72 / 111
67話
しおりを挟む
手を引かれて洞窟を出ると、外は薄暗くなっていた。森を抜けて湖畔に出ると、空は茜色に染まっていた。
「手……離してください。もう、大丈夫です。そんなに優しくされてしまうと、勘違いされちゃいそうですね」
クリフ様は振り返って、困ったように笑う私を真摯な表情で見つめた。
「勘違いしていいよ。俺は君が好きだから、優しくしたいんだ」
胸が射抜かれたような衝撃を感じた。なんで?どうして?といろんな感情が爆発したが、口から出た声は低く、冷静さを伴っていた。
「聞きたくなかった……。冷静に考えて見ても私達に未来なんて無いわ。だって、私達は婚約しないと書面に残してるし、王妃様の承認もとってるわ。これから婚約するとしても茨の道だと思うわ」
「そんなの俺がどうにかするよ。エリカが隣にいてくれるだけで歴代の賢王にさえなれる気がするんだ」
「そんなの一瞬の気の迷いよ。いずれ心変わりするわ」
私は胸が痛んだが、彼を置いてあるき出すと、手を捕まれてくださいね木と彼の両腕に囚われた。
「好きだ、好きだ、好きだ!こんな風に誰かを想うのはエリカが初めてだ。どうしたら俺の隣で笑ってくれるんだ?」
切なそうに顔を歪めて、問うたクリフ様に胸が痛くて痛くて崩折れそうだ。ゲームも体裁も関係ない、お互いがただのクリフとエリカだったら……なんてそんなこと考えても無意味だ!
「もう、やめてよ!だったら皇子辞めてよ。無理でしょう?だから私も無理なの」
もう限界だった私は叫んだ。クリフ様は煩悶した表情を浮かべた。
「……済まなかった。もう、しないし言わないから許してくれ……どうか……はぁー、どうかこれからも今まで通り接してほしい」
彼は笑った。いつもの様に。
好きな人に告白された。天変地異の大事件。平然となんて出来ない。でも……
「努力するわ」
貴方がそうするなら。
「ありがとう」
私達は俯いたまま、無言で王城まで歩いた。
翌週、生徒会を辞めた。殿下に伝えればまた彼は申し訳無いなさそうに謝っていた。胸に残ったのは苦くてとっても苦くて……涙が出そうなぐらい苦しい想いだけ。
「恋なんてするもんじゃないわ」
私の呟いた言葉は、雨の音にかき消されて誰にも聞こえず消えていった。雨の雫は一昼夜止むことは無かった。
「手……離してください。もう、大丈夫です。そんなに優しくされてしまうと、勘違いされちゃいそうですね」
クリフ様は振り返って、困ったように笑う私を真摯な表情で見つめた。
「勘違いしていいよ。俺は君が好きだから、優しくしたいんだ」
胸が射抜かれたような衝撃を感じた。なんで?どうして?といろんな感情が爆発したが、口から出た声は低く、冷静さを伴っていた。
「聞きたくなかった……。冷静に考えて見ても私達に未来なんて無いわ。だって、私達は婚約しないと書面に残してるし、王妃様の承認もとってるわ。これから婚約するとしても茨の道だと思うわ」
「そんなの俺がどうにかするよ。エリカが隣にいてくれるだけで歴代の賢王にさえなれる気がするんだ」
「そんなの一瞬の気の迷いよ。いずれ心変わりするわ」
私は胸が痛んだが、彼を置いてあるき出すと、手を捕まれてくださいね木と彼の両腕に囚われた。
「好きだ、好きだ、好きだ!こんな風に誰かを想うのはエリカが初めてだ。どうしたら俺の隣で笑ってくれるんだ?」
切なそうに顔を歪めて、問うたクリフ様に胸が痛くて痛くて崩折れそうだ。ゲームも体裁も関係ない、お互いがただのクリフとエリカだったら……なんてそんなこと考えても無意味だ!
「もう、やめてよ!だったら皇子辞めてよ。無理でしょう?だから私も無理なの」
もう限界だった私は叫んだ。クリフ様は煩悶した表情を浮かべた。
「……済まなかった。もう、しないし言わないから許してくれ……どうか……はぁー、どうかこれからも今まで通り接してほしい」
彼は笑った。いつもの様に。
好きな人に告白された。天変地異の大事件。平然となんて出来ない。でも……
「努力するわ」
貴方がそうするなら。
「ありがとう」
私達は俯いたまま、無言で王城まで歩いた。
翌週、生徒会を辞めた。殿下に伝えればまた彼は申し訳無いなさそうに謝っていた。胸に残ったのは苦くてとっても苦くて……涙が出そうなぐらい苦しい想いだけ。
「恋なんてするもんじゃないわ」
私の呟いた言葉は、雨の音にかき消されて誰にも聞こえず消えていった。雨の雫は一昼夜止むことは無かった。
0
お気に入りに追加
1,526
あなたにおすすめの小説
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?
曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」
エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。
最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。
(王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様)
しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……?
小説家になろう様でも更新中
使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後
有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。
だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。
それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。
王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!?
けれど、そこには……。
※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる