ロゼリア学園ー時の巫女ー

遊月

文字の大きさ
上 下
27 / 33
ロゼリア学園入学

リュミエット・ハイド

しおりを挟む
朝食を終えた4人は食堂を出ると、校舎まで向かった。
ロゼリア学園の敷地内はかなり広く、寮から校舎までの道はかなりある。
4人は話しながら歩き続け、しばらくすると編入試験の会場であった校舎が見えてきた。
近づくと校舎の入り口に誰かが立っているのが見えた。


「皆様、おはようございます。お待ちしておりました。」


そこには黒い執事服を着たグランがいた。
4人は一斉に「おはようございます」と頭を下げて挨拶を交わした。


「改めまして、ご入学おめでとうございます。皆様はこれからロゼリア学園の生徒として学園生活を送っていただきます。まず初めに、学園長であるリュミエット様へご挨拶に行きますので、ついてきてください。」


グランは説明を終えると「こちらです」と言いながら校舎の中へと入って行き、その後ろを4人は順番について行った。
中に入ると、試験会場の時とは違い極めて普通の校舎内であった。


「リュミエット様って昨日、リオとレオを合格にしてくれた人だよね」

「そうだね」

「運が良かったのね」

「なんだともういっぺん言ってみろ、この陰険女!」

((レオ、今日まともに喋った、、、))


グランの後に続きながら、途中アリエルとレオが口喧嘩を始めた。その2人の喧嘩を止める事なく、後ろで見守っているデイジーとリオはお互い顔を見合わせて苦笑いを浮かべていた。

後ろでそんなやりとりをしていたのを気にせず進み続けたグランは「こちらです。」と言ってとある扉の前で立ち止まった。


「こちらが学園長室です。これから学園長と皆様でお話をしていただきます。」

「話?なんの?」


レオの質問に対して「それは学園長に会えばわかります。」と言って扉をノックした。


「はい。」

「グランです。編入生様をお連れいたしました。」

「あぁ、そうかい。入っていいよ。」


部屋の中から返事が聞こえるとグランは「失礼します。」と扉を開け4人を中へ通した。
中に入るときちんと整理整頓された部屋の周りは、端から端までぎっしりと詰まった本棚があり部屋の奥には大きな机に向かって座っている人物がいた。


「よく来てくれたね。待っていたよ。」

「!!!」

ふふッと笑いかける姿は中性的な顔立ちで、そこにいる誰もが目を奪われていた。
ただ1人、デイジーを除いて。


「グラン、連れてきてくれてありがとう。」

「とんでもございません。皆様、こちらが学園長のリュミエット様です。1人ずつご挨拶を。」

「アリエル・スキューマです」

「リオ・イグトルスです」

「レオ・イグトルス」

「、、、」


1人ずつ名乗っていく中、デイジーだけは黙ってリュミエットを見つめているだけだった。


「、、、デイジー?」

「あ、ご、ごめんなさい。えっと、デイジー・クラルです」


リオの声にハッと我に返ったデイジーは慌てて名乗るとリュミエットは優しい顔で頷いて聞いていた。


「みんな、自己紹介ありがとう。僕は学園長のリュミエット・ハイドだよ。昨日の試験モニターで言ったけど、直接会うのは初めてだからね。みんな、改めて入学おめでとう。」


リュミエットの言葉に4人は背筋を伸ばして「ありがとうございます」と答えた。
緊張して硬くなっているのか、そんな彼らにリュミエットは「そんなに緊張しなくていいよ、リラックスして。」と微笑みながら声をかけた。


「君たちは今日から本格的にロゼリア学園の生徒として過ごしてもらうことになるよ。ここではレイズを学び、それを活かす事を目的として校外活動の一環である『学園ギルド』というクラスがあるんだ。」

「ギルド?」

「ギルドは依頼をこなして報酬を受け取る仕事の組織。街にもあるでしょ。それと同じようにロゼリア学園ギルドも色々なところからの依頼をこなす特別クラスの事よ」

「さすが君はよく知っているね、アリエル」

「なんでそんなの知ってんだ?」

「別になんでもいいでしょ」


レオの質問にそっけない態度で答えると、レオは少しイラついたような顔でアリエルを睨んでいる。


「それで君たちも入学したのだから是非、その学園ギルドに入ってほしいんだ。学園ギルドは結構あるからそこに加入するのもいいし、『ギルドマスター』と『ギルドリーダー』がいれば新しい学園ギルドを自分で作る事もできるよ。」

「この学園ではギルドに入ることが絶対条件ですか?」

「普通はそんな事はないんだけど、君たちには少し特殊なお願いがあって入学してもらったんだ。」

「特殊なお願い?」


リオが聞くとそれまで優しい顔で話をしていたリュミエットの顔つきが変わり、真剣な目で4人を見つめた。


「君たちは『ディリオン』という組織を知っているかな。」

「ディ、ディリオン、、、?」

「大きな闇ギルドを率いる凶悪な組織だよ。レイズを使って悪さをする。泥棒や傷害、時には殺人をするのも躊躇しないような危ない組織。」

「「「「、、、」」」」

「このベルベット王国では昔『ディリティリオン』と呼ばれる巨大な蛇の魔物が世界を危機に陥れた伝説があってね。その厄災の元凶がディリオンなんだ。」

「その伝説って再生の女神の?」


リオが質問するとリュミエットは驚いた顔を見せ「よく知っているね」と笑って見せた。


「試験を受ける前に馭者さんが教えてくれました。でも、そのディリオンの事じゃなくて再生の女神が一頭の龍と一緒に魔物を鎮めたって」

「そう。実はこのロゼリア学園の旧校舎裏に大樹があるんだ。その木の下に再生の女神が鎮めた魔物『ディリティリオン』が埋まっている。」

「「「「!!!!」」」」


リュミエットの言葉に4人は背筋を凍らせた。
厄災の魔物ディリティリオンが眠っているというのはとても衝撃的だった。


「って言われてるだけね。」

「はぁ?」

「僕も実際に見たわけでもないし、厄災が起きたって言われているときまだぼく生まれてないからね。その伝説を守って僕の『結界』のレイズで大樹を隠しているからロゼリア学園の生徒も実際に見た人は少ないと思うよ。」


真剣な眼差しから一変し、急にラフな話し方になり戸惑い始めた。


「そ、それでそのディリオンがどうしたんですか」

「ちょっと小耳に挟んだ噂なんだけどね、ディリオンがまた良からぬ動きを見せているみたいなんだよね。」

「良くない動きってどんなだ?」

「ディリオンの闇ギルドがいくつか犯罪行為をしている話が最近増えているんだ。闇ギルドの活動が活発になっているのはディリオンが関わっていると思って間違い無いだろうからね。」

「そんな事、知らなかった、、、」


リュミエットからの話を聞いたデイジーが不安そうな表情を浮かべて俯いていた。
隣に立っているアリエルはデイジーに気づくと肩に触れて落ち着かせた。


「それでこんな話をした後にいうのもなんだけど、君たちにはそんなディリオンと戦ってほしいんだ。」

「「「「、、、は?/え?」」」」

「どうしたの?」


リュミエットの発言に4人は口をポカンと開けて呆然としていた。


「いやいや、それが本当ならやばい奴らなんだろ!?なんで入学したてのオレらがそんなやばい奴らと戦うんだよ!」

「そうですね。僕たちは危険を犯しに入学した訳じゃありませんから」

「確かにいきなり言われて戸惑うのもわかるけど、正直ロゼリア学園の編入は通常ならありえない事なんだよ。」

「というと?」

「ロゼリア学園はそもそも1年に一度開かれる試験しか生徒を集めない。しかもその1回で入学できる生徒はほとんどいない。だから、今回開いた編入試験は珍しいんだよ。」

「な、何が言いてーんだよ」


レオの戸惑った様子の質問にリュミエットはまた真剣な目で見つめると静かに口を開いた。


「今回の編入試験はディリオンとの戦いができる生徒かを見極めていたんだ。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ムーンショットを止めろ!

白い月
ファンタジー
 火明星(ほあかりぼし)に他の星からの進軍と捉えられる程の転生者(ムーンショットをした人)が舞い降りた。  転生者を食い止めるためミハエル=シュピーゲルや水鏡冬華他は、転生者が湧きてでいる遺跡に向かう。  が、時々恋愛模様どしゃ降りになるのは誰にも分からない。  地球から遠く離れた火明星(ほあかりぼし)。電気ではなく魔導製品が発達した星。魔導のインターネットすら整備されている。そんな星の一幕である。

先生、って呼ばないで!

藍川 東
ファンタジー
「英雄」とはなんなのか。 「英雄」を育てた先生とはどんな存在なのか。  辺境の村で子どもたちの「先生」をしてるルディオは、かつて「英雄ルカス」とその仲間の「先生」でもあった。  英雄たちによって魔物の脅威が払われた今、「英雄」にされた教え子たちが会いに来たとき、かつての戦いの思い出が読みがる。  年端もいかない子どもたちを、「英雄」として戦わせているとき、大人たちは何をしていたのか。  「英雄」と讃え奉ることは体の良い「生贄」ではないのかーーー  「英雄」の子どもたちと、それを取り巻く様々な思惑を持った大人。  その一員であることを自覚しながら、大人として、「先生」として、ちょっとはマシなことをしていこうとする自称「平凡な先生」主人公ルディオの話。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

転生してギルドの社畜になったけど、S級冒険者の女辺境伯にスカウトされたので退職して領地開拓します。今更戻って来いって言われてももう婿です

途上の土
ファンタジー
『ブラック企業の社畜」ならぬ『ブラックギルドのギル畜』 ハルトはふとしたきっかけで前世の記憶を取り戻す。  ギルドにこき使われ、碌に評価もされず、虐げられる毎日に必死に耐えていたが、憧れのS 級冒険者マリアに逆プロポーズされ、ハルトは寿退社(?)することに。  前世の記憶と鑑定チートを頼りにハルトは領地開拓に動き出す。  ハルトはただの官僚としてスカウトされただけと思っていたのに、いきなり両親に紹介されて——  一方、ハルトが抜けて彼の仕事をカバーできる者がおらず冒険者ギルドは大慌て。ハルトを脅して戻って来させようとするが——  ハルトの笑顔が人々を動かし、それが発展に繋がっていく。  色々問題はあるけれど、きっと大丈夫! だって、うちの妻、人類最強ですから! ※中世ヨーロッパの村落、都市、制度等を参考にしておりますが、当然そのまんまではないので、史実とは差異があります。ご了承ください ※カクヨムにも掲載しています。現在【異世界ファンタジー週間18位】

処理中です...