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「皐、一緒に帰ろ」
手の平のスマートフォンからメッセージが受信され、差出人を確認しなくても分かるその相手は加奈だった。
下駄箱へと向かい三年、二年と奥へと進むにつれ入学順が新しくなっていく人気のない廊下を、待ち人のために少し早足で歩く。
加奈は高校に入学してすぐにできた彼女だった。県内では随一の進学校を誇るこの学校らしく、落ち着いた風貌で、物わかりが良い。教室で自習する者や部活動に直行した者など、直帰の少ないこの学校の人気のない昇降口をただ黙って歩き、自身の下駄箱へとたどり着く。
真夏の空に積乱雲がいくつも見渡せる大きな昇降口のガラス越しに、背中を向けた加奈の姿が目に入った。黒い髪を真後ろに結い上げ、セーラー服から半袖の真っ白な腕が覗いている。夏を感じさせるその姿にほっと息を吐く。靴を履き背中を向けた加奈に声をかける。振り向き長いまつげを自然とくるりと上向かせた可愛らしい目。女子と付き合ったのは過去二回。小学六年と中学三年の時だけだ。どちらもお互いの事はよく知らず、相手の方から告白されてなんとなく付き合った。歩調を合わせながら歩きだし、彼女の手を握る。
「どこか寄る?」
「ううん。今日は大人しく帰るよ。」
「じゃ、駅まで」
自分より少し背の低い加奈と顔を見合わせ唇を近づける。今朝の夢を思い出した。動きが固まる。何事もなかったようにそのまま口付けた。
「どうかした?」
不自然さに気づいたのか加奈が口を開く。
「いや、なんでもない。」
怪しまれないように笑顔を作った。
「なにー?緊張した?」
クスクスと照れ臭そうに下を向き加奈が笑う。
「緊張した。」
皐はその真っ白な肌と赤い唇に目を奪われながら胸を撫で下ろし、つられて笑う。駅の構内で別れそれぞれ帰路についた。その日の夜またもスマートフォンが震えメッセージを受信した。見慣れたその送信元の名前は幼なじみである勝也だった。心臓が跳ねる。
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