御伽の国の聖女様! 婚約破棄するというので、聖女の力で結界を吸収してやりました。精々頑張ってください、私はもふもふと暮らします

地鶏

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三章 龍の花嫁

78 遊び場ダンジョン 後編 sideホープ

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sideホープ

「ぐ……」

 体のあちこちが痛い。とくに足がやられてるな。頭から落ちるのは不味いから何としてでも足から落ちようとした結果がこれだ。

 他のやつらなら怪我ひとつなく済ませられるんだろうが、俺の実力じゃ無理だ。

 くそ、真っ暗で何も見えん。天井は閉まってるし、ダンジョンのトラップとなると別ルートに繋がってる可能性が高いな。

 とりあえず魔法で灯りをつけよう。

 灯りをつけると、鉄格子が見える。ここは牢屋か?

 そして、振り返ったところで明らかにおかしいものが見えた。

 いや、まてよ。こんな所にそんなものがあるはずない。まさか鎖に繋がれた女性がいるはずが……

「へ?」

 いたぁぁぁぁぁ?! 

「うわぁ、急に大きな声を出さないでよって、私声出せてる?! ていうか封印とけてる?!」

 うおぉ、大きな声を注意されたはずなのに、この女性は更なる大きさの声で返してきた。

 み、耳が……。

「ありがとう! 本当にありがとう!」
「うわぁ?! 振るな! 振るなって!」

 ぬおおおおお体がちぎれる! こいつ、なんて力だ?!

「離せ! いい加減にしろ!」
「え? あぁ、ごめんごめん。久しぶりすぎて加減を間違えちゃったよ」
「なんなんだまったく……」

 えへへと笑うこの女、どことなくノアの国の女王と同じ雰囲気を感じる。間違いなく化け物だな。

 というか、さっき封印と言っていたな。なんの事だ?

 よく見れば手に鎖が嵌められているな。両手を離すことは出来なさそうだ。

「とりあえず、何者だ? ここはノアの国の女王がつくったダンジョンだが」
「ダンジョン? そっか、私の思念が混ざった結果かな? 見覚えのある景色だし……あぁ、魔界にある『極炎魔城』のイメージが反映されちゃったのか」

 何の話だ? こいつの思念……まさか、こいつがただの遊び場だったはずのものを本物のダンジョンにしたのか?

 子供達を危険に合わせたのはこいつという訳だ。そして、さっきの言葉から考えるとどうやら俺はこいつの封印をといてしまったらしい。

「いやー、本当にありがとうって……なんか構えてる?! 落ち着いて! 落ち着いてよお兄さん! 待て! 待てだよ!」
「人を犬みたいに扱うな! おりゃ!」
「うわっ、人の話を聞きなよもう!」

 うるさい! 子供たちを危険な目に合わせたんだ! 危険な存在に決まってるだろう。俺が封印を解いたのならば、責任を持って俺が片付ける!

「うおぉ!」
「ちょ、ちょっと! 封印溶けきってなくて私一般人とさほど変わらないんだから! ほんとに死んじゃーー」

 当たると思った魔法が、空中でピタッと止まった。

 そして、何も無いはずの空間から見覚えのある奴らが現れた。

「ストップですホープ。その人を殺しちゃダメですよ」

 聖女か。なんで殺しちゃだめなんだ? 子供たちを危険に晒す様なやつだぞ?

「話を聞かなきゃ行けませんからねー。ここで話すのもなんなので一度外に出ましょう。アーさん、フェン、バレンタインは子供たちをお願いします」
「「「わかった」」」

 残ったのは聖女と金髪。聖女は謎の女を送るみたいだな。

「大丈夫か?」
「……問題ない」
「嘘つけ……あー、足は骨まで逝ってんなこりゃ。お前も俺と一緒で普通の人間なんだから無茶すんなよな」

 ぐ……この金髪、なんだかんだであの化け物集団と戦える力がある。俺と同じような強さでは無い。

「後でマーガレットに治してもらえよ。俺は治癒魔法使えねぇ」
「これくらい問題ない」
「ほーん……てい」

 ぐはぁ?! こいつ、的確に折れてる部分を……!

「問題大ありじゃねぇか。ほら、面倒な意地張ってねぇで大人しく治療されろ」
「……ちっ」

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

sideマーガレット

 フェンやアーさん、バレンタインに金髪を連れて行った調査では思わぬ結果が待ってました。

 魔力感知で隈無く地下を捜索したところ、ある一箇所だけ魔力が一切ない空間があったのです。

 そこを目掛けて転移してみれば、そこには怪我をしたホープと謎の女性がいました。

 聞けばホープは子供たちを守ってくれたようです。危険の原因はこの女性の意思が私の魔法に混ざったせいなので、私に大きな責任があります。あとでみんなに謝らなければなりませんね。

「それでなんですが、まず聞きましょう。あなたは誰です?」
「うーん……簡単に言うと、初代勇者?」
「……シルフィ、精神に作用する薬はありましたか?」
「いやマーガレット様、この女性は手遅れかと……」

 残念な人のようです。

「待てまてぇ! その目、まったく信じてないね?! ほんとに初代勇者なんだってばー!」
「では、名前は?」
「アリアだよ」

 たしかに、伝わっている初代勇者の名前もアリアです。ただ、それだけなら多くの人が知っています。

 たしか初代勇者は魔王との戦いで封印されたと聞きました。ならば過去の魔王のことも知ってるはずです。

 有識者のスズキさんを連れてきました。

「自称、初代勇者さん。魔王の話を聞かせて貰えますか?」
「自称は余計だよ! 魔王……えー、あいつの話かー。そうだなぁ……カードゲームは弱かったかな。ただ、たまに信じられないくらい良い手を使ってくるんだよねー」

 何を言っているんでしょう。初代勇者は魔王と壮絶な戦いを繰り広げたのでは?

「え? そんな感じで伝わってるんだ」
「そうですね……例えば、クリスポの戦いでは天地が割れるほどの激闘の末、勇者は封印されたと」
「クリスポ……? あぁ! あれはカードゲームで勝ったことを何度も自慢してくるから、ちょっとイラついちゃって、思わず神器を出しちゃったんだよねー」

 ……。嘘にしてはあまりに幼稚すぎます。これ、本当に本人なんじゃ?

 待ってください、だとしたら初代勇者の復活って不味くないですか? 

 この人、このままノアに住み着きそうですし、初代勇者が住み着いてるとなれば更なる厄介事が舞い込む可能性が……。

「スズキさん、どうです?」
「いやぁ、私も今代の魔王様のことしか知りませんから……ただ、歴代の魔王は手記を残しているはずです。魔王様に頼めば見せてくれるでしょう」

 なるほど。じゃあさっそく呼びましょうか。

 強制転移……むむ、なかなか魔王城の守りが固くなってますね。ただ、これくらいじゃ止められませんよ。

 よし、魔王さん、召喚!

「……なるほど、また強制転移させられたというわけか。もう何も言うまい、なんの用だマーガレットさん」

 さすが魔王さん、話が早いですね。

 実はかくかくしかじかでして……

「ふむ、この女性が初代勇者かもしれないと……あ! たしかに魔王城の肖像画のひとつにあった気がする!」

 え、ということは……?

「だから言ったじゃん! 私は本当に初代勇者なの! 魔王とも仲良かったんだから!」
「たしかに、じいさんの話で人間の女性の話がよく出てくるが……まぁ大抵つまらない事で喧嘩する話だったが」

 本当に初代勇者なんですね。しかも話を聞くと当時の魔王とは戦うどころか仲が良かったようです。魔王城に肖像画が残ってるくらいですもんね。

 ……この事実が明るみになると、歴史的にも大変ですし、初代勇者を神聖視する団体は多いですから、不味いことになりそうです。

 うぅ、面倒です。面倒ですが、この国の女王としてその面倒事は片付けなければなりません。

「……ねえ、君が今の魔王なんだよね? その、あいつは今……」

 初代勇者、アリアさんが不安そうな眼差しを魔王さんに向けてます。

 仲が良かったみたいですから、心配なのでしょう。初代勇者の話ははるか昔ですから……もしかして……。

「あ、そう、だよね。もう時間も経ってるもんね……」

 初代勇者さん……。

「いや、ばりばり生きてるぞ? 当時の四天王と毎日のように遊んでるはずだ」

 いや、生きてるんですか。さすが魔族、長生きですねー。

「そっか……そっか! じゃあ、あいつの顔を見に行って自慢してやらないと、あいつの封印、解けたぞ!ってね」

 初代勇者さんがすごい嬉しそうにしてます。いいですねー、種族を超えた愛というものですか?

 ん、ちょっと待ってください初代勇者さん、なんか魔法の準備を始めてません?

 あの、さすがに今居なくなられると困るんですが!

「じゃあ、私はあいつのところにいくね! 助けてくれてありがとう! このお礼は必ずするから!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」

 ま、魔法の妨害を!  

「それじゃあ!」

 そして止めるまもなく初代勇者さんは転移してしまいます。

「……いったな」
「……いってしまいましたね」
「ちなみに、じいさんはギャンブルにめっぽう弱く、ほとんどのものを売ってしまってる」

 そうなんですか?

「だが、たった一枚の肖像画だけは手放さなずに部屋に置いてある。まぁ、そういうことだ」
「……なるほど」

 どうしても会いたい相手というものですか……。

「……あ! スズキ、お前なにさらっとここに居るんだ! お前がいなくなって大変なんだぞ!」
「知りませんよ! もう私はここに就職します! ここは労働環境が天国です!」
「ダメだ! お前が抜けたら俺が死ぬ! ほんとに!」

 
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