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65話

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 学校に行くと今まで恐れをなして、遠巻きに見ていたクラスの皆(カロリーナ達以外)が心配して声をかけてくれた。収穫祭でクラスメイトと距離が縮まったみたいだ。人望が厚いとまではいかなくても、怖くないとわかってくれたみたいだ。真面目に授業を受けていると、授業終了の鐘が鳴り、お昼休みなった。
 あー、お腹空いたー。今日のクロードの特製ランチは何かなー。考えるだけで、唾液の分泌が増える。楽しみにしていた私の足取りは軽い。
 あっ……!クリ…フ様。廊下の先に彼の目立つ金髪を瞬時に見つけた私は、壁に隠れた。なんだか物悲しさを感じた。極力会いたくなかった。生徒会は想像よりずっと楽しくて居心地がよかったけど、辞めようと思う。それを考えると少し胸が痛むのはきっと馴染んてしまったからで、クリフ様と離れ難い訳じゃない。
 とぼとぼ歩いて、中庭に着くとクロードが先にベンチに座って待っていた。空は鰯雲が掛かっていて、秋の訪れを告げていたが、まだまだ気温は高く暑い。

 今日のメニューはカツサンドだ。私が教えました。クロードの働くパン屋さんで出したら、たちまち人気メニューになったらしい。いつもクロードにはお世話になってるからね、新作メニューを考えていたクロードに教えたんだよね。これくらい役に立たなくちゃ。
 甘辛ソースとマヨネーズが美味い……けど…いつもより美味しく感じない。ほら、恋なんてろくでもないじゃない……。こんなの想像してたのと違う!誰だ、恋をすると”世界が色づく”なんて言った奴。嘘つきだ……。正解は恋をするとモノクロになるだと思う。

「どうしたんですか……?」

 いけない、クロードに心配かけちゃう。

「まだまだ、暑くて溶けそう。元気が出ないよぅ~」

「もうすぐで、過ごしやすい季節になりますよ」

 誤魔化せたのか、誤魔化されて貰えたのか……。クロードは深くしつこく追求してこないから、前世の秘密を抱えてる私には有り難い。

「そうだね……」

 秋には、また乙女ゲームイベントがある。クリフ様の誕生日があり、18歳になって成人となったクリフ様は“立太子の儀”が行われる。ゲーム・・・では基本的には婚約者である私が一緒に出席する事になっていて、ヒロインの好感度が高いとヒロインが付き添う形になっていたけど……好感度に関係なくキャロルが出席する事は無いと思う。それは、キャロルが平民だから。常識的に考えて婚約者でもない平民が付き添いなんてもってのほかだし、出席すら叶わない。所詮はゲームで現実とは違うということなのだろうか。
 そういえば誕生日プレゼントあげなきゃダメかな。でも私も貰ってないし、いっぱい貰いそうだからあげなくても大丈夫だよね。あぁ、でも……生徒会の皆があげてるのに私だけあげないと気まずいかな。それまでにやめないと。でも、確実に辞められる相応しい理由が思い浮かばないよ。あぁ、もう何も考えたくない。私は終わりの鐘鳴るまで、クロード二人、黙って鰯の大群が泳いでいる空を見上げた。




 無情にも時間は過ぎていき、生徒会室に行く時間になった。ドアを開けると生徒会室には誰も居らず、胸を撫で下ろした。

 ――――ガチャ。

 ドアノブを回す音に喫驚したが、緊張しながらドア見ると桃色の髪見えてホッとした。

「エリカ様、ご加減いかがですか?。」

「おかげさまで、もうすっかり元気になりました。クッキーも美味しかったです。あれ、お膝どうしたんですか?」

 キャロルの両膝にはガーゼが充てられている。

「転んでしまったんです」

 綺麗な桃色がかった肌色のキャロルのお膝が!

「傷、残んないと良いですね」

「このくらいへっちゃらですよ」

「アルトが大変そう……」

「擦り傷ぐらいここまでしなくても良いのに、アルト様が手当てしてくださって、ガーゼ剥がすのが辛そうです」

 傷口にガーゼがくっつくと剥がすの痛いんだよね。キャロルは苦笑いした。

 再度、ドアが開き再び緊張が走る。

「エリー、もう良いのか?」

 ジークは生徒会室に来て、開口一番に言った。

「大丈夫です。お花ありがとうございました」

「あまり風邪をひかないエリーが、寝込むなんてよっぽどじゃないのか?今日は帰って休んだら?」

 クリフ様に会いたくない私は、ジークの私を甘やかす提案に乗りそうになるが断った。

 三度目の正直。とうとうクリフ様がアルトを連れてやってきた。彼は私を見て、歯を出して陽気に笑った。私は胸が切なさに心臓がぎゅっと縮んだ。

「元気になったみたいだな」

「はい、おかげさまですっかり治りました。クリフ様から貰ったフルーツ美味しかったです」

 私は、テンプレートの笑顔を浮かべた。

「元気になったら……何処行かないか?」

「何をしに行くんですか?」

 ”二人で”ですか?”なんておっかなくて聞けやしない。

「親睦も兼ねて王城に来ないか?」

「旧市街にある王城ですか?」

「あぁ、あそこの湖の奥には洞窟があって、中に音の振動で光る水晶があるんだ。……見に行かないか?」

 …これって“救ヴァル”にあったキャロルとデートする洞窟だよね。びっくりしすぎて、なんの言葉も思い浮かばなくて絶句するしかない。

「……えっと、皆で行かないか?」

「俺は、別に良いけど……」

 ジークはクリフ様をちらりと見た。

「私はキャロル行くなら行く」

「……私も構いませんよ」

「皆行くなら、エリカも来るよな?」

 小心者の私は断れなかった。
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