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第2章 眠れる聖女と復讐の連鎖
第21話 準備
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□中立地域 交易商業都市ローゲリオン:《死霊魔術師》一ノ宮和樹
セルフィムリア聖墓を出てから3日後、俺とシャルはアルムスフィア聖王国、ライオネル獣国、アスカティナビア帝国の3国の領土に面した中立地域にある交易商業都市ローゲリオンに来ていた。交易商業都市ローゲリオンは3国の交易の仲介によって莫大な富を保有しており、1国が攻め込めば他の2国に攻め込まれる危険性があるため、ここはどの国も保有しない中立地域となっている。
あえて聖王国から離れた理由としては、聖王国へ向かう前の準備のためである。それに今の俺はブレザーとネクタイは既に売ったため無いものの、Yシャツと制服のズボンはそのままだ。そしてどちらもこの世界には存在しないものなので目立つのだ。
「服も買わないといけないし、食料もヤバいな」
元々、秀一達と合流したら城に戻る予定だったため、それほど食料は持っていない。かと言って、聖王国の領土内で買い物をすれば足がつくため、聖王国から追われる身である俺の身に危険が及ぶ可能性が高まる。そのため聖王国の影響下にないこのローゲリオンに来たのだ。
「それにシャルにも服を買ったほうがいいな」
「えっ。私にもですか?」
「そうだ。街中で俺がそんな薄いワンピース1枚だけ着せた女連れてるの見られたら目立つだろうが」
「そうですね。それでも......ありがとうございます」
俺はシャルからのお礼の言葉に照れくさくなって思わずそっぽを向いた。一応表面上はそれっぽく振る舞ってはいるものの、俺だってつい最近までは普通の高校生だったんだ。あんな美少女にお礼言われて嬉しくないはずがない。
「そういえば和樹さんは私を復讐の道具にすると言っていましたがどう利用されるのでしょうか?」
「そういえばシャル、お前それについて何も聞いてこなかったな。普通そこを聞いてから、俺についてくるか考えるだろ」
「あのときはとにかく必死だったので......。ついうっかり忘れちゃってました」
シャルはまるで悪戯がバレた幼い子供のようにペロッと舌を出す仕草をする。俺はそれを見て顔が赤くなるのを感じた。それをシャルに悟られまいと顔を隠す。
「さっさと買い物を済ませるぞ」
「はい。そうですね」
そうして俺達は服屋に到着した。俺は店内のいろんな服を見ながら、せっかくここは異世界で《死霊魔術師》なんだからそれっぽい服を買おうと考えていた。ちなみにシャルは自分が欲しい服を選んでいる。
「死霊魔術師っぽい服って何だ?」
俺はう~んと唸る。よくあるファンタジーゲームだと勇者や武道家、魔法使いの身に纏う服装というのはテンプレといっていい程に決まっているのだが、死霊魔術師の衣装となるとまったく想像がつかないのだ。
結局、散々悩んだ挙句適当にそれっぽいということで黒い燕尾服とネクタイ、白い薄地の手袋を購入した。適当に選んだつもりだが、おそらく昔厨二病だったときの謎センスが働いているのかもしれない。
自分の服を買った後、シャルの方を見に行くとそこにはお嬢様風とでも言えばいいのだろうか。気品のある、だが少し控えめな白いドレスを着たシャルが立っていた。
「私はこれにしました。和樹さん、どうでしょうか?」
「あ、ああ。いいと思う、ぞ?」
「何で疑問形なんですか......」
シャルは少し不満気にそう言うと、服の会計をしに行った。それにしても元々可愛かったが、あんなに可愛くなるとは......。俺は完全に不覚をとられた。少しはこういうことに過剰反応しないように免疫をつけようと思う程度に俺は反省した。
その後、俺達は翌朝に聖王国へ出発することを決めて宿で休むことにした。俺はその夜、聖王国に復讐するための計画を深夜まで練り続けていた。
セルフィムリア聖墓を出てから3日後、俺とシャルはアルムスフィア聖王国、ライオネル獣国、アスカティナビア帝国の3国の領土に面した中立地域にある交易商業都市ローゲリオンに来ていた。交易商業都市ローゲリオンは3国の交易の仲介によって莫大な富を保有しており、1国が攻め込めば他の2国に攻め込まれる危険性があるため、ここはどの国も保有しない中立地域となっている。
あえて聖王国から離れた理由としては、聖王国へ向かう前の準備のためである。それに今の俺はブレザーとネクタイは既に売ったため無いものの、Yシャツと制服のズボンはそのままだ。そしてどちらもこの世界には存在しないものなので目立つのだ。
「服も買わないといけないし、食料もヤバいな」
元々、秀一達と合流したら城に戻る予定だったため、それほど食料は持っていない。かと言って、聖王国の領土内で買い物をすれば足がつくため、聖王国から追われる身である俺の身に危険が及ぶ可能性が高まる。そのため聖王国の影響下にないこのローゲリオンに来たのだ。
「それにシャルにも服を買ったほうがいいな」
「えっ。私にもですか?」
「そうだ。街中で俺がそんな薄いワンピース1枚だけ着せた女連れてるの見られたら目立つだろうが」
「そうですね。それでも......ありがとうございます」
俺はシャルからのお礼の言葉に照れくさくなって思わずそっぽを向いた。一応表面上はそれっぽく振る舞ってはいるものの、俺だってつい最近までは普通の高校生だったんだ。あんな美少女にお礼言われて嬉しくないはずがない。
「そういえば和樹さんは私を復讐の道具にすると言っていましたがどう利用されるのでしょうか?」
「そういえばシャル、お前それについて何も聞いてこなかったな。普通そこを聞いてから、俺についてくるか考えるだろ」
「あのときはとにかく必死だったので......。ついうっかり忘れちゃってました」
シャルはまるで悪戯がバレた幼い子供のようにペロッと舌を出す仕草をする。俺はそれを見て顔が赤くなるのを感じた。それをシャルに悟られまいと顔を隠す。
「さっさと買い物を済ませるぞ」
「はい。そうですね」
そうして俺達は服屋に到着した。俺は店内のいろんな服を見ながら、せっかくここは異世界で《死霊魔術師》なんだからそれっぽい服を買おうと考えていた。ちなみにシャルは自分が欲しい服を選んでいる。
「死霊魔術師っぽい服って何だ?」
俺はう~んと唸る。よくあるファンタジーゲームだと勇者や武道家、魔法使いの身に纏う服装というのはテンプレといっていい程に決まっているのだが、死霊魔術師の衣装となるとまったく想像がつかないのだ。
結局、散々悩んだ挙句適当にそれっぽいということで黒い燕尾服とネクタイ、白い薄地の手袋を購入した。適当に選んだつもりだが、おそらく昔厨二病だったときの謎センスが働いているのかもしれない。
自分の服を買った後、シャルの方を見に行くとそこにはお嬢様風とでも言えばいいのだろうか。気品のある、だが少し控えめな白いドレスを着たシャルが立っていた。
「私はこれにしました。和樹さん、どうでしょうか?」
「あ、ああ。いいと思う、ぞ?」
「何で疑問形なんですか......」
シャルは少し不満気にそう言うと、服の会計をしに行った。それにしても元々可愛かったが、あんなに可愛くなるとは......。俺は完全に不覚をとられた。少しはこういうことに過剰反応しないように免疫をつけようと思う程度に俺は反省した。
その後、俺達は翌朝に聖王国へ出発することを決めて宿で休むことにした。俺はその夜、聖王国に復讐するための計画を深夜まで練り続けていた。
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