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増える薬
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琉生の次の病院の日が来た。杏子はその日休みをどうしても取れず、咲愛にお願いした。
「ごめんね。琉生」
この日ばかりは琉生は朝から起きていた。
「大丈夫だよ。母さんが付いてきてくれるみたいだし」
「私も琉生の事知りたいから!畑澤先生にもお会いしたいし」
「母さんあんまり興奮しないでね?」
杏子が釘を刺す。咲愛はハッとして琉生を見たが大丈夫そうだ。何となく顔色は良いが少し体重が増えているのだろう。ほんの少し顔が痩けてきているのが改善されている。
「ごめんなさい、私がでしゃばっちゃイケないのにね」
「母さんが訊きたいことあれば訊いても良いと思うけど・・・・・・」
「親なんだし」と付け加える琉生。その言葉に咲愛は安心した。でも琉生から余り症状については聞き取れていない。幻覚症状はまだ消えている訳ではなさそうなのだが、薬を飲むと飲まないでは余り変わらないが気分は変わると言うことだった。
「今日は確か十一時の予約よね?」
「うん。診察券にはそう書いてある」
前回の診察で予約制なのを聞いて居たので、帰りがけに予約を入れておいたのだ。
「じゃあ、余裕を見て九時半には家を出ましょう
?」
「分かったよ」
琉生は睡眠薬が余り効いていないのだろう隈は深みを増して痩せてきては居ないが疲れが少し見えた。
「じゃあ!しっかり診て貰うのよ?琉生!」
「早く行かないと遅刻するよ?」
「あ!もうこんな時間!行ってきます!」
杏子が慌てて家を後にした。玄関からしか見てないが相当予定が詰まっていると見えた。
「琉生、朝の薬飲んだ?」
「さっき飲んだよ」
「そう、ならいいわ」
咲愛は余り薬の話をしない。薬の名前を言っても点と点が繋がらないのもあるのだろう。
「母さん」
「なに?」
「俺、このままで良いのかな?」
「どうしたのよ?急に」
琉生が俯いて重い口を開く。
「このまま、生きていて母さんや父さんがにさらに負担掛けて辛い思いさせるんじゃ?それに秋には修学旅行もあるのに行けないかもしれない」
「学校の事は今は考えなくて良いのよ?」
「うん。分かってはいるけど・・・・・・」
同じ制服の学生を見ると辛くなった。自分には関係のないと思っていた。昔からスポーツで精神的には鍛えられていると思っていたからだった。後悔は何度も何度も考える度に辛くなった。
「うん」
「みんな楽しそうでさ、佑樹に電話しても野球で県大会出るって言ってたし。俺置いてけぼりじゃん?」
「馬鹿ね」
「え?」
「歩くスピードがみんな同じな訳無いじゃない」
琉生は独りじゃない必ず傍に誰かがいるからと伝えたかった。だから琉生が今立ち止まっていると言うなら寄り添って一緒に歩を止めてあげることなら出来ると。
「ありがとう」
心の中が独りきりで自分が全ての不幸を呼び寄せているようにも感じて、誰にも落ち込んで欲しくない。誰にも迷惑掛けたくない。そして自分の生活に余り干渉されたくない。自分の時間が欲しかった。いつも病気と言うことで家族にすら監視されている感じがしていた。そして自分のことを報告する義務感みたいのも感じていた。
「あ!そろそろ家出ようか?」
咲愛は歩けないわけではないが、歩くのが普通の人より不自由なためスピードが遅いため、少し早く家を出た。
***
隣駅について病院の前まで歩いて時間を見ると十時半前だった。
「母さん?」
「はぁはぁ、久しぶりにこんなに歩いたわ。ごめんなさいね?ちょっと母さんも体力付けないとだめね」
「大丈夫?病院の中に自販機あるから飲み物買った方良いよ」
「ありがとう。そうするわ」
今日はジリジリと夏のような日差しが差していて、もう夏なんだなと思わせる。少し前に梅雨明けの発表があったばかりでこんなに気温が急上昇して汗が吹き出てきた。
二人が自動ドアに招かれ院内に入ると冷房が効いていて涼しさを覚える。
「涼しい~。母さん、なに飲む?」
「コーヒーあるかしら?」
「ブラックね?見てくる」
「あ、お金・・・・・・」
「ジュース代くらいあるよ」
そういって琉生が受付を済ませて、自動販売機の方へ走る。琉生も暑かったのだろう汗を袖で拭っていた。咲愛は疎らにいる患者の中で余り人が座っていない長椅子を陣取っていた。
『ここに通っている人がみんな琉生みたいな病気の人なのかしら?』
キョロキョロと周囲を見ていた。待合室に居る患者さんは特になにも話す訳でもない。しかし高齢者も多く明らかに認知症も罹っているのではないだろうか?と思わせるような車椅子に座り付き添いのヘルパーの様な人にブツブツと何か話しかけている老人を見る。自分がまさかこんな病院に来るなんて考えもしなかった。しかも自分の子供の病気で、咲愛の時代はそれこそ熱血教師がいて病気などしている場合ではなかった。病気など罹れば社会的に迫害され、奇異の目で見られていただろう。
今の時代とは考え方も教育の形もどんどん変化してなかなか付いていくのがやっとの時があり良く困惑していたことを思い出した。
「母さん。はい!コーヒー」
「ありがとう。琉生は何にしたの?」
「コーラだよ」
「琉生好きだもんね」
隣に座りペットボトルのコーラの蓋を捻るとプシュっと音を立てて泡が溢れそうになるがギリギリで止まり泡が無くなって行く。咲愛もコーヒーの缶を開けるそしてカラカラの喉を潤していく。
「「ふぅ」」
思わず二人揃って息を着いてしまう。飲み終わる頃になると。涼しくなり大分火照っている感じは無くなりちょうど良く感じていた。
「夏目琉生さん」
看護師が診察室の方から琉生の事を呼ぶ。それが聞こえるとひと息着いてまったりしていた空気に緊張感が生まれ琉生と咲愛が立ち上がる。
「琉生さんね。今日はお母さんかしら?」
「あ、はい」
「先生。今日はこっちの診察室に居るから付いてきてね。どうぞ」
この病院には常駐している医師が数人居るらしく診察室がなん部屋かあるようだ。琉生は前回一番なのだったのだが今日は二番に案内された。
「こんにちは~」
「はい、こんにちは。お母さんもどうぞ」
畑澤が自分の目の前に琉生その隣に咲愛が座るように招いた。
「お母さんは初めましてですね。私、畑澤と言います。よろしくお願いしますね」
「る、琉生の母です!よろしくお願いします」
畑澤が軽く会釈をすると。咲愛が慌てて座りながらではあるが深々と頭を下げた。
「じゃあ。琉生くんどうかな?二週間薬飲んでみて」
「えっと効いているのかは分からないです。でも虫が這う感覚は消えました」
「そっか、眠りの方はどう?寝れている?」
「寝付きが悪くて薬を飲んだ後すぐは寝付けない感じです。寝るのは大体朝です」
「うんうん、そっか」
話を振ってそれに琉生が応えるだけの簡素な診察。別に聴診するわけでもなく何か処置するわけでもない。咲愛はこんなので本当に分かるのだろうか?と話を聞いていた。
「では、お母さん」
「は!はい!」
「緊張しなくて結構ですよ?ご家族の目から見て琉生さんはどんな感じですか?」
「どんな?どんな・・・・・・」
初めて話す人だしどこか緊張してしまう咲愛。
「焦らなくて大丈夫ですよ?ゆっくりで大丈夫です」
「前回ここに来てからと言うかこちらの薬を飲むようになってから余り変わっていない感じはします。本人の幻覚症状はまだあるみたいですし、夜も寝れていないようで起きてくるのは大体昼頃になります。それからご飯を食べて・・・・・・あ、前よりたくさん食べるようになりました」
「琉生くんそうなの?」
「なんか口が寂しいと言うか・・・・・・」
「う~ん。琉生くん今二つ選択肢あるんだけど。良いかな?」
「はい」
「今飲んでいるお薬ね?まだ弱くしか出してないけど私としてはもう少し強くして様子見たいんだけど。琉生くんが今副作用とかキツいなら強くせず違うのに代えるけどどうしたい?」
「良く分からないので、先生にお任せします」
「じゃあ、今の薬をマックスまで上げてみるね?睡眠の方はもう少し寝付きの良いものに代えておきますね。それと眠れないときと日中不安なったときと眠れないときに飲む頓服もそれぞれ出しておきますね」
「ありがとうございます」
「次の診察は、二週間後で良いかな?」
「はい」
「じゃあ、しっかり薬飲んでね?朝は出来るだけ起きるようにしてね?」
「ありがとうございました」
診察が終了して。診察室から出ていく、咲愛は深々と頭を下げていた。
***
「では、こちらの処方箋を薬局にだしてお薬貰ってください。会計はこちらになります」
「はい」
咲愛が会計を済ませて。やっと病院から解放される。咲愛と琉生が病院をでて薬局に歩いていく。
「畑澤先生優しそうな方ね」
「うん」
少しホッとした畑澤が自分の感じている苦しみとか杏子しか知らないようなことを咲愛にも話すのではないかと思ったからだ。
本当は自分の心の内だけで留めておきたいものをSOSを杏子に話すのもやっとだったのだ。誰にも親に心配を掛けたくなかった。聞かれたくなかったんだ。でもだめだった自分は本当に駄目なヤツだ申し訳ない気持ちでいっぱいだった。今日処方された薬すら効くか分からない。消えない幻覚症状。眠れない夜が孤独感をどんどん募らせる。
自分の心が自分の物ではない病気に支配されているような自分の心を他人?病気?に盗られて支配されている負の感情。
このまま死んでも誰も悲しまない。自分なんか消えてもこの世界の歯車は止まらず動いて自分の存在なんかいつか誰も覚えてない。記憶にすら残らず消えていくんだ。そう思うと悲しくなり心がシクシクと泣いているようだった。
「夏目琉生さん」
「あ、薬出来たね!はーい」
「夏目琉生さんですね?」
「はい」
「今日は前回出てた薬が増えたので朝と夕忘れずに飲んでくださいね?後寝る薬も寝付きの良くするお薬に代わっていました。それとこれを飲んでさらに寝付けないときの追加のお薬と不安なとき飲むお薬も同じく処方されていました。間違いないですか?」
「はい。そうです」
「はい。では本日のお会計は・・・・・・」
どっさりと薬を渡され袋に入ったその薬を持って駅の方へ咲愛と歩いていく。
「きっと寝れるわ!大丈夫!」
「そうだね」
「ごめんね。琉生」
この日ばかりは琉生は朝から起きていた。
「大丈夫だよ。母さんが付いてきてくれるみたいだし」
「私も琉生の事知りたいから!畑澤先生にもお会いしたいし」
「母さんあんまり興奮しないでね?」
杏子が釘を刺す。咲愛はハッとして琉生を見たが大丈夫そうだ。何となく顔色は良いが少し体重が増えているのだろう。ほんの少し顔が痩けてきているのが改善されている。
「ごめんなさい、私がでしゃばっちゃイケないのにね」
「母さんが訊きたいことあれば訊いても良いと思うけど・・・・・・」
「親なんだし」と付け加える琉生。その言葉に咲愛は安心した。でも琉生から余り症状については聞き取れていない。幻覚症状はまだ消えている訳ではなさそうなのだが、薬を飲むと飲まないでは余り変わらないが気分は変わると言うことだった。
「今日は確か十一時の予約よね?」
「うん。診察券にはそう書いてある」
前回の診察で予約制なのを聞いて居たので、帰りがけに予約を入れておいたのだ。
「じゃあ、余裕を見て九時半には家を出ましょう
?」
「分かったよ」
琉生は睡眠薬が余り効いていないのだろう隈は深みを増して痩せてきては居ないが疲れが少し見えた。
「じゃあ!しっかり診て貰うのよ?琉生!」
「早く行かないと遅刻するよ?」
「あ!もうこんな時間!行ってきます!」
杏子が慌てて家を後にした。玄関からしか見てないが相当予定が詰まっていると見えた。
「琉生、朝の薬飲んだ?」
「さっき飲んだよ」
「そう、ならいいわ」
咲愛は余り薬の話をしない。薬の名前を言っても点と点が繋がらないのもあるのだろう。
「母さん」
「なに?」
「俺、このままで良いのかな?」
「どうしたのよ?急に」
琉生が俯いて重い口を開く。
「このまま、生きていて母さんや父さんがにさらに負担掛けて辛い思いさせるんじゃ?それに秋には修学旅行もあるのに行けないかもしれない」
「学校の事は今は考えなくて良いのよ?」
「うん。分かってはいるけど・・・・・・」
同じ制服の学生を見ると辛くなった。自分には関係のないと思っていた。昔からスポーツで精神的には鍛えられていると思っていたからだった。後悔は何度も何度も考える度に辛くなった。
「うん」
「みんな楽しそうでさ、佑樹に電話しても野球で県大会出るって言ってたし。俺置いてけぼりじゃん?」
「馬鹿ね」
「え?」
「歩くスピードがみんな同じな訳無いじゃない」
琉生は独りじゃない必ず傍に誰かがいるからと伝えたかった。だから琉生が今立ち止まっていると言うなら寄り添って一緒に歩を止めてあげることなら出来ると。
「ありがとう」
心の中が独りきりで自分が全ての不幸を呼び寄せているようにも感じて、誰にも落ち込んで欲しくない。誰にも迷惑掛けたくない。そして自分の生活に余り干渉されたくない。自分の時間が欲しかった。いつも病気と言うことで家族にすら監視されている感じがしていた。そして自分のことを報告する義務感みたいのも感じていた。
「あ!そろそろ家出ようか?」
咲愛は歩けないわけではないが、歩くのが普通の人より不自由なためスピードが遅いため、少し早く家を出た。
***
隣駅について病院の前まで歩いて時間を見ると十時半前だった。
「母さん?」
「はぁはぁ、久しぶりにこんなに歩いたわ。ごめんなさいね?ちょっと母さんも体力付けないとだめね」
「大丈夫?病院の中に自販機あるから飲み物買った方良いよ」
「ありがとう。そうするわ」
今日はジリジリと夏のような日差しが差していて、もう夏なんだなと思わせる。少し前に梅雨明けの発表があったばかりでこんなに気温が急上昇して汗が吹き出てきた。
二人が自動ドアに招かれ院内に入ると冷房が効いていて涼しさを覚える。
「涼しい~。母さん、なに飲む?」
「コーヒーあるかしら?」
「ブラックね?見てくる」
「あ、お金・・・・・・」
「ジュース代くらいあるよ」
そういって琉生が受付を済ませて、自動販売機の方へ走る。琉生も暑かったのだろう汗を袖で拭っていた。咲愛は疎らにいる患者の中で余り人が座っていない長椅子を陣取っていた。
『ここに通っている人がみんな琉生みたいな病気の人なのかしら?』
キョロキョロと周囲を見ていた。待合室に居る患者さんは特になにも話す訳でもない。しかし高齢者も多く明らかに認知症も罹っているのではないだろうか?と思わせるような車椅子に座り付き添いのヘルパーの様な人にブツブツと何か話しかけている老人を見る。自分がまさかこんな病院に来るなんて考えもしなかった。しかも自分の子供の病気で、咲愛の時代はそれこそ熱血教師がいて病気などしている場合ではなかった。病気など罹れば社会的に迫害され、奇異の目で見られていただろう。
今の時代とは考え方も教育の形もどんどん変化してなかなか付いていくのがやっとの時があり良く困惑していたことを思い出した。
「母さん。はい!コーヒー」
「ありがとう。琉生は何にしたの?」
「コーラだよ」
「琉生好きだもんね」
隣に座りペットボトルのコーラの蓋を捻るとプシュっと音を立てて泡が溢れそうになるがギリギリで止まり泡が無くなって行く。咲愛もコーヒーの缶を開けるそしてカラカラの喉を潤していく。
「「ふぅ」」
思わず二人揃って息を着いてしまう。飲み終わる頃になると。涼しくなり大分火照っている感じは無くなりちょうど良く感じていた。
「夏目琉生さん」
看護師が診察室の方から琉生の事を呼ぶ。それが聞こえるとひと息着いてまったりしていた空気に緊張感が生まれ琉生と咲愛が立ち上がる。
「琉生さんね。今日はお母さんかしら?」
「あ、はい」
「先生。今日はこっちの診察室に居るから付いてきてね。どうぞ」
この病院には常駐している医師が数人居るらしく診察室がなん部屋かあるようだ。琉生は前回一番なのだったのだが今日は二番に案内された。
「こんにちは~」
「はい、こんにちは。お母さんもどうぞ」
畑澤が自分の目の前に琉生その隣に咲愛が座るように招いた。
「お母さんは初めましてですね。私、畑澤と言います。よろしくお願いしますね」
「る、琉生の母です!よろしくお願いします」
畑澤が軽く会釈をすると。咲愛が慌てて座りながらではあるが深々と頭を下げた。
「じゃあ。琉生くんどうかな?二週間薬飲んでみて」
「えっと効いているのかは分からないです。でも虫が這う感覚は消えました」
「そっか、眠りの方はどう?寝れている?」
「寝付きが悪くて薬を飲んだ後すぐは寝付けない感じです。寝るのは大体朝です」
「うんうん、そっか」
話を振ってそれに琉生が応えるだけの簡素な診察。別に聴診するわけでもなく何か処置するわけでもない。咲愛はこんなので本当に分かるのだろうか?と話を聞いていた。
「では、お母さん」
「は!はい!」
「緊張しなくて結構ですよ?ご家族の目から見て琉生さんはどんな感じですか?」
「どんな?どんな・・・・・・」
初めて話す人だしどこか緊張してしまう咲愛。
「焦らなくて大丈夫ですよ?ゆっくりで大丈夫です」
「前回ここに来てからと言うかこちらの薬を飲むようになってから余り変わっていない感じはします。本人の幻覚症状はまだあるみたいですし、夜も寝れていないようで起きてくるのは大体昼頃になります。それからご飯を食べて・・・・・・あ、前よりたくさん食べるようになりました」
「琉生くんそうなの?」
「なんか口が寂しいと言うか・・・・・・」
「う~ん。琉生くん今二つ選択肢あるんだけど。良いかな?」
「はい」
「今飲んでいるお薬ね?まだ弱くしか出してないけど私としてはもう少し強くして様子見たいんだけど。琉生くんが今副作用とかキツいなら強くせず違うのに代えるけどどうしたい?」
「良く分からないので、先生にお任せします」
「じゃあ、今の薬をマックスまで上げてみるね?睡眠の方はもう少し寝付きの良いものに代えておきますね。それと眠れないときと日中不安なったときと眠れないときに飲む頓服もそれぞれ出しておきますね」
「ありがとうございます」
「次の診察は、二週間後で良いかな?」
「はい」
「じゃあ、しっかり薬飲んでね?朝は出来るだけ起きるようにしてね?」
「ありがとうございました」
診察が終了して。診察室から出ていく、咲愛は深々と頭を下げていた。
***
「では、こちらの処方箋を薬局にだしてお薬貰ってください。会計はこちらになります」
「はい」
咲愛が会計を済ませて。やっと病院から解放される。咲愛と琉生が病院をでて薬局に歩いていく。
「畑澤先生優しそうな方ね」
「うん」
少しホッとした畑澤が自分の感じている苦しみとか杏子しか知らないようなことを咲愛にも話すのではないかと思ったからだ。
本当は自分の心の内だけで留めておきたいものをSOSを杏子に話すのもやっとだったのだ。誰にも親に心配を掛けたくなかった。聞かれたくなかったんだ。でもだめだった自分は本当に駄目なヤツだ申し訳ない気持ちでいっぱいだった。今日処方された薬すら効くか分からない。消えない幻覚症状。眠れない夜が孤独感をどんどん募らせる。
自分の心が自分の物ではない病気に支配されているような自分の心を他人?病気?に盗られて支配されている負の感情。
このまま死んでも誰も悲しまない。自分なんか消えてもこの世界の歯車は止まらず動いて自分の存在なんかいつか誰も覚えてない。記憶にすら残らず消えていくんだ。そう思うと悲しくなり心がシクシクと泣いているようだった。
「夏目琉生さん」
「あ、薬出来たね!はーい」
「夏目琉生さんですね?」
「はい」
「今日は前回出てた薬が増えたので朝と夕忘れずに飲んでくださいね?後寝る薬も寝付きの良くするお薬に代わっていました。それとこれを飲んでさらに寝付けないときの追加のお薬と不安なとき飲むお薬も同じく処方されていました。間違いないですか?」
「はい。そうです」
「はい。では本日のお会計は・・・・・・」
どっさりと薬を渡され袋に入ったその薬を持って駅の方へ咲愛と歩いていく。
「きっと寝れるわ!大丈夫!」
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