音楽業界のボーイズラブ

おとめ

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*** ***

…とまぁそんなカオスな空間になるわけもなく、相手の方も会社の社員を呼んでの大所帯での飲み会となった。まだ曲が完成したわけではないのにすっかり相手のペースに乗せられている。


「…まあ4人じゃなくて良かったな」
「ああ。営業慣れしてんだろ」
リンネはその見た目よりも社交的な性格からすぐに打ち解け大勢の人に囲まれ早くも姿が見えなくなる。

「リンネ君かわいい~」
そんな囁き声が早々に聞こえてくるほど。
「俺らも行ったほうがまずくない?」
「お前はここにいろ。お人好しなのもいい加減に…」

「すすむくん、隣に座ってるのは…」
青井が声をかけてくるのを一変して愛想笑いを作り、
「シンと申します。」
と丁寧に答える。社交場を卒なくこなすシンを見て唖然とする。人の事を言うわりにサービス満点じゃないか。

「…へえ。ああ、ギターの…」
「作詞もしてますが、そうですね。」
にっこりと笑うと威圧感を感じるのはなぜだろう。細い眉が寄せられ精一杯作り笑いを浮かべているのが逆によそよそしく感じる。
「すすむくんも色気があるけど二人並ぶと入る隙が無いね~」
「あはは。ちょっと青井さん、酔いすぎじゃないですか」
「いやいや、妬けちゃうよ」
「俺お手洗いに…」
「ちょ、」
立ち上がりかけたシンの服の裾をすすむが掴む。
「お邪魔かなと思…」
「いやいや、大丈夫だよ。両手に花みたいなもんだからね」
ニヤニヤと青井が笑い、さすがのシンもドン引きした顔をする。
「2人はどこで知り合ったの?」
「昔バンド一緒にやってまして」
「昔なんて。まだ若いのに」
「最近時間が過ぎるのが早くて…」
爺々くさい会話を広げるシンにあははと青井が笑い場が和む。
すすむは青井が余計なことを言わないか気が気ではなく、酒を勢いよく煽る。いつもより飲むペースが早くてすぐに酔いが回る。
「あんま飲みすぎんなよ」
「何言ってんだよ、これからじゃん」
ほろ酔いになって、貞操観念が緩くなったすすむが青井に見せつけるようにシンに腕を絡ませ、途端一気に女子からの注目を浴びる。ベタベタと触れたり肩を寄せたりして甘えた態度になり、怪しい雰囲気になる。
「おい、」
「いいじゃん、サービスしてやろうぜ」
笑みを含んで意味ありげに顔を寄せるとそのままシンの頬にキスをする。
「きゃーーっ!!!!」
目ざとい女子達の歓声が上がる。
「わお」
青井も感嘆の息をつく。
「やっぱり君ら…」
「そんなわけないですーw」
「違うの?」
「違いますよ、なんでそういうこと言うんですかーっ」
「すすむくん、ちょっと抜けない?」
「え、」
人前で他の人間とキスされておきながら誘い出すなんてやっぱり年の功は図太い。
「じゃあシンも一緒に」
「何で俺も」
ますます意味が分からなくなる場にすすむがさらに迷案し、シンと青井の2人が目配せし合う。
「3人で抜けるかー」
「え~すすむくん達いなくなっちゃうの~」
女性陣からブーイングがくる。
「じゃあ2次会いこー」
お上の目もある手前、リンネの刺すような視線を感じたがすすむが我関せず店からさっさと出て行ってしまう。

それからゲーセンへ行って、女子に囲まれながらUFOキャッチャーをしたり居酒屋を移動した。

「すすむ君ってノーマルだよね?」
青井がシンに囁き、
「普通にストレートだと思いますよ」
こそこそと話をしていると、すすむが自ら絡んでいく。
「そこの2人、何話してんすか~」
「やだー、男二人でー」
他の人達にも囃し立てられ、2人は黙り込む。普通に異性と楽しそうにしているすすむを見ていると、普段とのギャップに困惑する。他人に無関心で本心を見せないすすむと今のどちらが本当のすすむなのだろう。今日の親しみやすさに女性陣も好意的に思っていた。
「まだ帰りたくなーい」
「もう終電の時間か」

日付が変わる時間が迫る中すすむとずっと同席をキープしている女性もいたが、結局次の日も仕事ということでお開きになった。
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