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第二十七話
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連れて来られた先は超越卿の研究室らしかった。
魔法陣の描かれた羊皮紙や書物があちこちに散らばっている。
超越卿はどうやらお片付けが苦手な部類の人種のようだ。
「まず最初に言っておきたいのだが」
超越卿は色眼鏡越しにギロリと僕を睨んだ。
「俺がわざわざ君に特別講義をするのはあくまでも友人に頼まれたからだ。俺は友人からの頼みを遂行しているに過ぎない」
「友人……?」
「君の父親だ。カイン、あれは俺の学院時代の同級生だ」
「あっ、お父さんか!」
なんとお父さんが超越卿に特別講義をするように頼んでいてくれていたらしい。
ということは超越卿はお父さんと同い年ということか、ふむふむ。
「それならそうとお父さんも言ってくれればいいのに」
「カインには自分が依頼したことは秘密にしてくれと言われたからな」
「それ、僕に教えちゃ駄目なことですよね!?」
ふい、と超越卿はそっぽを向く。
ふと超越卿の不機嫌な顰め面が子供っぽく見えてきた。
「俺が親切で特別講義を行うような人間だと勘違いされては困る」
どうやら超越卿は「秘密にしてくれ」というお父さんの約束だけわざと破ったらしい。
もしかしてこの人、結構子供っぽいワガママさを持ったまま大人になったような人なのではないだろうか。
そんな風に思えてきた。
この超越卿は学生時代お父さんとどんな友達だったんだろう。
あんまり想像がつかなかった。
「闇属性の人間に関する記録はあまり残されていない。今日の特別講義のためにわざわざ古代語の書物を紐解いたのだ、感謝してもらいたいものだな」
「あ、ありがとうございます」
慌てて頭を下げた。
「では講義を開始しよう。君、そこに腰掛けなさい」
超越卿ことイッシュクロフト先生が指し示した椅子には書類が積み重なっていた。いいのかなと思いつつ書類をどかして座る。
「古文書を紐解いたところによると、闇属性の者の魔力が大きく増大するきっかけがある。そのきっかけというのが穢れに触れることだ」
「穢れ……?」
不穏な言葉にじわりと不安が滲む。
「穢れの種類は四つある。一つ目は、死の穢れ。誰かの死に目に立ち会ったり死体に触れたりすると力が強まる」
「…………」
自分の魔力を初めて自覚したのは母が死んだ日のことだった。
そうか、そういうことだったんだ。
あの時僕の魔力は目覚めたんだ。
「二つ目は、血の穢れ。血液に触れると力が強まる。これを利用して闇属性の女性は文字通りの血化粧を纏うことがあった」
これも身に覚えがある。
ナイフで肌を切り裂かれた途端、僕の身体から魔力が溢れ出して男を襲ったのだ。そういうことだったのか、と腑に落ちた。
「三つ目は産みの穢れ。子供が産まれる瞬間に立ち会うか、自身が子を産み落とすと力が強まる」
これは経験したことがない。
でも聞いておいて良かったと思った。
知らずに力が暴走したりしたら危なかった。
「四つ目は精の穢れ。性行為をしたり、もしくは初潮や精通を迎えると力が強まるとされている」
そういえば数年前、急に僕の魔力が倍以上に増えているとお父さんが驚いていたことがあった。
その時は原因が分からなかったのだが、思い返してみればちょうど第二次性徴を迎えた頃だったような気もする。
「いくつか心当たりがあるようだな。では、この特徴を踏まえてまずは君が本当に闇属性を持っているのかどうかテストをする。カインには君の属性を確かめてくれと言われているからな」
属性を確かめてくれ?
どういうことだろう、僕の属性が闇属性だと言ったのはお父さん自身なのに。
魔法陣の描かれた羊皮紙や書物があちこちに散らばっている。
超越卿はどうやらお片付けが苦手な部類の人種のようだ。
「まず最初に言っておきたいのだが」
超越卿は色眼鏡越しにギロリと僕を睨んだ。
「俺がわざわざ君に特別講義をするのはあくまでも友人に頼まれたからだ。俺は友人からの頼みを遂行しているに過ぎない」
「友人……?」
「君の父親だ。カイン、あれは俺の学院時代の同級生だ」
「あっ、お父さんか!」
なんとお父さんが超越卿に特別講義をするように頼んでいてくれていたらしい。
ということは超越卿はお父さんと同い年ということか、ふむふむ。
「それならそうとお父さんも言ってくれればいいのに」
「カインには自分が依頼したことは秘密にしてくれと言われたからな」
「それ、僕に教えちゃ駄目なことですよね!?」
ふい、と超越卿はそっぽを向く。
ふと超越卿の不機嫌な顰め面が子供っぽく見えてきた。
「俺が親切で特別講義を行うような人間だと勘違いされては困る」
どうやら超越卿は「秘密にしてくれ」というお父さんの約束だけわざと破ったらしい。
もしかしてこの人、結構子供っぽいワガママさを持ったまま大人になったような人なのではないだろうか。
そんな風に思えてきた。
この超越卿は学生時代お父さんとどんな友達だったんだろう。
あんまり想像がつかなかった。
「闇属性の人間に関する記録はあまり残されていない。今日の特別講義のためにわざわざ古代語の書物を紐解いたのだ、感謝してもらいたいものだな」
「あ、ありがとうございます」
慌てて頭を下げた。
「では講義を開始しよう。君、そこに腰掛けなさい」
超越卿ことイッシュクロフト先生が指し示した椅子には書類が積み重なっていた。いいのかなと思いつつ書類をどかして座る。
「古文書を紐解いたところによると、闇属性の者の魔力が大きく増大するきっかけがある。そのきっかけというのが穢れに触れることだ」
「穢れ……?」
不穏な言葉にじわりと不安が滲む。
「穢れの種類は四つある。一つ目は、死の穢れ。誰かの死に目に立ち会ったり死体に触れたりすると力が強まる」
「…………」
自分の魔力を初めて自覚したのは母が死んだ日のことだった。
そうか、そういうことだったんだ。
あの時僕の魔力は目覚めたんだ。
「二つ目は、血の穢れ。血液に触れると力が強まる。これを利用して闇属性の女性は文字通りの血化粧を纏うことがあった」
これも身に覚えがある。
ナイフで肌を切り裂かれた途端、僕の身体から魔力が溢れ出して男を襲ったのだ。そういうことだったのか、と腑に落ちた。
「三つ目は産みの穢れ。子供が産まれる瞬間に立ち会うか、自身が子を産み落とすと力が強まる」
これは経験したことがない。
でも聞いておいて良かったと思った。
知らずに力が暴走したりしたら危なかった。
「四つ目は精の穢れ。性行為をしたり、もしくは初潮や精通を迎えると力が強まるとされている」
そういえば数年前、急に僕の魔力が倍以上に増えているとお父さんが驚いていたことがあった。
その時は原因が分からなかったのだが、思い返してみればちょうど第二次性徴を迎えた頃だったような気もする。
「いくつか心当たりがあるようだな。では、この特徴を踏まえてまずは君が本当に闇属性を持っているのかどうかテストをする。カインには君の属性を確かめてくれと言われているからな」
属性を確かめてくれ?
どういうことだろう、僕の属性が闇属性だと言ったのはお父さん自身なのに。
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