17 / 23
第1章 復讐の始まり
第16話 絶望と復讐
しおりを挟む
□アルムスフィア聖王国 国境付近 レイメイの丘:《死霊魔術師》一ノ宮和樹
俺は歯を食いしばって全力でレイメイの丘を駆け上った。秀一達に早く会いたかった。そのためにウォーデン城を脱走してきたのだ。あのイカれた王女からの毎晩の地獄のような行いにも耐えてきたのだ。きっと生きている。俺はそう思うしかなかった。
「頼む。生きててくれ」
そして、ようやく丘の頂上まで辿り着いた。そこに広がっていたのは、見るだけでどれほどの壮絶な死闘が繰り広げられていたのかがわかる程の闘いの痕跡だった。ここで何があったのかを確認しようと俺は辺りを見回した。すると、高くそびえ立つ大樹の根元に人が横たわっているのが見えた。俺は嫌な予感がしつつもその大樹に近づいた。そして横たわっている人の顔を確認する。
「し、翔吾......なのか? う、うわぁぁぁぁぁぁっ!」
俺は驚きの声を上げながら少し後ろに飛び退いた。なぜなのか。それは翔吾の顔を確認したときに少し目線を下へ向けると翔吾の服が真っ赤に染まっておりおびただしい量の出血があったこと、そしてその体の冷たさから翔吾が随分前に死んでいたことが容易に理解できたからだ。
飛び退いたところで俺は何かに躓き転んでしまう。俺は体を起こして足元に視線を向けた。
「あ、ああ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
俺は我を忘れて発狂した。視線の先にあったのは昴と陽菜、薫子ちゃんだった。いや、正確には「昴と陽菜と薫子ちゃんだった物」だ。服は真っ赤な血で染まり、体は冷たくなっている。少し視線を動かすと聖騎士団の人達の死体もあった。だがそれよりも俺はある人を見つけて大きく目を見開く。大樹の向こう側に勇者の鎧を纏った秀一らしき姿が立っているのが見えたのだ。俺は顔中を涙か鼻水かはもはや判別できない程に濡らしたまま大樹の向こうまで走る。そして俺は後ろからその肩を叩いた。
だが、秀一が振り返って抱きしめてくれると思っていた俺は一瞬にしてその期待を裏切られることになる。肩を叩かれた秀一の体は何の抵抗もなく、まるで置物が倒れるかのように倒れた。
「お、おい! 秀一。大丈夫か?」
俺はしゃがみ込んで秀一の顔を見る。そしてそこで気づいてしまった。秀一も他のみんなと同じように随分前に死んでいたのだ。立ったまま死んでいたため、俺は希望的観測に縋って生きていると勝手に勘違いしたのだ。
「あ、あぁぁぁ。全員死んじまった。こんな糞みたいな世界に転移させられたがばかりにみんな死んだんだ!」
俺の目からまた涙が溢れ出す。そして歯を食いしばって沈みゆく夕日を睨みつける。
「この世界の全てが憎い! なんでみんなが死ななくちゃいけないんだ!」
俺はクラスメートだった"それ"を抱き、顔をくしゃくしゃにして泣き叫んだ。
ある日突然異世界に転移させられ、勇者であると期待されていたみんなが。その期待に応えるために全力で特訓を頑張っていたみんなが、なぜ死ななければならないのかと思った。
泣き叫んでいる俺の脳裏ではみんなとの記憶が流れるように次々と再生されていく。
そしてしばらくの間泣き叫んだ挙句俺は1つの考えにたどり着く。
「この世界がみんなを殺したなら、俺が世界に復讐する! そしてもう誰も悲しむことのない俺の理想郷を築き上げてやる!」
俺の心が復讐心で黒く塗りつぶされていく。俺は死者を冒涜する魔法、そして死者を蘇生する禁忌の魔法『死霊魔術』を行使した。
俺は歯を食いしばって全力でレイメイの丘を駆け上った。秀一達に早く会いたかった。そのためにウォーデン城を脱走してきたのだ。あのイカれた王女からの毎晩の地獄のような行いにも耐えてきたのだ。きっと生きている。俺はそう思うしかなかった。
「頼む。生きててくれ」
そして、ようやく丘の頂上まで辿り着いた。そこに広がっていたのは、見るだけでどれほどの壮絶な死闘が繰り広げられていたのかがわかる程の闘いの痕跡だった。ここで何があったのかを確認しようと俺は辺りを見回した。すると、高くそびえ立つ大樹の根元に人が横たわっているのが見えた。俺は嫌な予感がしつつもその大樹に近づいた。そして横たわっている人の顔を確認する。
「し、翔吾......なのか? う、うわぁぁぁぁぁぁっ!」
俺は驚きの声を上げながら少し後ろに飛び退いた。なぜなのか。それは翔吾の顔を確認したときに少し目線を下へ向けると翔吾の服が真っ赤に染まっておりおびただしい量の出血があったこと、そしてその体の冷たさから翔吾が随分前に死んでいたことが容易に理解できたからだ。
飛び退いたところで俺は何かに躓き転んでしまう。俺は体を起こして足元に視線を向けた。
「あ、ああ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
俺は我を忘れて発狂した。視線の先にあったのは昴と陽菜、薫子ちゃんだった。いや、正確には「昴と陽菜と薫子ちゃんだった物」だ。服は真っ赤な血で染まり、体は冷たくなっている。少し視線を動かすと聖騎士団の人達の死体もあった。だがそれよりも俺はある人を見つけて大きく目を見開く。大樹の向こう側に勇者の鎧を纏った秀一らしき姿が立っているのが見えたのだ。俺は顔中を涙か鼻水かはもはや判別できない程に濡らしたまま大樹の向こうまで走る。そして俺は後ろからその肩を叩いた。
だが、秀一が振り返って抱きしめてくれると思っていた俺は一瞬にしてその期待を裏切られることになる。肩を叩かれた秀一の体は何の抵抗もなく、まるで置物が倒れるかのように倒れた。
「お、おい! 秀一。大丈夫か?」
俺はしゃがみ込んで秀一の顔を見る。そしてそこで気づいてしまった。秀一も他のみんなと同じように随分前に死んでいたのだ。立ったまま死んでいたため、俺は希望的観測に縋って生きていると勝手に勘違いしたのだ。
「あ、あぁぁぁ。全員死んじまった。こんな糞みたいな世界に転移させられたがばかりにみんな死んだんだ!」
俺の目からまた涙が溢れ出す。そして歯を食いしばって沈みゆく夕日を睨みつける。
「この世界の全てが憎い! なんでみんなが死ななくちゃいけないんだ!」
俺はクラスメートだった"それ"を抱き、顔をくしゃくしゃにして泣き叫んだ。
ある日突然異世界に転移させられ、勇者であると期待されていたみんなが。その期待に応えるために全力で特訓を頑張っていたみんなが、なぜ死ななければならないのかと思った。
泣き叫んでいる俺の脳裏ではみんなとの記憶が流れるように次々と再生されていく。
そしてしばらくの間泣き叫んだ挙句俺は1つの考えにたどり着く。
「この世界がみんなを殺したなら、俺が世界に復讐する! そしてもう誰も悲しむことのない俺の理想郷を築き上げてやる!」
俺の心が復讐心で黒く塗りつぶされていく。俺は死者を冒涜する魔法、そして死者を蘇生する禁忌の魔法『死霊魔術』を行使した。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!
京衛武百十
ファンタジー
異世界で何で魔法がやたら発展してるのか、よく分かったわよ。
戦争の為?。違う違う、トイレよトイレ!。魔法があるから、地球の中世ヨーロッパみたいなトイレ事情にならずに済んだらしいのよ。
で、偶然現地で見付けた微生物とそれを操る魔法によって、私、宿角花梨(すくすみかりん)は、立身出世を計ることになったのだった。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。


無能と呼ばれた魔術師の成り上がり!!
春夏秋冬 暦
ファンタジー
主人公である佐藤光は普通の高校生だった。しかし、ある日突然クラスメイトとともに異世界に召喚されてしまう。その世界は職業やスキルで強さが決まっていた。クラスメイトたちは、《勇者》や《賢者》などのなか佐藤は初級職である《魔術師》だった。しかも、スキルもひとつしかなく周りから《無能》と言われた。しかし、そのたったひとつのスキルには、秘密があって…鬼になってしまったり、お姫様にお兄ちゃんと呼ばれたり、ドキドキハラハラな展開が待っている!?

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる