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1巻
1-3
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「少し強めのやつも通れるようにしますか。情報ありがとうございます、アーさん」
襲撃をなんなく撥ね返せてしまっては、魔界の生命の素材などを財源にして王国が強くなってしまうことも考えられます。
「我の方も少し相談があるのだが……」
珍しいですね、アーさんから相談なんて。
あ、ちなみにバレンタインは今、エルフの子供と遊んでます。エルフの中に一人だけ子供がいたんですが、あっという間に仲良くなりましたね。
「それで、相談ってなんです?」
「魔界の悪魔の中に、我の配下といえる存在が百体ほどいるのだが、やつらもここに移住したいそうだ」
「随分たくさんですね。わかりました、エルフのみなさんに家作りをお願いしましょう」
住むところは問題なさそうですが、食料は微妙ですね。少しずつ野菜などの栽培を始めているようですが、百体を賄えるかどうか……。あ、待ってください。悪魔ってことは、受肉させるときに魔力を多めに渡せばしばらくもつはずですね。
そんなことを考えていたら、アーさんがなにやら困惑しています。
「どうしました?」
「いや、随分あっさり受け入れるのだなと」
「アーさんの頼みですから」
日頃からお世話になっています。協力しないわけがありません。といっても、私ができることは少ないのですが……家を作るのはエルフたちですし、資材を集めるのもアーさんです。
私はいつもどおりだらだらごろごろ、たまにフェンをもふもふします。
「感謝する。マーガレット」
「どういたしまして、アーさん」
アーさんの相談を受けてから一週間ほど経った日、ついに悪魔たちが魔界からやってきました。悪魔の特徴である爛々と輝く魔力に満ちた瞳以外、外見はバラバラです。手足の本数や顔のパーツもめちゃくちゃな悪魔が多いですし、中にはかなり精神的に来る見た目の悪魔もいます。
「姉御! ヨロシクオネガイシヤース!」
「「「シャース!」」」
よくわからない呼び方をされた気がします……
エルフたちが頑張ってくれたおかげで百人分の家を用意することができました。十人で一つの家なので、少し狭いかもしれませんが。
にしても……
「こっちを見ないでくれ、マーガレット、フェン」
「いや、この悪魔たちってアーさんの配下なんですよね?」
さっきの呼び方といい、アーさんはこういうノリが好きなんでしょうか。
「我にも若く、荒れていた時期があったのだ」
遠い目をしていますね、アーさん。悪魔にも思春期があるのでしょうか。少し悪魔の生態が気になります。
アーさんの過去について、もう少し掘り下げていきたいところではありますが、とりあえず悪魔たちの見た目を普通のものにしましょう。
「では、全員を受肉させましょうか」
「並ばせるか?」
「いえ、このままで」
少し大変ですが、魔力を多めにあげればいいだけです。それ!
「お、おおおおお!?」
「凄まじい力ッス、姉御!」
「姉御すげぇぇぇ」
「アーネーゴ! アーネーゴ!」
魔力を受け取って受肉した悪魔たちはアーさんと同じように人型ではありますが、元の特徴の一部を引き継いだ姿に変わっていきます。
悪魔たちが狂喜乱舞してますね。少し魔力をあげすぎましたか?
「低級悪魔と中級悪魔の集まりだったのだが……全員進化してるぞ、主よ」
「喜んでいるのでよしとしましょう」
強くなったといっても、アーさんほどではないし、バレンタイン一人で全員倒せる程度です。ちなみにバレンタインはこの一週間で完全に私たちに馴染んでます。
最初の頃はフェンの狩りに同行していたのですが、最近は農作業が楽しいみたいですね。
「国が滅ぼせるな」
アーさんがぼそっとつぶやきました。
「このあたりの警備をやってもらうつもりだったので、強いに越したことはないです」
バレンタインのときのようなことが起きては困りますから。危険を察知できるように警備を万全にしておきたかったんです。
警備だけでなく、農作業とかそれ以外にも協力してもらいます。
「さぁ、仕事は終わりです。あとは頼みますよ、アーさん」
「わかった、感謝するマーガレット」
「「「アザースッ!」」」
「どういたしまして」
さて、私は一仕事終えたのでフェンをもふもふして癒されます。もふもふー。
◇◇◇
悪魔たちがここに住むようになってしばらく経ちましたが、バレンタイン同様、かなりスムーズに馴染んでいるようです。
私はというと、いつもどおり惰眠をむさぼっています。むさぼっていたのですが……なぜか悪魔たちが押しかけてきました。
「マーガレットの姉御! なにか手伝うことありませんか!」
「手伝うことって……私、ゴロゴロしてるだけですよ?」
悪魔たちが増えてから、かなり賑やかになりました。悪魔たちは想像以上に社交的な性格で、私以上にエルフやバレンタインと仲良しです。
時にはバレンタインと一緒にイタズラを仕掛けてアーさんに怒られてることもありますから。
悪魔たちは私にもグイグイ来ます。嫌ではありませんが……私、ゴロゴロしているだけなので、来てもなにも仕事はありませんよ?
「なにかしましょうよ、姉御! いい天気ですぜ!」
「そうですよ、姉御! 俺たちもいます、なにかしましょう!」
えー。悪魔たちはなんでそんなに積極的なんです? 仕事にもかなり熱心に取り組んでいるようで、農業も順調だとエルフに聞きましたが……なぜその熱意を私にも?
まぁ、ここまで言われて拒否するわけにもいきません。
「わかりました、なにかしましょうか」
「よっしゃー! やってやりましょう姉御!」
「といっても、なにします?」
おやつでも食べますか? それとも、みんなでお昼寝するとか? いや、それだといつもどおりの私の生活ですね。そういえば、悪魔たちが来てからというもの、私はなにも仕事をしていないです。なにか仕事になるようなことでもしましょうか。
みんなと仲良くのんびり暮らしていますが、なにもせずにだらだらし続けるのは少し不安です。みんなに追い出されては困ります。
ここは逆に仕事がないか聞いてみましょう。
「悪魔さんたちはなにか困ってることはありませんか?」
「困ってることですか、姉御。そうですね……あ、馬が欲しいってエルフのみなさんが言ってやしたぜ!」
馬ですか。なぜ馬なんでしょう。悪魔たちも理由までは知らないようです。
そうですね、ここはエルフたちに直接聞きましょうか。
「ということで来ました。シルフィ」
「マーガレット様。これはこれは、我が家にお越しいただきありがとうございます」
頭を下げられますが……私、なんでエルフにここまで敬われているのかわからないんですよね。前に家を回った時もすごい丁寧に対応されました。
「馬が必要と聞いたんですが」
「そうなんです。農作業をするにあたって重いものを運搬するなど、労働力になってもらいたいと思いまして……」
「なるほど」
悪魔たちは魔法的な力は持っていても、物理的な力はあまりないですからね。魔法でできなくもないでしょうけど、アーさんクラスにならないと細かな作業は厳しいでしょう。
私がやれば一瞬ですが、働きたくないですし、そもそも私一人の力に頼る状況はよくありません。私が倒れたら、飢えてみんなで共倒れなんてことになるかもしれません。
「野生の馬……厳しいですよね。王国と取引なんてもってのほかでしょうし」
そもそも、王国は私がここにいることを知っているのでしょうか?
「他……帝国や神聖国との取引とかどうでしょうか?」
「取引……いずれはそういったことをおこなう必要はありそうですが、現時点で私たちから出せるものがありません」
たしかにシルフィの言うとおりです。お金は持ってないですし、特産品などもありません。そもそも悪魔が大量にいるここと取引してくれる相手などいないでしょう。
「よし、なら魔界から呼びましょう」
困ったときの魔界頼りです。
「なにかあったときのために、フェンとアーさんを呼んできてもらえますか?」
「わかりました」
シルフィが二人を呼んできてくれました。さあ、やりましょうか。話はシルフィから伝えてもらっています。
「それで、なにを呼び出すのだ、マーガレット」
「アーさんはなにがいいと思います?」
「労働力となる家畜のようなものだろう? 魔牛か?」
魔界の牛さんですか。たしかに、家畜としてはいいのかもしれません。
「だが、魔牛は魔界の貴族が飼ってることが多い。勝手にゲートを通して呼び寄せれば、報復しようとこちらに乗り込んでくる可能性もある」
「牛さんは却下です。別のものにしましょう」
うーん、家畜って考えるから難しいのかもしれません。大きめの生き物くらいに考えてみましょう。
大きさで制限をかけたゲートを開きます。もちろん魔界と繋げたゲートです。さて、なにが出るでしょう。あ、なんかゲートに入ってきてますね。
けど、ちょっと反応がおかしいような。とんでもない魔力を感じます。
「……主よ。ゲートの向こうから凄まじい魔力を感じるのだが」
「やっぱり私の勘違いではないようですね。ゲートを閉じましょう」
まずいものが来る前に、ゲートを閉じます。
閉じましたが、魔界側からゲートをこじ開けようとしていますね。これはまずい予感がします。
「アーさん、バレンタインを呼んできてください。あとみんなを退避させるのもお願いします」
「承知した!」
「……来るぞ、主よ!」
急いでアーさんに動いてもらいますが、間に合いません。ゲートが開き、巨大な龍の頭がこちらの世界に出てきます。
『グハハハハ! 俺を呼び出したのは貴様か! 人間!』
呼ぶものを間違えました。なんで家畜を呼ぼうとして龍が来るんですか。完全にやらかしましたね。龍というのは、生きとし生けるものの中で文句なしの最強格です。しゃべっているだけで周りに圧力を放っています。
ちょっとまずいです。いや、かなりまずいかもしれないですね。
とりあえずみんなを守るために結界を張りましょう。
『む? 結界か? 人間が作った結界程度、俺には効かぬわ!』
そう言って龍は暴れます。私が言うのもなんですが、でたらめな魔力の使い方ですね。元々王国に張っていたものほどではありませんが、かなりの強度で作った結界がものの数度の攻撃で弱ってしまいました。
『俺の力をもってしても、すぐに壊せない結界だと!?』
「わりと全力で作りましたから。それよりも、落ち着いて話しませんか?」
『俺は人間と話などせん!』
「じゃあ、私とはどうだ?」
上空から声が飛んできます。
バレンタインです。子供であるバレンタインを呼ぶのは少しまずい気がして後悔していましたが、龍が動きを止めてくれたので結果オーライでしょうか。
『魔槍姫か? なぜ、貴様がここにいる』
「私はここに住んでるんだ。あんたは三仙龍のフォーレイであってるか?」
人間としゃべりたくないだけで、バレンタインとは普通にしゃべるのですね。
『うむ。俺は三仙龍が一匹、深緑のフォーレイ。して魔槍姫よ。ここは貴様が支配している場所なのか?』
「いや、私じゃない。そこにいるマーガレットが支配している場所だ」
そう言ってバレンタインは私を指さします。別に支配してるつもりはないですけど……
『なっ、人間に支配されているというのか!? 貴様……魔界の名を汚す気か?』
「魔界の生命としての誇りを捨てたわけじゃない。ただ、私はここで学ばないといけないことがある。そう思ってるからここにいるんだ。そしてその場所を攻撃しようとしてるあんたは……私の敵だ!」
『貴様……!』
バレンタインが戦闘態勢をとると同時に、フォーレイの魔力が膨れ上がっていきます。
時間稼ぎとしては完璧です、バレンタイン。
『ぬっ!?』
フォーレイはまだゲートを抜け切っていませんから、そのゲートに干渉してフォーレイを無理矢理押し返します。
『ぬぁぁぁぁ、許さんぞぉぉぉぉにんげぇぇぇぇぇぇ……』
時間を巻き戻すようにして、フォーレイの姿は魔界へと消えていきました。
「……ふう。ありがとうございます、バレンタイン。あと、巻き込んでしまってごめんなさい」
「いい。みんなを守ることには私も協力したいぞ」
「みんなで暮らすことを、ちゃんと学んでますね」
偉いです。バレンタインはしっかり成長しています。ですが子供を巻き込んでしまったのは私の間違いです。反省しなければいけませんね。
「マーガレット! 大丈夫か!?」
「アーさん。それに悪魔のみんなも、迷惑をかけてごめんなさい」
「そんな、姉御が無事ならいいんですぜ!」
「「「そうですぜ!」」」
みんな、優しいですね。けど、あとでちゃんと謝って回りましょう。心配をかけたという意味でも悪いことをしてしまいましたから。
「それで、あの龍はどうしたのだ、主よ」
「魔界に返しました。契約魔法を同時に使って、しばらくはゲートを作れないようにしてやったので戻ってくることはないでしょう」
本当は他にも契約魔法に仕込んだのですけど、ほとんどが弾かれました。
「王国にでも送ればよかったのではないか?」
「さすがに、あのレベルの龍を送り込んだら相当な被害が出ます。今は王に心酔している騎士団や軍、貴族を苦しめるだけで済みますが、やりすぎると国民に直接の被害がいってしまいます」
それは、少し心が痛むのでやりません。
◇◇◇
フォーレイの一件で、むやみやたらに魔界を利用するべきではないということを学んだ私は、今日も今日とて惰眠をむさぼっています。
「なぁ……主よ。やはり仕事を見つけた方がよいのではないか?」
「えー」
フェンをもふもふするのが私は好きなんですよ。バレンタインのときも、龍のときも、ある程度働いたじゃないですか。だからしばらくお休みです。
「バレンタインのときはたしかに助かったが、龍のときはそもそも主のせいでは?」
うぐっ、ばれましたか。ちなみに龍を魔界に返してから一週間が経ちました。契約魔術はちゃんと効いているようで、またこっちに来る気配はありません。
「それに、結局エルフに頼まれた家畜も用意していないだろう」
龍のことで有耶無耶になってしまいましたからね。やっていません。
「養わなければならない者も増えた。働かねばならないのではないか?」
そう言ってフェンは外を眺めます。
家の外、そこにはバレンタインを中心とした子供たちの集団がいます。ついこの前まではエルフの子供とバレンタインしかいませんでしたが、今はかなりの数の悪魔の子供がいます。
どうやら、悪魔は互いの魔力を使って子供を作るらしく、私が魔力を多めにあげたばっかりに子供を作ったカップルが多いのです。ちなみに魔界ではカップルで子供を作るのは稀で、通常は現界の生き物の恐怖や恨みの感情が魔力と結びつくことで新しい悪魔が生まれるそうです。魔界はなかなか怖そうですね。
「……間接的とはいえ、私のあげた魔力を使ってできた子供なので、他人の気がしません」
「アーさんも言っていたが、受け取った魔力は自身のものに変換されるのだろう? 繋がりは薄いのではないか?」
まぁ、さすがに自分の子供だと思ってはいません。エルフや悪魔たちと同じようにこの場所で一緒に暮らす仲間です。
「よし、フェン。決めました、私はしばらくの間仕事をします」
「おお、ついにやる気になってくれたか! 主よ!」
ええ、そろそろ働かないとまずいですし。これでも王国にいた頃は、聖女にもかかわらずなぜか大量の書類を捌いていました。その事務処理能力は城内一位と言われるほどです。
つまり、本気を出せば仕事ができるのです! 私は!
「そうと決まれば、覚悟してくださいね? フェン」
「え? なぜだ?」
フェン、本気の仕事というのは、命を削っておこなうものなんですよ。
さあ……行きますよ!
「いいですか、食料の備蓄はこれだけの量を確保してください。一日の収穫量のうち、備蓄に回す割合はこのくらいです」
「わかりました、マーガレット様」
「あと、備蓄用の倉庫は不測の事態に備えて二つに分けましょう。火災などで片方がダメになっても、半分は残ります。ゆくゆくは交易をしないとならないので、質のいいものは分けて私に見せてください」
まず、取りかかったのは食料問題です。
供給量はなんとか足りていますが、備蓄となるとギリギリです。農地の量を増やし、みんなで分業し、さらに時間ごとに作業を指定することによって効率を上げてもらいます。これでおそらくは冬を乗り越えられるでしょう。
次に交易に関してです。このまま人口が増えていくと、足りないものが絶対に出てきます。足りないものは交易で手に入れることになるため、取引材料として質のいい農作物を用意しておきます。
さらに交易先の選定のために、フェンと何人かの悪魔に周辺の村や街の偵察をお願いしました。もちろん、見つからないよう認識阻害の魔法を私とアーさん、バレンタインで三重にかけています。
「誰なのだ、これは……」
ふふふ、やる気になった私の仕事ぶりにみんな驚いていますね。
ただ、業務をおこなう中でいくつか問題も発生しています。
「やっぱり、紙が欲しいですね。いつまでも木を削って文字を書くわけにもいきません。あと、悪魔たちに文字も教えなければ」
話す言葉は一緒でも、魔界の文字とこちらの文字は大きく違います。
「やるべきことはたくさんありますね」
仕事モードはまだまだ終わりません。やる気があるうちに仕事をどんどん進めましょう。
「今後、家が増える可能性があります。道や施設の位置なども予め決めておかなければなりません。エルフの人たちの中で、そういったことに関わったことがある人はいますか?」
こういうのは経験がものをいいます。そう思って聞いたのですが、そういった経験がある人はエルフにはいないようです。
「わかりました。では私がある程度の草案を出すので、それに沿って道の敷設と建物の建築をお願いします」
少し大変ですが、やるしかありません。土魔法を使って頭の中にある街の模型を簡単に作ります。昔、王国で実施されようとしていた改革案を少し弄ったものです。王国では地域に根差して生活する人が多すぎて実行されることはありませんでしたが、ここならできるでしょう。もちろん、規模は小さいですが。
「アーさん主導で資材の準備を」
「わかったが……まるで人が変わったようだぞ? 大丈夫かマーガレット、変なものでも食べたのか? いくらお腹が減ったからといって謎のキノコとかは食べてはいけないんだぞ?」
「私をなんだと思ってるんですか、アーさん。ちょっと仕事に本気を出してるだけです。それより、家畜の件ですが、やっぱり魔界に頼らないと厳しそうなんですよ」
交易先を見つけて、家畜を分けてもらうというのも考えましたが、見ず知らずの娘にいきなり家畜を分けてくれる人はなかなかいないでしょう。野生の牛、馬などもそうそういるものではありません。
「ですが、適当に召喚するとこの前みたいな事態になってしまうのでやり方を変えます」
まず、悪魔の中でも強めの人たちに魔界に行ってもらいます。そして、魔界で家畜になりそうな生き物を見つけたら私がそこを狙ってゲートを作るという方法です。面倒くさがらず最初からこのやり方をとっていればフォーレイのような龍が来ることもなかったんですけど。
方法をアーさんに説明し、悪魔を派遣してもらいます。
これで街の発展、建築についても一段落です。
「他に仕事は……」
やる気のあるうちに色々と終わらせたいですね。他には……あ、バレンタインや子供たちがやけにこっちを見ています。なんでしょう?
「みんな、マーガレットの偽者が現れたって噂してたから見に来た!」
「失礼ですねバレンタイン。私だってたまには仕事をするのです」
襲撃をなんなく撥ね返せてしまっては、魔界の生命の素材などを財源にして王国が強くなってしまうことも考えられます。
「我の方も少し相談があるのだが……」
珍しいですね、アーさんから相談なんて。
あ、ちなみにバレンタインは今、エルフの子供と遊んでます。エルフの中に一人だけ子供がいたんですが、あっという間に仲良くなりましたね。
「それで、相談ってなんです?」
「魔界の悪魔の中に、我の配下といえる存在が百体ほどいるのだが、やつらもここに移住したいそうだ」
「随分たくさんですね。わかりました、エルフのみなさんに家作りをお願いしましょう」
住むところは問題なさそうですが、食料は微妙ですね。少しずつ野菜などの栽培を始めているようですが、百体を賄えるかどうか……。あ、待ってください。悪魔ってことは、受肉させるときに魔力を多めに渡せばしばらくもつはずですね。
そんなことを考えていたら、アーさんがなにやら困惑しています。
「どうしました?」
「いや、随分あっさり受け入れるのだなと」
「アーさんの頼みですから」
日頃からお世話になっています。協力しないわけがありません。といっても、私ができることは少ないのですが……家を作るのはエルフたちですし、資材を集めるのもアーさんです。
私はいつもどおりだらだらごろごろ、たまにフェンをもふもふします。
「感謝する。マーガレット」
「どういたしまして、アーさん」
アーさんの相談を受けてから一週間ほど経った日、ついに悪魔たちが魔界からやってきました。悪魔の特徴である爛々と輝く魔力に満ちた瞳以外、外見はバラバラです。手足の本数や顔のパーツもめちゃくちゃな悪魔が多いですし、中にはかなり精神的に来る見た目の悪魔もいます。
「姉御! ヨロシクオネガイシヤース!」
「「「シャース!」」」
よくわからない呼び方をされた気がします……
エルフたちが頑張ってくれたおかげで百人分の家を用意することができました。十人で一つの家なので、少し狭いかもしれませんが。
にしても……
「こっちを見ないでくれ、マーガレット、フェン」
「いや、この悪魔たちってアーさんの配下なんですよね?」
さっきの呼び方といい、アーさんはこういうノリが好きなんでしょうか。
「我にも若く、荒れていた時期があったのだ」
遠い目をしていますね、アーさん。悪魔にも思春期があるのでしょうか。少し悪魔の生態が気になります。
アーさんの過去について、もう少し掘り下げていきたいところではありますが、とりあえず悪魔たちの見た目を普通のものにしましょう。
「では、全員を受肉させましょうか」
「並ばせるか?」
「いえ、このままで」
少し大変ですが、魔力を多めにあげればいいだけです。それ!
「お、おおおおお!?」
「凄まじい力ッス、姉御!」
「姉御すげぇぇぇ」
「アーネーゴ! アーネーゴ!」
魔力を受け取って受肉した悪魔たちはアーさんと同じように人型ではありますが、元の特徴の一部を引き継いだ姿に変わっていきます。
悪魔たちが狂喜乱舞してますね。少し魔力をあげすぎましたか?
「低級悪魔と中級悪魔の集まりだったのだが……全員進化してるぞ、主よ」
「喜んでいるのでよしとしましょう」
強くなったといっても、アーさんほどではないし、バレンタイン一人で全員倒せる程度です。ちなみにバレンタインはこの一週間で完全に私たちに馴染んでます。
最初の頃はフェンの狩りに同行していたのですが、最近は農作業が楽しいみたいですね。
「国が滅ぼせるな」
アーさんがぼそっとつぶやきました。
「このあたりの警備をやってもらうつもりだったので、強いに越したことはないです」
バレンタインのときのようなことが起きては困りますから。危険を察知できるように警備を万全にしておきたかったんです。
警備だけでなく、農作業とかそれ以外にも協力してもらいます。
「さぁ、仕事は終わりです。あとは頼みますよ、アーさん」
「わかった、感謝するマーガレット」
「「「アザースッ!」」」
「どういたしまして」
さて、私は一仕事終えたのでフェンをもふもふして癒されます。もふもふー。
◇◇◇
悪魔たちがここに住むようになってしばらく経ちましたが、バレンタイン同様、かなりスムーズに馴染んでいるようです。
私はというと、いつもどおり惰眠をむさぼっています。むさぼっていたのですが……なぜか悪魔たちが押しかけてきました。
「マーガレットの姉御! なにか手伝うことありませんか!」
「手伝うことって……私、ゴロゴロしてるだけですよ?」
悪魔たちが増えてから、かなり賑やかになりました。悪魔たちは想像以上に社交的な性格で、私以上にエルフやバレンタインと仲良しです。
時にはバレンタインと一緒にイタズラを仕掛けてアーさんに怒られてることもありますから。
悪魔たちは私にもグイグイ来ます。嫌ではありませんが……私、ゴロゴロしているだけなので、来てもなにも仕事はありませんよ?
「なにかしましょうよ、姉御! いい天気ですぜ!」
「そうですよ、姉御! 俺たちもいます、なにかしましょう!」
えー。悪魔たちはなんでそんなに積極的なんです? 仕事にもかなり熱心に取り組んでいるようで、農業も順調だとエルフに聞きましたが……なぜその熱意を私にも?
まぁ、ここまで言われて拒否するわけにもいきません。
「わかりました、なにかしましょうか」
「よっしゃー! やってやりましょう姉御!」
「といっても、なにします?」
おやつでも食べますか? それとも、みんなでお昼寝するとか? いや、それだといつもどおりの私の生活ですね。そういえば、悪魔たちが来てからというもの、私はなにも仕事をしていないです。なにか仕事になるようなことでもしましょうか。
みんなと仲良くのんびり暮らしていますが、なにもせずにだらだらし続けるのは少し不安です。みんなに追い出されては困ります。
ここは逆に仕事がないか聞いてみましょう。
「悪魔さんたちはなにか困ってることはありませんか?」
「困ってることですか、姉御。そうですね……あ、馬が欲しいってエルフのみなさんが言ってやしたぜ!」
馬ですか。なぜ馬なんでしょう。悪魔たちも理由までは知らないようです。
そうですね、ここはエルフたちに直接聞きましょうか。
「ということで来ました。シルフィ」
「マーガレット様。これはこれは、我が家にお越しいただきありがとうございます」
頭を下げられますが……私、なんでエルフにここまで敬われているのかわからないんですよね。前に家を回った時もすごい丁寧に対応されました。
「馬が必要と聞いたんですが」
「そうなんです。農作業をするにあたって重いものを運搬するなど、労働力になってもらいたいと思いまして……」
「なるほど」
悪魔たちは魔法的な力は持っていても、物理的な力はあまりないですからね。魔法でできなくもないでしょうけど、アーさんクラスにならないと細かな作業は厳しいでしょう。
私がやれば一瞬ですが、働きたくないですし、そもそも私一人の力に頼る状況はよくありません。私が倒れたら、飢えてみんなで共倒れなんてことになるかもしれません。
「野生の馬……厳しいですよね。王国と取引なんてもってのほかでしょうし」
そもそも、王国は私がここにいることを知っているのでしょうか?
「他……帝国や神聖国との取引とかどうでしょうか?」
「取引……いずれはそういったことをおこなう必要はありそうですが、現時点で私たちから出せるものがありません」
たしかにシルフィの言うとおりです。お金は持ってないですし、特産品などもありません。そもそも悪魔が大量にいるここと取引してくれる相手などいないでしょう。
「よし、なら魔界から呼びましょう」
困ったときの魔界頼りです。
「なにかあったときのために、フェンとアーさんを呼んできてもらえますか?」
「わかりました」
シルフィが二人を呼んできてくれました。さあ、やりましょうか。話はシルフィから伝えてもらっています。
「それで、なにを呼び出すのだ、マーガレット」
「アーさんはなにがいいと思います?」
「労働力となる家畜のようなものだろう? 魔牛か?」
魔界の牛さんですか。たしかに、家畜としてはいいのかもしれません。
「だが、魔牛は魔界の貴族が飼ってることが多い。勝手にゲートを通して呼び寄せれば、報復しようとこちらに乗り込んでくる可能性もある」
「牛さんは却下です。別のものにしましょう」
うーん、家畜って考えるから難しいのかもしれません。大きめの生き物くらいに考えてみましょう。
大きさで制限をかけたゲートを開きます。もちろん魔界と繋げたゲートです。さて、なにが出るでしょう。あ、なんかゲートに入ってきてますね。
けど、ちょっと反応がおかしいような。とんでもない魔力を感じます。
「……主よ。ゲートの向こうから凄まじい魔力を感じるのだが」
「やっぱり私の勘違いではないようですね。ゲートを閉じましょう」
まずいものが来る前に、ゲートを閉じます。
閉じましたが、魔界側からゲートをこじ開けようとしていますね。これはまずい予感がします。
「アーさん、バレンタインを呼んできてください。あとみんなを退避させるのもお願いします」
「承知した!」
「……来るぞ、主よ!」
急いでアーさんに動いてもらいますが、間に合いません。ゲートが開き、巨大な龍の頭がこちらの世界に出てきます。
『グハハハハ! 俺を呼び出したのは貴様か! 人間!』
呼ぶものを間違えました。なんで家畜を呼ぼうとして龍が来るんですか。完全にやらかしましたね。龍というのは、生きとし生けるものの中で文句なしの最強格です。しゃべっているだけで周りに圧力を放っています。
ちょっとまずいです。いや、かなりまずいかもしれないですね。
とりあえずみんなを守るために結界を張りましょう。
『む? 結界か? 人間が作った結界程度、俺には効かぬわ!』
そう言って龍は暴れます。私が言うのもなんですが、でたらめな魔力の使い方ですね。元々王国に張っていたものほどではありませんが、かなりの強度で作った結界がものの数度の攻撃で弱ってしまいました。
『俺の力をもってしても、すぐに壊せない結界だと!?』
「わりと全力で作りましたから。それよりも、落ち着いて話しませんか?」
『俺は人間と話などせん!』
「じゃあ、私とはどうだ?」
上空から声が飛んできます。
バレンタインです。子供であるバレンタインを呼ぶのは少しまずい気がして後悔していましたが、龍が動きを止めてくれたので結果オーライでしょうか。
『魔槍姫か? なぜ、貴様がここにいる』
「私はここに住んでるんだ。あんたは三仙龍のフォーレイであってるか?」
人間としゃべりたくないだけで、バレンタインとは普通にしゃべるのですね。
『うむ。俺は三仙龍が一匹、深緑のフォーレイ。して魔槍姫よ。ここは貴様が支配している場所なのか?』
「いや、私じゃない。そこにいるマーガレットが支配している場所だ」
そう言ってバレンタインは私を指さします。別に支配してるつもりはないですけど……
『なっ、人間に支配されているというのか!? 貴様……魔界の名を汚す気か?』
「魔界の生命としての誇りを捨てたわけじゃない。ただ、私はここで学ばないといけないことがある。そう思ってるからここにいるんだ。そしてその場所を攻撃しようとしてるあんたは……私の敵だ!」
『貴様……!』
バレンタインが戦闘態勢をとると同時に、フォーレイの魔力が膨れ上がっていきます。
時間稼ぎとしては完璧です、バレンタイン。
『ぬっ!?』
フォーレイはまだゲートを抜け切っていませんから、そのゲートに干渉してフォーレイを無理矢理押し返します。
『ぬぁぁぁぁ、許さんぞぉぉぉぉにんげぇぇぇぇぇぇ……』
時間を巻き戻すようにして、フォーレイの姿は魔界へと消えていきました。
「……ふう。ありがとうございます、バレンタイン。あと、巻き込んでしまってごめんなさい」
「いい。みんなを守ることには私も協力したいぞ」
「みんなで暮らすことを、ちゃんと学んでますね」
偉いです。バレンタインはしっかり成長しています。ですが子供を巻き込んでしまったのは私の間違いです。反省しなければいけませんね。
「マーガレット! 大丈夫か!?」
「アーさん。それに悪魔のみんなも、迷惑をかけてごめんなさい」
「そんな、姉御が無事ならいいんですぜ!」
「「「そうですぜ!」」」
みんな、優しいですね。けど、あとでちゃんと謝って回りましょう。心配をかけたという意味でも悪いことをしてしまいましたから。
「それで、あの龍はどうしたのだ、主よ」
「魔界に返しました。契約魔法を同時に使って、しばらくはゲートを作れないようにしてやったので戻ってくることはないでしょう」
本当は他にも契約魔法に仕込んだのですけど、ほとんどが弾かれました。
「王国にでも送ればよかったのではないか?」
「さすがに、あのレベルの龍を送り込んだら相当な被害が出ます。今は王に心酔している騎士団や軍、貴族を苦しめるだけで済みますが、やりすぎると国民に直接の被害がいってしまいます」
それは、少し心が痛むのでやりません。
◇◇◇
フォーレイの一件で、むやみやたらに魔界を利用するべきではないということを学んだ私は、今日も今日とて惰眠をむさぼっています。
「なぁ……主よ。やはり仕事を見つけた方がよいのではないか?」
「えー」
フェンをもふもふするのが私は好きなんですよ。バレンタインのときも、龍のときも、ある程度働いたじゃないですか。だからしばらくお休みです。
「バレンタインのときはたしかに助かったが、龍のときはそもそも主のせいでは?」
うぐっ、ばれましたか。ちなみに龍を魔界に返してから一週間が経ちました。契約魔術はちゃんと効いているようで、またこっちに来る気配はありません。
「それに、結局エルフに頼まれた家畜も用意していないだろう」
龍のことで有耶無耶になってしまいましたからね。やっていません。
「養わなければならない者も増えた。働かねばならないのではないか?」
そう言ってフェンは外を眺めます。
家の外、そこにはバレンタインを中心とした子供たちの集団がいます。ついこの前まではエルフの子供とバレンタインしかいませんでしたが、今はかなりの数の悪魔の子供がいます。
どうやら、悪魔は互いの魔力を使って子供を作るらしく、私が魔力を多めにあげたばっかりに子供を作ったカップルが多いのです。ちなみに魔界ではカップルで子供を作るのは稀で、通常は現界の生き物の恐怖や恨みの感情が魔力と結びつくことで新しい悪魔が生まれるそうです。魔界はなかなか怖そうですね。
「……間接的とはいえ、私のあげた魔力を使ってできた子供なので、他人の気がしません」
「アーさんも言っていたが、受け取った魔力は自身のものに変換されるのだろう? 繋がりは薄いのではないか?」
まぁ、さすがに自分の子供だと思ってはいません。エルフや悪魔たちと同じようにこの場所で一緒に暮らす仲間です。
「よし、フェン。決めました、私はしばらくの間仕事をします」
「おお、ついにやる気になってくれたか! 主よ!」
ええ、そろそろ働かないとまずいですし。これでも王国にいた頃は、聖女にもかかわらずなぜか大量の書類を捌いていました。その事務処理能力は城内一位と言われるほどです。
つまり、本気を出せば仕事ができるのです! 私は!
「そうと決まれば、覚悟してくださいね? フェン」
「え? なぜだ?」
フェン、本気の仕事というのは、命を削っておこなうものなんですよ。
さあ……行きますよ!
「いいですか、食料の備蓄はこれだけの量を確保してください。一日の収穫量のうち、備蓄に回す割合はこのくらいです」
「わかりました、マーガレット様」
「あと、備蓄用の倉庫は不測の事態に備えて二つに分けましょう。火災などで片方がダメになっても、半分は残ります。ゆくゆくは交易をしないとならないので、質のいいものは分けて私に見せてください」
まず、取りかかったのは食料問題です。
供給量はなんとか足りていますが、備蓄となるとギリギリです。農地の量を増やし、みんなで分業し、さらに時間ごとに作業を指定することによって効率を上げてもらいます。これでおそらくは冬を乗り越えられるでしょう。
次に交易に関してです。このまま人口が増えていくと、足りないものが絶対に出てきます。足りないものは交易で手に入れることになるため、取引材料として質のいい農作物を用意しておきます。
さらに交易先の選定のために、フェンと何人かの悪魔に周辺の村や街の偵察をお願いしました。もちろん、見つからないよう認識阻害の魔法を私とアーさん、バレンタインで三重にかけています。
「誰なのだ、これは……」
ふふふ、やる気になった私の仕事ぶりにみんな驚いていますね。
ただ、業務をおこなう中でいくつか問題も発生しています。
「やっぱり、紙が欲しいですね。いつまでも木を削って文字を書くわけにもいきません。あと、悪魔たちに文字も教えなければ」
話す言葉は一緒でも、魔界の文字とこちらの文字は大きく違います。
「やるべきことはたくさんありますね」
仕事モードはまだまだ終わりません。やる気があるうちに仕事をどんどん進めましょう。
「今後、家が増える可能性があります。道や施設の位置なども予め決めておかなければなりません。エルフの人たちの中で、そういったことに関わったことがある人はいますか?」
こういうのは経験がものをいいます。そう思って聞いたのですが、そういった経験がある人はエルフにはいないようです。
「わかりました。では私がある程度の草案を出すので、それに沿って道の敷設と建物の建築をお願いします」
少し大変ですが、やるしかありません。土魔法を使って頭の中にある街の模型を簡単に作ります。昔、王国で実施されようとしていた改革案を少し弄ったものです。王国では地域に根差して生活する人が多すぎて実行されることはありませんでしたが、ここならできるでしょう。もちろん、規模は小さいですが。
「アーさん主導で資材の準備を」
「わかったが……まるで人が変わったようだぞ? 大丈夫かマーガレット、変なものでも食べたのか? いくらお腹が減ったからといって謎のキノコとかは食べてはいけないんだぞ?」
「私をなんだと思ってるんですか、アーさん。ちょっと仕事に本気を出してるだけです。それより、家畜の件ですが、やっぱり魔界に頼らないと厳しそうなんですよ」
交易先を見つけて、家畜を分けてもらうというのも考えましたが、見ず知らずの娘にいきなり家畜を分けてくれる人はなかなかいないでしょう。野生の牛、馬などもそうそういるものではありません。
「ですが、適当に召喚するとこの前みたいな事態になってしまうのでやり方を変えます」
まず、悪魔の中でも強めの人たちに魔界に行ってもらいます。そして、魔界で家畜になりそうな生き物を見つけたら私がそこを狙ってゲートを作るという方法です。面倒くさがらず最初からこのやり方をとっていればフォーレイのような龍が来ることもなかったんですけど。
方法をアーさんに説明し、悪魔を派遣してもらいます。
これで街の発展、建築についても一段落です。
「他に仕事は……」
やる気のあるうちに色々と終わらせたいですね。他には……あ、バレンタインや子供たちがやけにこっちを見ています。なんでしょう?
「みんな、マーガレットの偽者が現れたって噂してたから見に来た!」
「失礼ですねバレンタイン。私だってたまには仕事をするのです」
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