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第1章 復讐の始まり
第15話 レイメイの丘へ
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□アルムスフィア聖王国 聖都ウォーデン 市場:《死霊魔術師》一ノ宮和樹
店の青年に案内されて俺は店の奥へと通された。そこにはパイプを咥えた初老の男性が待っていた。おそらくあれが店の主人だろう。
「お前が商談をしたいと言っていた者だな。早速話を聞こう」
俺は着ていたブレザーを脱ぎ、ネクタイを外して店の主人に差し出す。それを受け取った店の主人はブレザーとネクタイを裏返したりしながら観察し始めた。これで高値で買い取ってもらえなかったら、最悪強盗紛いな事をすることも考えたほうがいいかもしれない。
「お兄さん、こいつはどこで手に入れたものだ? こんな上質な素材は今まで見たことがねぇ」
「それは答えることができない」
この服について説明しようとすると異世界という話をややこしくするワードが含まれているので、この質問は適当に受け流した。そして問題は価格だ。
「それでそれをいくらで買い取ってくれるんだ?」
「そうだな......。この素材は貴重なものだと考えられることからして......金貨50枚でどうだ?」
店の主人の言葉に俺は思わず目を見開いて驚いた。まさかブレザーとネクタイで金貨50枚にもなるとは。まあ、ブレザーもネクタイも元の世界では学生ならだいたい着ているものなので俺からすれば貴重性は皆無である。これが金貨50枚で買い取ってもらえるならば願ったり叶ったりだ。
「わかった。では金貨50枚で交渉成立だ」
俺は店の主人と握手を交わし金貨の入った袋を貰うと、乗り合いの馬車を見つけるために急いで店を飛び出した。とっととレイメイの丘へ行ってみんなに会いたい。この気持ちが強いせいか俺は普段の全速力よりも更に速く走ることができている気がした。
乗り合い馬車の駅へ着くとちょうどライオネル獣国行の馬車が出発するところだった。このままだと次の馬車を待たないといけないし、俺には時間も余裕もない。
「そこの馬車止まってくれ! 俺も乗せてくれないか?」
馬車は動きを止めて御者がこちらを向く。
「もう出発の時間は過ぎてるんだ。次の馬車まで待ったらどうだ?」
そう言って馬車は再び動き出そうとする。焦っているこのときにこのやり取りに時間をかけるのは面倒だしなぜだかイライラしてきた。
「運賃は通常の3倍出すから早く乗せろ!」
俺は大声で言い放つ。そのときイライラのせいなのか御者を思い切り睨みつけた。御者はそれを見て俺の怒りを察知したのか体をビクッと震わせた後、馬車を止めて俺を乗せてくれた。そして馬車はライオネル獣国へ。そして俺はその途中にあるアルムスフィア聖王国とライオネル獣国の国境へ、秀一達のいるはずのレイメイの丘へと出発した。
俺はレイメイの丘へ向かう乗り合い馬車の中で他の乗客が話している会話に聞き耳を立てていた。レイメイの丘からみんなで帰ってきたとしても、結局はしばらくはこの世界に滞在しないといけないことが容易に予測できるため手に入りそうな情報は極力手に入れておきたい。
「そういえばライオネル獣国の巫女姫の話聞いたか?」
「おう。最近お披露目になった獣人のお姫様だろ」
俺は気になる話が耳に入ったためそちらに耳を傾ける。ウォーデン城の図書館で読んだ知識として獣人の存在は知っていたが、やはりこういったこの世界の住人から聞く方がリアルタイムの情報であるためかなりおもしろい。それにしても獣人の巫女姫か。一度くらい自分の目で見てみたいものだな。
あれからかなり時間は経ったが、結局獣人の姫の話以降は大した話は何も聞けず、気づけばライオネル獣国のレイメイの丘にかなり近づいて来ていた。今、俺がいるこの場所からでもレイメイの丘にそびえ立つ大樹がよく見えた。だがその大樹の背に夕日が重なっているのを見て、俺は"綺麗"ではなくなぜだか底知れぬ不安を覚えた。そしてレイメイの丘の麓まで来たところで、俺は御者に言った通り通常の3倍の運賃を払い馬車を降りた。
「みんな、きっと無事でいてくれ」
底知れぬ不安を抱いたまま俺はレイメイの丘の頂上を目指して駆け出した。
店の青年に案内されて俺は店の奥へと通された。そこにはパイプを咥えた初老の男性が待っていた。おそらくあれが店の主人だろう。
「お前が商談をしたいと言っていた者だな。早速話を聞こう」
俺は着ていたブレザーを脱ぎ、ネクタイを外して店の主人に差し出す。それを受け取った店の主人はブレザーとネクタイを裏返したりしながら観察し始めた。これで高値で買い取ってもらえなかったら、最悪強盗紛いな事をすることも考えたほうがいいかもしれない。
「お兄さん、こいつはどこで手に入れたものだ? こんな上質な素材は今まで見たことがねぇ」
「それは答えることができない」
この服について説明しようとすると異世界という話をややこしくするワードが含まれているので、この質問は適当に受け流した。そして問題は価格だ。
「それでそれをいくらで買い取ってくれるんだ?」
「そうだな......。この素材は貴重なものだと考えられることからして......金貨50枚でどうだ?」
店の主人の言葉に俺は思わず目を見開いて驚いた。まさかブレザーとネクタイで金貨50枚にもなるとは。まあ、ブレザーもネクタイも元の世界では学生ならだいたい着ているものなので俺からすれば貴重性は皆無である。これが金貨50枚で買い取ってもらえるならば願ったり叶ったりだ。
「わかった。では金貨50枚で交渉成立だ」
俺は店の主人と握手を交わし金貨の入った袋を貰うと、乗り合いの馬車を見つけるために急いで店を飛び出した。とっととレイメイの丘へ行ってみんなに会いたい。この気持ちが強いせいか俺は普段の全速力よりも更に速く走ることができている気がした。
乗り合い馬車の駅へ着くとちょうどライオネル獣国行の馬車が出発するところだった。このままだと次の馬車を待たないといけないし、俺には時間も余裕もない。
「そこの馬車止まってくれ! 俺も乗せてくれないか?」
馬車は動きを止めて御者がこちらを向く。
「もう出発の時間は過ぎてるんだ。次の馬車まで待ったらどうだ?」
そう言って馬車は再び動き出そうとする。焦っているこのときにこのやり取りに時間をかけるのは面倒だしなぜだかイライラしてきた。
「運賃は通常の3倍出すから早く乗せろ!」
俺は大声で言い放つ。そのときイライラのせいなのか御者を思い切り睨みつけた。御者はそれを見て俺の怒りを察知したのか体をビクッと震わせた後、馬車を止めて俺を乗せてくれた。そして馬車はライオネル獣国へ。そして俺はその途中にあるアルムスフィア聖王国とライオネル獣国の国境へ、秀一達のいるはずのレイメイの丘へと出発した。
俺はレイメイの丘へ向かう乗り合い馬車の中で他の乗客が話している会話に聞き耳を立てていた。レイメイの丘からみんなで帰ってきたとしても、結局はしばらくはこの世界に滞在しないといけないことが容易に予測できるため手に入りそうな情報は極力手に入れておきたい。
「そういえばライオネル獣国の巫女姫の話聞いたか?」
「おう。最近お披露目になった獣人のお姫様だろ」
俺は気になる話が耳に入ったためそちらに耳を傾ける。ウォーデン城の図書館で読んだ知識として獣人の存在は知っていたが、やはりこういったこの世界の住人から聞く方がリアルタイムの情報であるためかなりおもしろい。それにしても獣人の巫女姫か。一度くらい自分の目で見てみたいものだな。
あれからかなり時間は経ったが、結局獣人の姫の話以降は大した話は何も聞けず、気づけばライオネル獣国のレイメイの丘にかなり近づいて来ていた。今、俺がいるこの場所からでもレイメイの丘にそびえ立つ大樹がよく見えた。だがその大樹の背に夕日が重なっているのを見て、俺は"綺麗"ではなくなぜだか底知れぬ不安を覚えた。そしてレイメイの丘の麓まで来たところで、俺は御者に言った通り通常の3倍の運賃を払い馬車を降りた。
「みんな、きっと無事でいてくれ」
底知れぬ不安を抱いたまま俺はレイメイの丘の頂上を目指して駆け出した。
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