猫山さんは犬上さんが好きでたまらない

歌華

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真琴の決意(真琴視点)

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俺は真白が昔から好きだった。真白と違う大学へ通うと決めたとき。俺の体と心の一部が欠けていって涙すら出なかった。真白も寂しそうな悲しそうな顔をしていた。卒業式を終え真白を家まで送って別れる時。
「俺の事ずっと忘れないで!」
そう声を震わせて目を伏せてこちらを一別もせず背中を向けて広い庭を走って行く真白の背中を見て。俺の目から熱い熱い涙が落ちたんだ。そして自分の想いも伝えず居たことを後悔した。
「痛い・・・・・・」
胸が締め付けられ俺は胸の辺りの制服をギュッと握りしめた。

***

大学二年に上がり柔道の練習中に足の指を骨折した。それから暫く柔道が出来ずオリンピックも目指していたが体重をかけると結構痛くて自分の理想の柔道が出来なくなっていた。そして俺は大学三年になり、それまで打ち込んでいた柔道を辞めて柔道で食べていく道を諦めた。
すると急に心に穴が空いて真白の居ない空白を柔道に打ち込むことで埋めていたものが無くなり、暫く虚無感で講義すら身に入らない日々が続いていた。
「犬上くん」
「え?」
ある日、講義を聴いていてノートをとっていて。講義が終わり。同じ講義を聴いていた女性に話し掛けられた。
「なに?」
「えっと、犬上くんって誰かと付き合っていたりするのかな?」
「いないよ?」
「犬上くんがよかったらで良いんだけど。私犬上くんが入学してからずっと気になっていて」
「なに?はっきり言って」
「付き合ってください!」
その女性はあまり可愛いと有名な人だった。奥ゆかしさで自分からガツガツ来ない辺りがまた女性らしくて堪らないと同じ学科にいる友達が話していた。しかし俺はその女性の名前すら知らない。
「いや、俺好きな人いるから」
「え?」
「ごめん」
「いいよ!いいよ!私なんかじゃ犬上くんに釣り合わないことも知っているし」
俺の家の事とかに巻き込みたくないのもあったし。
犬上の家は狼がらしいが今は力が弱い兄も姉もそんなに体格は良くない。兄も結婚して犬上の姓を名乗って家を継ぐと言っているがいつ犬上の狼の血の継承けいしょうが途絶えてもおかしくない弱い一族なのだ。
猫山家のように神職の者をつがいにすれば血の力の衰えは無かったんだろうが・・・・・・その点俺は妖力がそんなに強くないが体はしっかり強く在った。だから俺が霊力の強い神職を番に出来れば一番良いんだろうけど。俺は、真白以外に興味がなかった。女性なんかあまり興味を持てず友達止まりが多かった。大学でも真白を忘れるために女性と付き合ったことも一時期あったがセックスすると殺してしまいそうになる。愛しさと言うか。そうゆうのじゃなく、自分への怒りもあった。後は・・・・・・真白への裏切りみたいな思いが心から無くならなかった。その女性も怖くなったのか俺から離れていったし。

それから季節が過ぎて夏が終わりを告げる匂いがただよいだした時。スマホに一件のメッセージが来た。
『真琴久しぶり。元気かな?真琴と高校の時仲良かった侑希と真理と一緒に就職活動前に一回会って飲まないかって話になっているんだけど○月○日土曜日なんだけど予定ある?』
「真白・・・・・・っ!」
たぎる思いを抑えて。
『予定入れない!親死んでも行くよ!』
思わず、本心で返してしまった。すると返信がすぐ返ってきて。
『了解笑。あと連絡、出来なくてごめんね。連絡すると会いたくなるから』
真白っ!もう文面から可愛すぎる!スマホ越しだが繋がっている感じでその晩俺達はずっとメッセージをやり取りした。

***

その日、俺は集合時間の一時間前に店に着いていた。
「早く来すぎたかな?」
なんか予約した本人がいないのに店に入りづらくて外で暫く待つ。
「よーよー!真琴はえーな!」
「真琴またでかくなったか?」
侑希と真理がそれぞれ見えてきた。
「真白は?」
「いや、まだ来てない」
「なら。ここで待つか!って、おい!真琴トイレか?」
なんか男性用の香水に紛れて真白の匂いがした。
「真白っ!」


飲み会が終わり俺は。真白をおぶってアパートに向かっている。真白はベロベロに酔ってしまっていて。俺の背中で眠っている。
「まこと」
「どうした?真白?」
『真琴』と呼ばれて返事をしても応答がないと見ると寝言なのだろう。寝ながらでも俺の事考えてくれているなんて!

アパートに着くと鍵を開けて灯りを点ける。スゥスゥと静かに眠っている真白がどうしようもなく欲しくなる。
「なに考えているんだ!俺も相当酔っているな」
真白をベッドに下ろし、水をコップに一杯飲み干す。
「寝るか・・・・・・」
ベッドに行くと真白がベッドを占領している。
「可愛いな」
「ぅん・・・・・・」
毛布を掛けたせいか?暑がり毛布を蹴り飛ばす真白。暑いんだな。ごめん真白!
「う~、ん」
俺は怒られるかな?と思ったが。ゆっくり、ゆっくり真白の衣服を脱がせていく・・・・・・。猫だから体が柔らかくしなる筋肉をまとう真白の体。肌の色は昔とちっとも変わらず白いまま。
「んにゃ、」
上を脱がせてかさず下も脱がす。そしてやっと脱がし終わると。真白の眉間のシワが消え寝息も規則正しくなっていく。
「俺も脱ぐかな・・・・・・」
俺も割りと裸で寝るんだよな。暑くて。
「おやすみ。真白」
上下脱いでパンツ一丁になり。真白の白玉餅のような頬にキスを落とす。

***

朝になり何やら動揺している真白。そんな真白をなだめて昨日寝る前に冷蔵庫から水のペットボトルを出しておいたからそれを持たせてタクシーに乗せ返してやる。

そして俺は決意した。

「真白と一緒にいよう!これからも近くに居て」

真白に迷惑掛けるかもしれないけど。涙目になりながら真っ赤に頬染める真白が堪らなく欲しくなったんだ。
そして俺は実家に迷惑掛けるのも分かっていたが。もう俺は止められなかった。
そして就職活動のためにオーダーしたスーツに袖を通す。

向かうは猫山家。真白の実家だ。

俺は真白と同じ場所で働きたいと思ったんだ。期待されなくてもたかが犬っころって思われてもそんなのコツコツこなすだけだ。昔と何ら変わらない。それに真面目にやっていれば必ず見てくれる人はいるし。猫山家はどの人種と問わない来るもの拒まず。実力のあるものは早い内にランクアップもある!
実際、あんまり見たこと無いけど真白が働く支社で三つ上の秞繰兄さんはで部長だし、五つ上の那良なら姉さんは人事課にいるって。徹底実力主義伸ばせる人材に惜しみ無く融資する。
俺に合った職場な気がした。それに親も喜ぶんじゃないかな?家は金持ち家系じゃないから?

俺はアポも取らずに猫山家に向かった事に気付いた頃にはもう猫山家の最寄駅に着いた時だった。
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