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56話

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 苦しくて……どうしたらいいかわからない。日に日に大きくなるエバンへの気持ち。そばにいるのに忘れられそうもない。だからせめて……

「アリスに尽くしたいの……」
「アルちゃん……嬉しい、かわいい……だいすきすぎる…………」

 身悶えるアリスも可愛い。アリスの方が可愛すぎる。
 ゲームでは私はアリスを攻めて彼がよろこんでいたから……う゛ぅ、自信ないけどやってみよう。大丈夫、ゲームで見たのを参考にすれば。頑張れ、私。おー!

 アリスに跨って見下ろし、上からキスを落とした。恥ずかしすぎるけど、赤面しないように頑張ったが、耳が熱くなる。アリスの頬に手を添え、誰にも犯されたことの無いようなヴァージンな桜色の唇を割って舌を入れ、目を閉じた。アリスがしてくれたように模倣して口内を舌先でなぞる。

「んっ……やあっ」

 アリスの手が腰をしなやかに触っている。アリスを見れば目があった。したり顔ならぬしたり目をしていた。口を離して、睨みつけ手を腰から外した。

「もうっ、めっ」
「アルちゃんがそばにいるなら、触りたくなるのが本能だもん。だって僕、ずっとずーっとこうしたかったのに我慢してたんだよ」

 小首を傾げてとっても可愛いけど、ちょっとショックだ。私に対してそんな感情をかなり前から抱いてたなんて。アリスの純粋無垢な天使像にヒビが入った。ショックだけれども、そこも好きだなんて思う私は相当恋の病に侵されている。

「だって、気になって集中できないわ。アリスにも気持ち良くなってほしいのに……もうしてあげないわよ?」
「アルちゃんごめんなさい」
「わかったなら手はお膝よ」
「はーい」

 やっぱりアリスはいい子ね。今度は耳を責めてみた。やらしい音がするようにクチュクチュと舐める。それと同時のクラバットとアリスのシャツのボタンを外した。
 今度は首筋にキスを落としてなめ上げた。

「んっ……アルちゃん、エッチい」

――うっわーーー!!! アリスが可愛い。最高すぎる! 顔を赤くして恥ずかしそうに感じてるアリスが、それでも天使すぎる。神様、アリスを創ってくれてありがとうございます!

 シャツを脱がすと喫驚した。その美しさに。
 肌は月光に照らされ薄っすらと発光しているように見えるし、体は、まだ青年と少年の間の華奢な骨格に繊細なバランスで筋肉が載っている。神が創った最高傑作ではないかと本気で思った。神は実在すると、神様の存在を身近に感じた。   
 それと同時に背徳な劣情が湧く。この肌に私が触れた証を残したいと、いっそ歯でも立てようかと思ったが、然しこの芸術的な体に傷を残すのも躊躇われる。なんどもキスして吸い付いて、花びらみたいに赤く色づく。この跡は私が付けたのだと、彼は私のものだと喜色が胸に湧く。
 他の男性も好きなのに、罪悪感があるけどアリスをもう手放せない。アリス目が合う。私は独占欲丸出しの目をしているかもしれない。それでもアリスが嬉しそうに笑うから。愛しさがこみ上げて、罪悪感を覆い隠す。もう、どうでもいい。今は彼だけ愛でたい。舌が一つになっちゃうぐらい激しく舌を絡めて、唾液を流し込んだ。嬉しそうにアリスが飲み込む。私のを飲んでくれて嬉しかった。

「おいしい……もっとちょうだい」

 今度はアリスから、舌を絡めて、私の舌にむしゃぶりついた。それと同時にアリスが違和感を感じないほど自然に薄布で出来たナイトドレスを脱がす。頭がぼぼーっとする。体がゾクゾクとした。そして彼の上に座り込んだ。熱く滾った硬いものが太ももあたった瞬間、秘所を濡らした。アリスの熱杭で与えられた快楽を思い出したからだ。
 ショーツ一枚越し……気づかれたらと思うと恥ずかしくて、もうだめだった。赤面してしまった。顔を手で覆う。

「どうしたの?」

 心配そうにアリスが顔を覗き込む。

「急に恥ずかしくなって……」
「俺、嬉しかったよ。俺のこと求めてくれて……すごく満たさる思いだった」

 彼が嬉しくて安堵するような笑顔を見せる。心の底からの笑顔。見本みたいな喜色満面。結婚式で花嫁がするような顔をするから、また罪悪感が顔を出して目に涙が滲み出る。

「アリス……好き、好きなの」
「俺も大好きだよ」

 罪悪感を覆い隠すようにか、それともアリスだけ好きになるよう暗示でも掛けるためか何度も何度も好きと呟いた。エバンのことは忘れようと思う。心の奥に押しやった。

「あんっ…………」
「すっごい濡れてる」

――バレてる

「ちっ違うの」

 何が違うかわかりもしないのに、咄嗟に嘯いてうそぶいて、羞恥に喘ぎながら再び手で顔を覆う。

「何が違うの? キスだけこんなに興奮したんでしょ」
「だってアリスを見ただけでも勝手になっちゃうんだもん」

 淫乱ビッチだと思われたら、どうしよう……。なんて思っていたら、アリスが抱きしめた。

「ん゛ん゛~~っ、かわいい!! 食べたい」

 回転して組敷かれ、キスの嵐を受ける。

「えいっ!」

 アリスの脇腹を擽っれば、アリスは笑い声を上げて身を捩った。

「あっははは~っ!!! ん゛やめてぇ」
「今日は私がしてあげるって言ったでしょ!?」

 アリスは脇腹が弱点だ。アリスを転がして、今度は私が馬乗りになる。それでも擽る手は緩めない。

「ひ~~っ! 降参する。から、やっめて……」
「私にいいようにされちゃってくださいね」

――やっぱりアリスの体は綺麗だわ。きっと計算したら、黄金比にでもなっているのではないかしら。ゲームとは性格も結構違うし、やっぱり本物の天使ではないかしら……

 美しく白く滑らかな肌に指を這わす。先程付けた花びらの様な跡を親指の腹で撫でる。

――私の可愛い可愛い愛しいアリス

 一つ、ニつ、三つ…………と跡を残していく。だんだんと増えていく。それがアリスが私のものになった証みたいだと思った。

 嬉しかった。それは愛か、それとも独占欲が満たされたからか……多幸感が胸を包むんだ。とても幸せな気分になった。
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