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第1章 復讐の始まり
第16話 絶望と復讐
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□アルムスフィア聖王国 国境付近 レイメイの丘:《死霊魔術師》一ノ宮和樹
俺は歯を食いしばって全力でレイメイの丘を駆け上った。秀一達に早く会いたかった。そのためにウォーデン城を脱走してきたのだ。あのイカれた王女からの毎晩の地獄のような行いにも耐えてきたのだ。きっと生きている。俺はそう思うしかなかった。
「頼む。生きててくれ」
そして、ようやく丘の頂上まで辿り着いた。そこに広がっていたのは、見るだけでどれほどの壮絶な死闘が繰り広げられていたのかがわかる程の闘いの痕跡だった。ここで何があったのかを確認しようと俺は辺りを見回した。すると、高くそびえ立つ大樹の根元に人が横たわっているのが見えた。俺は嫌な予感がしつつもその大樹に近づいた。そして横たわっている人の顔を確認する。
「し、翔吾......なのか? う、うわぁぁぁぁぁぁっ!」
俺は驚きの声を上げながら少し後ろに飛び退いた。なぜなのか。それは翔吾の顔を確認したときに少し目線を下へ向けると翔吾の服が真っ赤に染まっておりおびただしい量の出血があったこと、そしてその体の冷たさから翔吾が随分前に死んでいたことが容易に理解できたからだ。
飛び退いたところで俺は何かに躓き転んでしまう。俺は体を起こして足元に視線を向けた。
「あ、ああ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
俺は我を忘れて発狂した。視線の先にあったのは昴と陽菜、薫子ちゃんだった。いや、正確には「昴と陽菜と薫子ちゃんだった物」だ。服は真っ赤な血で染まり、体は冷たくなっている。少し視線を動かすと聖騎士団の人達の死体もあった。だがそれよりも俺はある人を見つけて大きく目を見開く。大樹の向こう側に勇者の鎧を纏った秀一らしき姿が立っているのが見えたのだ。俺は顔中を涙か鼻水かはもはや判別できない程に濡らしたまま大樹の向こうまで走る。そして俺は後ろからその肩を叩いた。
だが、秀一が振り返って抱きしめてくれると思っていた俺は一瞬にしてその期待を裏切られることになる。肩を叩かれた秀一の体は何の抵抗もなく、まるで置物が倒れるかのように倒れた。
「お、おい! 秀一。大丈夫か?」
俺はしゃがみ込んで秀一の顔を見る。そしてそこで気づいてしまった。秀一も他のみんなと同じように随分前に死んでいたのだ。立ったまま死んでいたため、俺は希望的観測に縋って生きていると勝手に勘違いしたのだ。
「あ、あぁぁぁ。全員死んじまった。こんな糞みたいな世界に転移させられたがばかりにみんな死んだんだ!」
俺の目からまた涙が溢れ出す。そして歯を食いしばって沈みゆく夕日を睨みつける。
「この世界の全てが憎い! なんでみんなが死ななくちゃいけないんだ!」
俺はクラスメートだった"それ"を抱き、顔をくしゃくしゃにして泣き叫んだ。
ある日突然異世界に転移させられ、勇者であると期待されていたみんなが。その期待に応えるために全力で特訓を頑張っていたみんなが、なぜ死ななければならないのかと思った。
泣き叫んでいる俺の脳裏ではみんなとの記憶が流れるように次々と再生されていく。
そしてしばらくの間泣き叫んだ挙句俺は1つの考えにたどり着く。
「この世界がみんなを殺したなら、俺が世界に復讐する! そしてもう誰も悲しむことのない俺の理想郷を築き上げてやる!」
俺の心が復讐心で黒く塗りつぶされていく。俺は死者を冒涜する魔法、そして死者を蘇生する禁忌の魔法『死霊魔術』を行使した。
俺は歯を食いしばって全力でレイメイの丘を駆け上った。秀一達に早く会いたかった。そのためにウォーデン城を脱走してきたのだ。あのイカれた王女からの毎晩の地獄のような行いにも耐えてきたのだ。きっと生きている。俺はそう思うしかなかった。
「頼む。生きててくれ」
そして、ようやく丘の頂上まで辿り着いた。そこに広がっていたのは、見るだけでどれほどの壮絶な死闘が繰り広げられていたのかがわかる程の闘いの痕跡だった。ここで何があったのかを確認しようと俺は辺りを見回した。すると、高くそびえ立つ大樹の根元に人が横たわっているのが見えた。俺は嫌な予感がしつつもその大樹に近づいた。そして横たわっている人の顔を確認する。
「し、翔吾......なのか? う、うわぁぁぁぁぁぁっ!」
俺は驚きの声を上げながら少し後ろに飛び退いた。なぜなのか。それは翔吾の顔を確認したときに少し目線を下へ向けると翔吾の服が真っ赤に染まっておりおびただしい量の出血があったこと、そしてその体の冷たさから翔吾が随分前に死んでいたことが容易に理解できたからだ。
飛び退いたところで俺は何かに躓き転んでしまう。俺は体を起こして足元に視線を向けた。
「あ、ああ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
俺は我を忘れて発狂した。視線の先にあったのは昴と陽菜、薫子ちゃんだった。いや、正確には「昴と陽菜と薫子ちゃんだった物」だ。服は真っ赤な血で染まり、体は冷たくなっている。少し視線を動かすと聖騎士団の人達の死体もあった。だがそれよりも俺はある人を見つけて大きく目を見開く。大樹の向こう側に勇者の鎧を纏った秀一らしき姿が立っているのが見えたのだ。俺は顔中を涙か鼻水かはもはや判別できない程に濡らしたまま大樹の向こうまで走る。そして俺は後ろからその肩を叩いた。
だが、秀一が振り返って抱きしめてくれると思っていた俺は一瞬にしてその期待を裏切られることになる。肩を叩かれた秀一の体は何の抵抗もなく、まるで置物が倒れるかのように倒れた。
「お、おい! 秀一。大丈夫か?」
俺はしゃがみ込んで秀一の顔を見る。そしてそこで気づいてしまった。秀一も他のみんなと同じように随分前に死んでいたのだ。立ったまま死んでいたため、俺は希望的観測に縋って生きていると勝手に勘違いしたのだ。
「あ、あぁぁぁ。全員死んじまった。こんな糞みたいな世界に転移させられたがばかりにみんな死んだんだ!」
俺の目からまた涙が溢れ出す。そして歯を食いしばって沈みゆく夕日を睨みつける。
「この世界の全てが憎い! なんでみんなが死ななくちゃいけないんだ!」
俺はクラスメートだった"それ"を抱き、顔をくしゃくしゃにして泣き叫んだ。
ある日突然異世界に転移させられ、勇者であると期待されていたみんなが。その期待に応えるために全力で特訓を頑張っていたみんなが、なぜ死ななければならないのかと思った。
泣き叫んでいる俺の脳裏ではみんなとの記憶が流れるように次々と再生されていく。
そしてしばらくの間泣き叫んだ挙句俺は1つの考えにたどり着く。
「この世界がみんなを殺したなら、俺が世界に復讐する! そしてもう誰も悲しむことのない俺の理想郷を築き上げてやる!」
俺の心が復讐心で黒く塗りつぶされていく。俺は死者を冒涜する魔法、そして死者を蘇生する禁忌の魔法『死霊魔術』を行使した。
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