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「くっ……とぼけるなぁ!」

 リアムは多くの貴族の目に止まっていることも忘れて、王子に向かって今にも襲いかかりそうな剣幕で懐に手を入れる。

 次にリアムがとる行動、それはアリシアにでもわかった。

 アリシアが気づくということは、王子はそれよりも早く気づいて動き出していた。アリシアに被害が行かないように身を呈して庇いつつ、血管がはち切れそうなばかりに怒り狂ったリアムが懐から取り出したナイフを受け止める。

「ほっ、おら!」
「ぐぁ?!」

 ナイフをうけとめた王子はそのままリアムの意識を奪い取る。王族ともなれば、幼い頃からあらゆる英才教育を受けているため、この程度わけないのだ。

「ははは、大丈夫かい。アリシア」
「だ、大丈夫です」
「良かった良かった、その勢いで僕に惚れてもいいんだよ?」
「大丈夫です」
「ははは! 急に冷めたトーンだね」

 アリシアの返しが面白かったのか王子は笑い声をあげる。その背後では昏倒したリアムが兵士によって拘束し連れ去られていった。

「あー、こうなっては皆興醒めだね。悪いけど、今日はお開きにしよう! それで後日、パーティをやりなおす。渡航費や滞在費は僕がだすから、みな王都を楽しんでくれ!」

 突然の出来事についてこられない客が多いのをきにした王子が、ぱんぱんと手を叩きながらとびきり明るい口調でそんなことを言う。戸惑いが辺りに流れるものの、ひとりが拍手をしたことで賛同する客が増え、後日行われるパーティを楽しみにして皆帰る準備を始める。
 パーティ会場に残っているのは、王子とアリシア、そして未だに醜い口論を続けるライアとメリッサだった。
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