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番外編 カインとニールの学生時代

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 家に帰ってからお父さんに超越卿ことイッシュクロフト先生のことについて聞いてみた。
 お父さんはちょうどエトワールと猫じゃらしで遊んでいるところだった。

 ちなみに最近のお父さんは各地を放浪した経験を活かして国中の観光ガイドブックを書いて生計を立てている。嬉々としてタイプライターを購入したのも作家業のためらしい。
 改めて思うけど自由な人だよなあ……。

「え、ニールからオレと友達だったって聞いたの?」

 ニールとは誰のことだと一瞬思ったが、イッシュクロフト先生のファーストネームがニーリアスであることを思い出した。
 イッシュクロフト先生もお父さんのことをカインと呼んでいるし、二人は愛称で呼び合う仲だったらしい。

「ニールのことだから誰にも話さないと思ったのに……学生に対しては少しは丸くなってるのかな」

 お父さんは首を傾げる。
 いいえお父さん、ちっとも丸くなってないです。
 僕は心の中でそっと答えた。

「お父さんと先生は学生時代どんな感じだったの?」

 二人が友人として一緒にいる光景が想像できなかったので聞いてみた。

「そうだなぁ……オレは昔から不真面目でね、結構チャラチャラしてて。ニールはその正反対だったかな。昔から真面目ではあったけど、とにかくツンケンしてるから誰からも勘違いされがちだった。そんなニールと周囲との仲をフォローしているうちに、オレたちはいつの間にか友達になってたんだ」

 チャラ男なお父さんに不愛想でつっけんどんなイッシュクロフト先生……。
 だんだんと若い頃の二人の姿が浮かんでくる。

「そんなある日、オレが王族だからってたくさんの女の子を泣かせてるって根も葉もない噂が流されてね。ニールの奴、どうしたと思う? なんと噂を流した張本人のところに殴り込みに行ったんだよ。あんなにひょろいのにね」

 いかにも短気そうなイッシュクロフト先生のやりそうなことだな、と思った。確かに身体の線は細いがそれ以上に許せないものは許せないとはっきり言う類の人間だろうなと思う。絶対に泣き寝入りなどしなさそうなタイプの人種だ。

「……以来、ニールはオレの唯一無二の親友なんだ」

 ぽつりと呟いたお父さんの表情は柔らかかった。
 本当にお父さんとイッシュクロフト先生は仲がいいんだなと感じたのだった。
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