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第二十四話

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 エトワールは家に着くなりムシャムシャとご飯を食べ、モリモリとうんちをし、スヤスヤと寝た。
 いきなり家族が増えてお父さんも執事のツォカティスもびっくりしていたが、みんな歓迎してくれた。

 休日が明けると僕はエトワールをツォカティスに任せ、僕は学院に授業選びのガイダンスと授業の登録に向かった。

 エルネスト先生の助言通り、呪術学、使役学、古代語、錬金術、属性学Iに加え魔導工学と治癒魔術学も取った。
 それから時間割の枠が余ったので追加で魔導芸術の授業も取ってみた。初めてお父さんと会った時にお父さんがやっていた出し物みたいな、魔術で綺麗なものを作り出す練習をする授業だ。
 エルネスト先生の言葉で少し前向きになれた僕は、やりたいことは何でもやってみることにしたのだ。
 その他に興味があったけど時間割が合わなかった授業は祓魔術や占術学などがあった。

 拾ってから数日もするとエトワールはすっかり元気になって暴れん坊になってしまった。アニマルストリートで購入したキャットタワーにバリバリと登っている。
 これは使役学の初日の授業にはキャリーバッグに入れて運んであげる必要がありそうだ。

 そして遂に学院の授業が始まる日が来た。
 一番最初の授業は古代語……いきなりエルネスト先生担当の授業である。
 今日の授業に必要な教科書がきちんと鞄に入っていることを確認して、僕は学院に向かった。

「ねえ、キミ」

 古代語の授業が執り行われる大教室に入り、前方の席を確保するなり声をかけられた。
 ここで「僕は王族なのにキミ呼ばわりなんて失礼だぞ」と思ってはいけない。学院の中では身分差に関わらずすべての生徒は平等で、そして身分差に関わらずすべての生徒は教師に敬意を払わなければならないのだ。

 振り返ると、そこにはふわふわの妖精がいた。
 正確にはふわふわの妖精のような男の子がだ。

「あっ」

 新入生代表として挨拶をした子だとすぐに気が付いた。

「ルインハイトくん、だよね? 前から仲良くなりたいと思っていたんだ」

 男の子は人懐っこそうににこりと笑う。
 僕もそんなに背が高い方ではないけれど彼はさらに背が低くて、ふわふわの白い犬を想起させた。
 クリーム色の白に近い金髪に碧眼。絵に描いたような美少年だ。

「ボク、シャルル・ブルダリアス。よろしくね」

 右手を差し出されたので、僕は握手に応える。
 彼の手はふわりと柔らかかった。

「僕と仲良くなりたかったって、どうして……?」
「キミが闇属性持ちだって聞いたから。仲間だって思ったんだ」

 仲間。
 その言葉にそわりと期待が膨らむのを感じた。
 もしかして目の前のこの子も、闇属性の持ち主なのだろうか。

「ボク、光属性なんだ。同じ特殊属性同士いい友達になれそうだなって前から思ってたんだ」
「光……属性」

 だが現実は真逆だった。
 シャルルは闇属性ではなく、光属性の持ち主だった。

 朗らかな笑顔を浮かべて、社交的で柔らかな雰囲気で。
 本当の聖女様の生まれ変わりがいるのだとすれば、まさしくこういう感じの人なんだろう。
 チクリと痛みが胸を刺す。

「隣、座ってもいいよね?」
「う、うん」

 無邪気な彼を邪見に扱うわけにもいかず、僕たちは二人並んで授業を受けることになった。

「さて、授業を始めよう」

 エルネスト先生が登場すると、教室中が静かに騒めいた。
 ついこの間まで宮廷魔術師をやっていた世界で唯一のエルフの生き残りの授業だ。期待しないわけがない。
 彼は城で会ったときのようなローブ姿だった。
 気障なシルクハット姿はやっぱり僕と出かけるからしていた格好だったのだろう。

「皆も知っているだろうが、古代語とはエルフ語のことだ。エルフの使っていた言語が魔術を扱うのに最適の言語として古代語と呼称されている。つまり、私は唯一の古代語のネイティブスピーカーというわけだ」

 胸を刺す暗い痛みも何もかも、勉強に集中すれば忘れることができる。
 僕はノートを開いて目の前のことに集中することにした。
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