとう。満点だ」
古代語の授業の時、満面の笑みのエルネスト先生から小テストを返してもらった。小テストの用紙には朱いインクでエルフにとって「とても良い」という意味の花を表した図柄、いわゆる『はなまる』が大きく描かれていた。
おおー、と感嘆の声が周囲から上がる。
愛の力かしら、なんて囁き声が聞こえるのが居心地悪い。
最近では妬み嫉みの視線を感じることはほとんどと言っていいほどなく、僕がこうして注目を浴びると「やはり聖女様の生まれ変わりだから」と思考停止したような崇拝の的になることがほとんどだった。
暇だからとはいえ、きちんと勉強した結果なんだけどね。
「ハッ」
そんな中、突き刺すような敵意を感じた。
振り向くと、後方の席に座っている男子学生が僕のことを睨んでいた。同じ一年生の証である赤色のローブを纏っている。
特徴的なツリ目と栗色の髪色が相まってキツネっぽい印象の顔つきをした男の子だった。
「……」
見覚えのない子だ。
強いて言えば栗色の髪の毛がお父さんと似ていなくもない。
知らない子から敵意を向けられる理由が分からず、不気味さを覚えた。
「おい、貴様」
授業の後、問題のその子に声をかけられた。
立ち振る舞いそのものは上品だが、彼が僕を睨む目付きには明らかな侮蔑が籠っていた。
「私は騙されぬからな」
「は、はあ……?」
いきなりの言葉である。
周りを憚るような囁き声だったが、意味が分からない。
「聖女の生まれ変わりを気取ってはいるが、私は騙されぬ。父上から聞いたのだ、貴様が街娼の子だとな」
「え……ッ!?」
思わぬ不意打ちに胸がグサリと見えない刃で刺されたような気がした。
一体、何故目の前の男子学生がそんなことを知っているのか。
ドクンドクンと心臓が嫌な感じで打つ。
その時、彼が耳に付けた銀のピアスが目に入った。
王家の薔薇の紋章が刻印されている。
ということは、この男子学生も王家の一員なんだ……。
この子の言う「父上」が誰なのか何となく予想がついた。
恐らくは僕のことを認知してくれなかった本当の父親だ。
ということは目の前の彼は正妻との間に生まれた僕の異母兄弟なのだろう。王家の血を引いているなら、道理でお父さんやお祖父様とそっくりの栗色の髪をしているわけだ。
僕は血縁上の兄弟との最悪の邂逅を果たした。
「フンッ」
彼はそそくさと僕から離れていく。
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どうしよう、あの子に噂を広められたら……。
実はスラム街育ちの平民だったとバレて同級生らに手の平を返されることになるのだろうか。騙したなと罵られることになるのだろうか。
今後のことを考えると鉛を呑み込んだような気分だった。
このままにしておいたらいけないのは分かるけれど、何をどうすればいいのかまったく分からない。
僕は上の空でエルネスト先生の部屋へとトボトボ向かったのだった。
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