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第1章 復讐の始まり
第14話 金
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□アルムスフィア聖王国 聖都ウォーデン:《死霊魔術師》一ノ宮和樹
アルムスフィア聖王国の首都である聖都ウォーデンまで逃げてきた俺は商人に会うために市場を目指していた。レイメイの丘へ行きたいのではないのか? と言われれば行きたいのだが、ここで1つ問題が生じてしまった。聖都ウォーデンはアルムスフィア聖王国のほぼ中央に位置している。つまり隣国であるライオネルとの国境であるレイメイの丘までに相当の距離があるわけで、徒歩で向かうにはあまりに時間がかかりすぎるのだ。
なので俺はまず馬車を借りようとした。しかしそのための金は? と考えてから俺は手持ちを確認するが、金など銅貨1枚ですら持っていない。ため息をついてクソったれと思いながらまた街を歩き始める。こういう時に金というものは往々にして1番必要な時に限って手元にないものなのだと実感させられるとは。そう考えると俺は苦虫を噛み潰したようような顔で次は声に出してクソったれと呟く。
宝物庫から宝箱を1つ持ってきてはいるが、そんなものを売ろうものなら大騒ぎになる。そうすると出発できるかどうかすら怪しい状況の完成だ。最悪、騒ぎに駆けつけた聖騎士に見つかって城に連れていかれようものなら死刑確定である。
「はぁ。普通の貨幣も手に入れておけば苦労せずに済んだのにな」
こんなことをぼやいたところで所詮はないものねだりだ。思考を現実に戻して最善を考える。手持ちの宝箱が使えず、他に何も持たない俺が金を手に入れる方法を。考えながら街中を歩いていると思考にのめり込み過ぎたのだろうか、角から出てきた女性に気づかずぶつかって倒れてしまう。
「すみません。考え事をしていたもので。怪我はないですか?」
「いえ。大丈夫です。こちらこそごめんなさい。綺麗な服まで少し汚してしまって」
「これくらい大したことないです」
俺はそこで自分の服装を確認する。俺にとっては当たり前に着ている制服だが、この世界には存在しない珍しい物である。これを売れば金になるのでは? と思いついた俺は思わず口角を上げてニヤリと笑みを浮かべる。そうなると善は急げである。
「申し訳ないけど急ぎの用があるので......」
「はい。お気をつけて」
俺はその場を足早に離れると、この都市で1番大きな市場へ駆け足で向かった。
俺が市場へ着いた頃には既に日が昇り始めて明るくなっており、朝市が開かれているため多くの人と声で賑わっていた。俺は人混みのなかを上手く通り抜けて規模の大きな店を探す。規模が大きければ金もあるだろうし、見る目も確実である可能性が高いと考えたためだ。
それは幸運と言うべきだろう。探し始めてものの数分もしないうちに明らかに他の店よりも大きな店を発見した。建物は見たところ3階建ての高さまであり、品揃えも周囲の他の店より多いように見える。店にはおそらく店番と思われる俺より少し年上くらいの青年が1人だ。
「ある物を売りたいので店の主人を出してくれませんか?」
「えっ? 少々お待ちください」
青年は最初は驚いたようにこちらを見ていたが、すぐに主人を呼びに奥へと駆けて行った。おそらく買うことを目的とした客ばかりなのに、急に物を売りに来る客が来たために驚いたんだろうなと1人で考えながら店前で待つ。城の中で計画を練って脱走してきたのに、こんな序盤から躓いている時点で考えが甘すぎたなと自分の至らなさにうんざりしそうだ。自分の頭の中で計画の反省をしていると店の中から青年が戻ってくる。
「お待たせしました。ご主人様のもとまでご案内します」
どうやら店の中で話をするらしい。まあ、こういった商談を外でするはずないのだが。そして俺は青年の後から店の中へ入って行った。
アルムスフィア聖王国の首都である聖都ウォーデンまで逃げてきた俺は商人に会うために市場を目指していた。レイメイの丘へ行きたいのではないのか? と言われれば行きたいのだが、ここで1つ問題が生じてしまった。聖都ウォーデンはアルムスフィア聖王国のほぼ中央に位置している。つまり隣国であるライオネルとの国境であるレイメイの丘までに相当の距離があるわけで、徒歩で向かうにはあまりに時間がかかりすぎるのだ。
なので俺はまず馬車を借りようとした。しかしそのための金は? と考えてから俺は手持ちを確認するが、金など銅貨1枚ですら持っていない。ため息をついてクソったれと思いながらまた街を歩き始める。こういう時に金というものは往々にして1番必要な時に限って手元にないものなのだと実感させられるとは。そう考えると俺は苦虫を噛み潰したようような顔で次は声に出してクソったれと呟く。
宝物庫から宝箱を1つ持ってきてはいるが、そんなものを売ろうものなら大騒ぎになる。そうすると出発できるかどうかすら怪しい状況の完成だ。最悪、騒ぎに駆けつけた聖騎士に見つかって城に連れていかれようものなら死刑確定である。
「はぁ。普通の貨幣も手に入れておけば苦労せずに済んだのにな」
こんなことをぼやいたところで所詮はないものねだりだ。思考を現実に戻して最善を考える。手持ちの宝箱が使えず、他に何も持たない俺が金を手に入れる方法を。考えながら街中を歩いていると思考にのめり込み過ぎたのだろうか、角から出てきた女性に気づかずぶつかって倒れてしまう。
「すみません。考え事をしていたもので。怪我はないですか?」
「いえ。大丈夫です。こちらこそごめんなさい。綺麗な服まで少し汚してしまって」
「これくらい大したことないです」
俺はそこで自分の服装を確認する。俺にとっては当たり前に着ている制服だが、この世界には存在しない珍しい物である。これを売れば金になるのでは? と思いついた俺は思わず口角を上げてニヤリと笑みを浮かべる。そうなると善は急げである。
「申し訳ないけど急ぎの用があるので......」
「はい。お気をつけて」
俺はその場を足早に離れると、この都市で1番大きな市場へ駆け足で向かった。
俺が市場へ着いた頃には既に日が昇り始めて明るくなっており、朝市が開かれているため多くの人と声で賑わっていた。俺は人混みのなかを上手く通り抜けて規模の大きな店を探す。規模が大きければ金もあるだろうし、見る目も確実である可能性が高いと考えたためだ。
それは幸運と言うべきだろう。探し始めてものの数分もしないうちに明らかに他の店よりも大きな店を発見した。建物は見たところ3階建ての高さまであり、品揃えも周囲の他の店より多いように見える。店にはおそらく店番と思われる俺より少し年上くらいの青年が1人だ。
「ある物を売りたいので店の主人を出してくれませんか?」
「えっ? 少々お待ちください」
青年は最初は驚いたようにこちらを見ていたが、すぐに主人を呼びに奥へと駆けて行った。おそらく買うことを目的とした客ばかりなのに、急に物を売りに来る客が来たために驚いたんだろうなと1人で考えながら店前で待つ。城の中で計画を練って脱走してきたのに、こんな序盤から躓いている時点で考えが甘すぎたなと自分の至らなさにうんざりしそうだ。自分の頭の中で計画の反省をしていると店の中から青年が戻ってくる。
「お待たせしました。ご主人様のもとまでご案内します」
どうやら店の中で話をするらしい。まあ、こういった商談を外でするはずないのだが。そして俺は青年の後から店の中へ入って行った。
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