御伽の国の聖女様! 婚約破棄するというので、聖女の力で結界を吸収してやりました。精々頑張ってください、私はもふもふと暮らします

地鶏

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二章 御伽の国

55 おかえりなさい

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「疲れ……ました……」

 大量に人が増えたのでとても疲れました。仕事に追われる生活は望んでいないのに……。

 一日中フェンのもふもふに顔を埋めていたいところですが、また忙しくなりそうです。

 ただ、今回は嬉しいことも沢山ですけどね。 なんと、ダンジョン攻略組が帰ってきました!

 村中の人達を広場に集めて、攻略メンバーを出迎えます。

 既に魔法による連絡で、ダンジョン攻略が成功したことは村に伝わっているので、お祭り騒ぎです。

「おかえりなさい、アダム、ヤニム、スヤリス、ナオキ、バレンタイン」

 全員から元気なただいまの挨拶が帰ってきます。よかった、どこも怪我とかはしていないようですね。

 まずは飛び込んできたアダムを抱きとめます。

 んー! 久しぶりですねアダム。お母さんはとっても心配していましたが、アダムがダンジョン攻略をなしとげた事はとても嬉しいですし、誇らしいです。

「よく頑張りましたね、アダム」

 よしよし。少し大きくなったように見えますね。表情や気配が大人になりました。

 あとでダンジョンでのお話を沢山聞かせて欲しいです。

 ナオキも、バレンタインもよく頑張ったと思います、偉いです。

「ん……マーガレット、苦しい」
「あぁ、ごめんなさい。抱きしめすぎました」

 バレンタインも強くなりました。魔力の質が変わっています。

 さて、次はナオキの番です。え? ハグはいいんですか? なんででしょう……断られてしまいました。

「え、いや、別に嫌なわけじゃないですよ?!」
「あー! わかったぞ、ナオキ。恥ずかしいんだろ?」
「何を言うんだよバレンタイン!」

 バレンタインに弄られたナオキは顔を赤くして慌てています。

 大人っぽく見えますが、ナオキはまだ子供を卒業して間もないくらいですから、不安もあったでしょう……なのに、よく頑張りました。

 みんな、成長を感じるのですが……1人様子がおかしいです。

 ヤニムが……その、なんというか、纏う雰囲気が……チャラいんですよね。こんな感じではなかったとおもうんですけど。

 ほら、私を見てにっこり笑いながら近づいてきます。前までは私と話す時に少し緊張している様子だったのに。

「マーガレット様、俺も抱きしめてー!」
「嫌です」
「えー、そんなぁ。冷たいなぁもう!」

 誰ですか? この男。なんか馬鹿王子を思い出してすごい嫌な感じがします。

 ヤニムってこんな感じでしたっけ。確かに少し軽そうなイメージはありましたが、人をイラつかせるほどではなかったはずです。

「……ボスにトドメを指したの、ヤニムなんだ。だから調子に乗ってるんだよ」
 
 なるほど。そう教えてくれるバレンタインの目線は冷ややかです。

 ヤニムは文句を言いながらも、訓練にはしっかり取り組みますし、仕事も真面目にやっています。

 いい人なんですけど……ボスを倒した事で調子に乗っているんですね。

「おかえりヤニム。ボス戦、活躍したんだって?」
「おう、マトン。すごいんだぜ俺ってば!」

 ヤニムはみんなに聞こえるようにボス戦の内容を話し始めました。

「相手はドラゴンだったんだけどな……それはもう凄まじい攻撃の中を、俺は颯爽と駆け抜けた……そして、身体が燃えることも気にせずに、ドラゴンの心臓に剣を突き刺したってわけだ!」

 おお、と村人から感嘆の声があがります。たしかに、その話を聞いていると凄い様に聞こえますが……。

 ヤニムをよく知るものなら違和感を覚えるはずです。

「ヤニムさぁ、それっていつも通りのヤニムじゃない?」
「え? 何言ってんだよマトン」
「いや、だってさ……凄まじい攻撃の中を駆け抜けるって言えば格好いいけど、いつも通り逃げるのが上手かったってことでしょ?」

 ……ですよね。私も話を聞いていて、英雄のような姿のヤニムではなく、いつもみたいに文句を言いながら必死に逃げるヤニムが思い浮かびました。

 ただ、真っ向から否定するのはよくありません。先入観でヤニムの活躍を無かったことにするのはあまりに可愛そうですから。

「いや、けど、燃えながらも突撃したんだぜ?!」
「あら? ヤニム、たしか……あの時あなたは油断して食らったブレスの衝撃でドラゴンに向かって吹っ飛んだんじゃなかったかしらぁ? 私の見間違い?」

 ……スヤリスの告発が入りました。ヤニムはダラダラと冷や汗をかいています。

「そしてたまたま持っていた剣がささっーー」
「あぁぁぁぁぁぁ! なんで言っちゃうんだよスヤリス!」
「調子にのってるからよぉ。あんまり素敵じゃないわよ?」

 スヤリスはうふふと微笑んでいます。なんだかんだで、ヤニムは好かれてますね。

 なんとなく聞いていたみんなもそんなことだろうとは思っていたので、スヤリスとヤニムのやり取りを見て笑い声があがります。

 ただ、ダンジョンを攻略して、たまたまとはいえボスを倒したのは事実。村人からヤニムを褒める声がかけられます。

「え……なんか、照れるな。ありがと、みんな」
「うふふ、そうしてる方がかわいいわよ、ヤニム?」
「うるさいスヤリス!」

 あはは、いじられてますね、ヤニム。

 ちなみに、その裏ではダンジョン攻略の証として広く知られている魔法石の鑑定が行われています。

 鑑定をしてくれているのは、冒険者ギルドの職員です。

 実は、国王に対しての返事の手紙で、冒険者ギルドをこの村にも手配してもらうよう脅し……いえ、お願いしておいたんですよね。その結果、この村にも冒険者ギルドが配置されることが決まり、ダンジョン攻略も大々的に認められることになります。

「……はい、確かに魔法石ですね。しかも、これほどの力を持った魔法石となると、そのダンジョンは少なくともA級以上の力を持っていたんでしょう」

 A級というと、かなり強い力を持ったダンジョンですね。

「A級ダンジョンの攻略など、ここ数十年はありませんでしたから、大きな出来事ですよこれは!」

 冒険者ギルドの人たちが盛り上がっています。数十年なかったことを成し遂げた……これで村の独立に繋がるといいんですけどね。

 王国は、内乱になって王が変われば分かりませんが……今の状態なら認めてくれるはずです。帝国も実力至上主義ですし、ドワーフもいますから、きっと文句は言いません。

 問題は神聖国ですが……あそこは他種族に排他的ですから微妙です。ただ、冒険者ギルドがダンジョン攻略を認めてくれましたから、その事実が後ろ盾となってくれることは間違いないです。

 独立ですか……まだ確定した訳ではありませんが、少しずつ近づいている気がします。

 少し空に上がって、村の様子を見渡してみればわかりますが、最初はアーさんとフェンの3人しかいなかったこの場所も、とても大きくなったものです。

 人も増え、種族も増え、笑顔も増えました。そして、私が守らないといけないものも増えました。
 
 これからもみんなでほのぼの平和に暮らしたいですね。


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