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第1章 復讐の始まり
第19話 動き出す者達
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□アルムスフィア聖王国 レイメイの丘に程近い山中:《???》???
「ガッハッハッハッハ! 俺自らが作り出したグレートマンムートを殺せる奴が人間にいるとはな」
レイメイの丘に程近い山の中からレイメイの丘での戦闘の一部始終を観察していた男、パンデモニウム魔王国の将軍の1人で魔獣軍団を指揮するパンサー型の魔獣人、《魔獣将軍》レグルスは新しいおもちゃを手に入れた子供のように嬉しそうに高笑いする。ライオネル獣国の領土内でグレートマンムートに魔獣化の刻印を刻み込み、レイメイの丘へと放ったのはこの男の仕業である。
「騎士団の主力と召喚されたという勇者を叩き潰すために放ったが、もっと面白いものが見れたわ! 早くあの《死霊魔術師》の子供と一戦交えてみたいものだ」
そう言うとレグルスはもう一度名残惜しそうに和樹を見ると、やがて振り返りその場から姿を消した。
□アルムスフィア聖王国 ウォーデン城:《聖王女》ティファニー=ラム=アルムスフィア
和樹がレイメイの丘で戦闘を始めた頃、ティファニーにはやるべき公務が珍しくその日は無かったため、部屋でのんびりと読書をしながら貴重な休日を謳歌していた。紅茶を入れようとしてふと意識が読書から逸れたとき外、というよりは城内が騒がしくなっていることに気づいた。何事かと思ったティファニーはすぐに部屋の外に待機している侍女を呼ぶ。
「城内がやたらと騒がしいようですけど何かあったのですか?」
本性を隠すために皆の求める王女という皮を被ったティファニーは侍女に問う。
「他の城内の者から聞いた話なのですが、本日の早朝に投獄されていたはずの勇者様である一ノ宮和樹様が宝物庫に侵入し、一部を盗み出し城から逃亡したとのことです」
「はぁっ!?」
「えっ! あの。ティファニー様?」
「っ! 失礼。何でもありませんわ」
突然の知らせに思わず素を出してしまったティファニーはすぐにそれを誤魔化す。まさか和樹様に逃げるだけの気力がまだ残っていたなんて。日常的に痛めつけることで生きる希望を削いだはずなのに。私の大切なお人形になったはずなのに。和樹のような都合のいい人形を失ったという、自分の思い通りにならない現実を前にティファニーは今すぐにでも和樹を嬲りたいという衝動に駆られる。
「お父様に気づかれないように私の親衛隊に和樹様を探すように伝えてください。もし和樹様を見つけたらすぐに私のもとへ連れてきてください」
「わかりました。しかし聖王様に伝えずにこのようなことをしてもよろしいのでしょうか?」
「事が終わり次第、お父様にも報告しますので問題ありませんわ」
ティファニーは侍女に穏やかな微笑みを向ける。ティファニーが侍女に向けた微笑みはあまりに美しく、神々しいほどであった。侍女は思わずグッと息を呑み、暫くの間我を忘れて見ていたがやがてハッと我に返ると、顔を真っ赤にして「失礼しました!」と言って部屋を出て行った。それを見届けた後、少し時間をおいて部屋の周辺に誰もいないことを確認する。そして風魔法で部屋を空気の壁で囲い、外へ音が漏れないようにした後ベッドに飛び乗る。
「何で! 何で! 何で! いつもいつも私の思い通りにならないの!」
ティファニーは心の底から湧き上がる怒りの衝動に身を任せて、枕を何度も殴りつけた。
「足りない。 足りないわ。 こんな枕1つ殴っても何にも収まらないわ!」
やがて腕が疲れたのか、枕を殴ることを止めたティファニーは窓の外の空を眺める。
「あぁ。やはり。やはり。私にはあの方が、愛しくて嬲りたくて堪らないわ! あぁ! 和樹様! 早く私のもとへ戻ってきてくださいね。今度こそあなたを私のお人形にしてあげますわ。アハハハハハハッ」
ティファニーが浮かべたその笑顔はとても美しいものだった。だがその笑顔は先程の神々しさと打って変わり狂気に満ちていた。
「ガッハッハッハッハ! 俺自らが作り出したグレートマンムートを殺せる奴が人間にいるとはな」
レイメイの丘に程近い山の中からレイメイの丘での戦闘の一部始終を観察していた男、パンデモニウム魔王国の将軍の1人で魔獣軍団を指揮するパンサー型の魔獣人、《魔獣将軍》レグルスは新しいおもちゃを手に入れた子供のように嬉しそうに高笑いする。ライオネル獣国の領土内でグレートマンムートに魔獣化の刻印を刻み込み、レイメイの丘へと放ったのはこの男の仕業である。
「騎士団の主力と召喚されたという勇者を叩き潰すために放ったが、もっと面白いものが見れたわ! 早くあの《死霊魔術師》の子供と一戦交えてみたいものだ」
そう言うとレグルスはもう一度名残惜しそうに和樹を見ると、やがて振り返りその場から姿を消した。
□アルムスフィア聖王国 ウォーデン城:《聖王女》ティファニー=ラム=アルムスフィア
和樹がレイメイの丘で戦闘を始めた頃、ティファニーにはやるべき公務が珍しくその日は無かったため、部屋でのんびりと読書をしながら貴重な休日を謳歌していた。紅茶を入れようとしてふと意識が読書から逸れたとき外、というよりは城内が騒がしくなっていることに気づいた。何事かと思ったティファニーはすぐに部屋の外に待機している侍女を呼ぶ。
「城内がやたらと騒がしいようですけど何かあったのですか?」
本性を隠すために皆の求める王女という皮を被ったティファニーは侍女に問う。
「他の城内の者から聞いた話なのですが、本日の早朝に投獄されていたはずの勇者様である一ノ宮和樹様が宝物庫に侵入し、一部を盗み出し城から逃亡したとのことです」
「はぁっ!?」
「えっ! あの。ティファニー様?」
「っ! 失礼。何でもありませんわ」
突然の知らせに思わず素を出してしまったティファニーはすぐにそれを誤魔化す。まさか和樹様に逃げるだけの気力がまだ残っていたなんて。日常的に痛めつけることで生きる希望を削いだはずなのに。私の大切なお人形になったはずなのに。和樹のような都合のいい人形を失ったという、自分の思い通りにならない現実を前にティファニーは今すぐにでも和樹を嬲りたいという衝動に駆られる。
「お父様に気づかれないように私の親衛隊に和樹様を探すように伝えてください。もし和樹様を見つけたらすぐに私のもとへ連れてきてください」
「わかりました。しかし聖王様に伝えずにこのようなことをしてもよろしいのでしょうか?」
「事が終わり次第、お父様にも報告しますので問題ありませんわ」
ティファニーは侍女に穏やかな微笑みを向ける。ティファニーが侍女に向けた微笑みはあまりに美しく、神々しいほどであった。侍女は思わずグッと息を呑み、暫くの間我を忘れて見ていたがやがてハッと我に返ると、顔を真っ赤にして「失礼しました!」と言って部屋を出て行った。それを見届けた後、少し時間をおいて部屋の周辺に誰もいないことを確認する。そして風魔法で部屋を空気の壁で囲い、外へ音が漏れないようにした後ベッドに飛び乗る。
「何で! 何で! 何で! いつもいつも私の思い通りにならないの!」
ティファニーは心の底から湧き上がる怒りの衝動に身を任せて、枕を何度も殴りつけた。
「足りない。 足りないわ。 こんな枕1つ殴っても何にも収まらないわ!」
やがて腕が疲れたのか、枕を殴ることを止めたティファニーは窓の外の空を眺める。
「あぁ。やはり。やはり。私にはあの方が、愛しくて嬲りたくて堪らないわ! あぁ! 和樹様! 早く私のもとへ戻ってきてくださいね。今度こそあなたを私のお人形にしてあげますわ。アハハハハハハッ」
ティファニーが浮かべたその笑顔はとても美しいものだった。だがその笑顔は先程の神々しさと打って変わり狂気に満ちていた。
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