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69話

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「エリカがそう言うなら信じたい。だが、俺は生徒会長として真偽を調査しなければならない。キャロライン・エイルは階段の最上段から落とされたんだ。打ちどころが悪ければ、死んでいてもおかしくはなかった。もし君が犯人にされてしまったら……誰でもいい、廊下ですれ違ったり、他の人物を見たとかその場に居た証拠になる事を覚えていないか?思い出してくれ!」

「……あのー、お昼休みは晴れてる日は中庭で同じクラスのクロード・ヘルブラムと一緒に食べていて、昨日も一緒でした」

 背に腹は代えられない。私は正直に話したが、とても怯えていた。私が犯人になるようにこの世界がなっているんじゃないかって。どうしよう、ドッペルゲンガーだったら?神の御業だったら?悪い考えが浮かぶたび、不安が募っていった。

「ジーク、クロード・ヘルブラ厶を連れてこい。あとエリカの目撃証言者も」

「わかった」

 ジークは駆けて行った。私はジークの出ていったドアを見つめ続けていた。

「制服が汚れる…よ」

 クリフ様は私の腕を掴んで私の机の備え付けの椅子に座らせた。失望したんじゃないか?蔑んでんじゃないか?と思ったら、クリフ様の顔を見るのが怖くて、俯いたまま礼を述べた。
 キャロルは私がやったと思っているのかな。どうしよう、怖くて怖くて堪らない。どうしてこうなったのかな?何が悪かったんだろうか?考えども、わからない。

 ーーカチャ

 私の机にティーカップが置かれた。少しだけ顔を上げた。キャロルは松葉杖を付きながら、クリフ様にも紅茶を配っていた。アルトが横で手伝っている。緊張で乾いた喉を潤す。緊張して強張った体から力が抜けて、リラックス出来た。

「ありがとう」小さな声を絞り出した。

「どういたしまして」

 ーードアが開いて、クロードとカロリーナを連れてジークが帰ってきた。私はカロリーナを見て固まった。背中に嫌な汗が一筋流れた。クリフ様に促されて、クロードとカロリーナはソファに腰掛けた。

「キャロライン・エイル、階段から落ちたときの状況を話してくれ」

「昨日のお昼休みの事です。私は2階の生徒会室に向かう途中、3階から東側の階段を降りようと足をかけた瞬間突き落とされました。なんとか顔を上げて見れば、プラチナブロンドの学院の制服を着た人が去る後ろ姿を見ました。エリカ様と髪の長さも背格好も酷似しておりましたが、顔は見えず彼女だと断言できません」

 私達の教室は3階にあって、階段は東と西に各一個づつあり、生徒会室は2階だ。

「時間は?休み時間が始まって直ぐか?」

「休み時間が始まって、5分ぐらい経った後でした」

「わかった。次はカロリーナ・ホルン、話してくれ」

「私は2階から3階の教室に戻るため、階段を登っておりました。叫び声が上の方から聞こえたので、慌てて階段を登りました。するとキャロラインさんが階段の踊り場で倒れておりました。階段の上から走り去るプラチナブロンドの女性が見えました。私が見たのは僅かですので、背格好までは判断できませんでした。だからエリカさんかどうかわかりかねます」

「エリカ・ノヴァはその時間どうしてたんだ?」

「休み時間が終わってからすぐ、中庭に向かいました。着くと既にクロード様がいて、それから昼休みが終わる直前まで一緒に居ました。そんなことしてないんです。そこには行ってないんです。中庭に行くのは西階段を使ってましたから……信じてください」

 冷静になんてなれない。

「わかったから。では、クロード・ヘルブラム彼女が言った事が事実か答えてくれ」

 私はクロードを見た。彼と目が合うと“大丈夫だ”とでも言いたげに頷いた。少しだけ手の震えが治まった。

「エリカ様の仰る通りでございます。ただ、人目の付きにくい場所なので他の目撃者は居ないと思います」

 中庭はL字の校舎と講堂に挟まれる形で存在する。校舎の影になり日当たりはあまり良くないので人気がなく、人通りはない。人通りがあるのは隣接している校舎と講堂を繋ぐ渡り廊下だけだ。私達の座るベンチは気が繁っていて、校舎の窓から見えない。

「そうかーー」

 ーーバンッ!

 突然大きな音がして、ドアが開いた。ドアの先にはプラチナブロンドの鬘を持った元取り巻きで現カロリーナの取り巻きが立っていた。
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