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45.5話 それを外してください
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殆ど脳内だけで書いてるので、書き忘れてました。
申し訳ございません。
ーーーーーーーーーーーーー
これから買い物に行く予定で、今エバンと馬車もう何度目かのやり取りだろうか……。
「それ外してください。外出中だけでも」
「いえ、これはあなたの犬という証なのです。これは私の誓いであり、忠誠心であり、誇りでもあります。私の全てはアルセナ姫のものです」
そうエバンはドヤ顔で言った。まるでいらない棒切れを持ってきた犬が、いいことをしたとでも言いたげに、褒められるのを待っているみたいに。
その様子が私を更に苛立たせる。
私はまともな令嬢だ思う、たぶん。それなのにそんな凶器みたいなビスが付いた首輪を着けさせているなんて我慢ならない。そう、私が許せるのは邸宅内の話で、外出先でまで首輪つけさせるつもりは無かった。エバンの憧れの叔父夫婦も外ではきちんとさせているのだし、私達もそれに倣うべきだと言ってもエバンは首を縦に振らなかった。
馬車が止まり、御者が目的地の到着を報せた。
「ここで待っていて」
エバンは私が立ち上がるより先に馬車を降り、手を差し出したが、彼を睨めつける。
「馬車に戻って、待っててちょうだい!」
怒りを込めて吐き捨てるが、彼は護衛するのが仕事だからと、私のすぐ背後を、ついてくる。
「もうっ! ついて来ないでって言ってるでしょう?」
周りの視線が気になり、幾度も離れていてくれとヒステリックに懇願するが護衛に支障が出ると私の命令は聞かない。
「ここに入るわ。外で待ってなさい」
ランジェリーショップに入った。もちろんエバンと離れたいが為だ。だが、彼は普通に当然の如くお店に入った。
「えっ?」
「ん? どうされましたか?」
「いやいや、ランジェリーショップまで入ってくるなんておかしいでしょ?」
「ここは一人一人個室で、男性との同伴も可能だ」
「だからって恋人でもない護衛が入るわけないじゃない!」
もう出てってと大きな声を上げながら、エバンと一緒に出た。
「命令よ。ここに立ってなさい」
嫌気がさしてそう命令した。私にとって、外で常識を外れることは看過できない。だから主からの命令とは騎士にとって逆らえないとい知りつつ命令を下したのだ。
私は馬車に乗り、買い物を終えて帰宅した。エバンを残して……。
翌朝になってもエバンは帰って来なかった。
窓から陽光が差し込む。身支度を終えてもエバンはやってこない。
窓からランジェリーショップの方へ視線を向けた。
「まさかまだ立っていないよね……」
こんな小娘に邪険にされ、騎士としての命令を軽んじられた。きっと騎士のプライドが傷ついたはずだ。普通だったら怒って帰ってもおかしくない。けど……私は頭を振って考えないように背けた。
翌々日もエバンは戻って来ない。空は曇天で雨が降ったり止んだりしている。
私は学校からの帰宅途中、更に雨足が強くなり土砂降りの雨が降る。馬車の窓びに石の礫が無数ぶつかる様な音がして、外を見れば雹が降っていた。
ランジェリーショップの方を見やる。
――まさかもう帰ってるよね。居たとしても、雨を避けた場所にいるよね。ご飯とか……食べてるよね。
だって人間って3日飲まないと死ぬって言うけどもう家に帰ったよね。
「ランジェリーショップにいって」
御者に声を掛け、向かった。
どうかいませんようにと、罪悪感に駆られ祈った。組んだ指の向こう側に目を向けるが篠突く雨で霞んでよく見えない。人影居るようには見えない。近づいても居なかった。ほっと息を吐く。醜い自己保身。自分のせいじゃなくて安心した。一応店主に確認しよう思った。いつまでいたのかわからないが、きっと迷惑になったに違いない。頭に血が登ってそんなことにも今更ながら気づいた。
馬車を降りてランジェリーショップのドアに手を掛けようとした時、慌てる足音が近づいてくる。目を向けると白い治療院の制服に身を包んだ回復術師が駆けてきて、目の前の扉に入っていった。訳がわからず、心臓が早鐘を打つ。もしかしてとやな予感が胸中を支配した。急いでランジェリーショップに入った。一番最初に目に入った店員に話し掛けた。
「あの、3日前店先に立っていた騎士様をご存知無いですか?」
「どちら様ですか?」
従業員は無愛想に言った。その目には、嫌悪と軽蔑の色が乗っていた。
「彼の主人です」
「貴族様だからって何でも許されるとお思いですか……いえ、失礼しました。体調を崩されて保護してます」
最初の声は怒りに満ちていたが、徐々に冷静さを取り戻し、酷く事務的に従業員は言った。今では営業スマイルを貼り付け別室に案内した。
申し訳なさと恥ずかしいと自己嫌悪。首輪を付けていることよりも、自分の浅はかな行動が何より恥ずかしかった。だから俯いて背中を丸めて歩いた。
どうぞと従業員がドアを開けるとエバンがソファに座って、回復術師の治療を受けていた。幸い少し衰弱した程度でだった。彼を立たせておいた今まで、ずっと立っていたらしい。それなのにも関わらずこの程度で済んで回復術師も驚いていた。
彼の元へ駆け寄って跪き、手をとって祈るように両手包んで懺悔した。
「ごめんなさい」
浅はかな行動だった。大人なら帰るだろうと思った。彼の忠誠心を軽んじていた。自分から遠ざけることはやめようと、それが償いになるかもしれない。
「エバン、もう二度と貴方の手を離しません。生涯貴方を信頼します」
そう約束した。然し、それは守れなかったことはまだ知らない。
申し訳ございません。
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これから買い物に行く予定で、今エバンと馬車もう何度目かのやり取りだろうか……。
「それ外してください。外出中だけでも」
「いえ、これはあなたの犬という証なのです。これは私の誓いであり、忠誠心であり、誇りでもあります。私の全てはアルセナ姫のものです」
そうエバンはドヤ顔で言った。まるでいらない棒切れを持ってきた犬が、いいことをしたとでも言いたげに、褒められるのを待っているみたいに。
その様子が私を更に苛立たせる。
私はまともな令嬢だ思う、たぶん。それなのにそんな凶器みたいなビスが付いた首輪を着けさせているなんて我慢ならない。そう、私が許せるのは邸宅内の話で、外出先でまで首輪つけさせるつもりは無かった。エバンの憧れの叔父夫婦も外ではきちんとさせているのだし、私達もそれに倣うべきだと言ってもエバンは首を縦に振らなかった。
馬車が止まり、御者が目的地の到着を報せた。
「ここで待っていて」
エバンは私が立ち上がるより先に馬車を降り、手を差し出したが、彼を睨めつける。
「馬車に戻って、待っててちょうだい!」
怒りを込めて吐き捨てるが、彼は護衛するのが仕事だからと、私のすぐ背後を、ついてくる。
「もうっ! ついて来ないでって言ってるでしょう?」
周りの視線が気になり、幾度も離れていてくれとヒステリックに懇願するが護衛に支障が出ると私の命令は聞かない。
「ここに入るわ。外で待ってなさい」
ランジェリーショップに入った。もちろんエバンと離れたいが為だ。だが、彼は普通に当然の如くお店に入った。
「えっ?」
「ん? どうされましたか?」
「いやいや、ランジェリーショップまで入ってくるなんておかしいでしょ?」
「ここは一人一人個室で、男性との同伴も可能だ」
「だからって恋人でもない護衛が入るわけないじゃない!」
もう出てってと大きな声を上げながら、エバンと一緒に出た。
「命令よ。ここに立ってなさい」
嫌気がさしてそう命令した。私にとって、外で常識を外れることは看過できない。だから主からの命令とは騎士にとって逆らえないとい知りつつ命令を下したのだ。
私は馬車に乗り、買い物を終えて帰宅した。エバンを残して……。
翌朝になってもエバンは帰って来なかった。
窓から陽光が差し込む。身支度を終えてもエバンはやってこない。
窓からランジェリーショップの方へ視線を向けた。
「まさかまだ立っていないよね……」
こんな小娘に邪険にされ、騎士としての命令を軽んじられた。きっと騎士のプライドが傷ついたはずだ。普通だったら怒って帰ってもおかしくない。けど……私は頭を振って考えないように背けた。
翌々日もエバンは戻って来ない。空は曇天で雨が降ったり止んだりしている。
私は学校からの帰宅途中、更に雨足が強くなり土砂降りの雨が降る。馬車の窓びに石の礫が無数ぶつかる様な音がして、外を見れば雹が降っていた。
ランジェリーショップの方を見やる。
――まさかもう帰ってるよね。居たとしても、雨を避けた場所にいるよね。ご飯とか……食べてるよね。
だって人間って3日飲まないと死ぬって言うけどもう家に帰ったよね。
「ランジェリーショップにいって」
御者に声を掛け、向かった。
どうかいませんようにと、罪悪感に駆られ祈った。組んだ指の向こう側に目を向けるが篠突く雨で霞んでよく見えない。人影居るようには見えない。近づいても居なかった。ほっと息を吐く。醜い自己保身。自分のせいじゃなくて安心した。一応店主に確認しよう思った。いつまでいたのかわからないが、きっと迷惑になったに違いない。頭に血が登ってそんなことにも今更ながら気づいた。
馬車を降りてランジェリーショップのドアに手を掛けようとした時、慌てる足音が近づいてくる。目を向けると白い治療院の制服に身を包んだ回復術師が駆けてきて、目の前の扉に入っていった。訳がわからず、心臓が早鐘を打つ。もしかしてとやな予感が胸中を支配した。急いでランジェリーショップに入った。一番最初に目に入った店員に話し掛けた。
「あの、3日前店先に立っていた騎士様をご存知無いですか?」
「どちら様ですか?」
従業員は無愛想に言った。その目には、嫌悪と軽蔑の色が乗っていた。
「彼の主人です」
「貴族様だからって何でも許されるとお思いですか……いえ、失礼しました。体調を崩されて保護してます」
最初の声は怒りに満ちていたが、徐々に冷静さを取り戻し、酷く事務的に従業員は言った。今では営業スマイルを貼り付け別室に案内した。
申し訳なさと恥ずかしいと自己嫌悪。首輪を付けていることよりも、自分の浅はかな行動が何より恥ずかしかった。だから俯いて背中を丸めて歩いた。
どうぞと従業員がドアを開けるとエバンがソファに座って、回復術師の治療を受けていた。幸い少し衰弱した程度でだった。彼を立たせておいた今まで、ずっと立っていたらしい。それなのにも関わらずこの程度で済んで回復術師も驚いていた。
彼の元へ駆け寄って跪き、手をとって祈るように両手包んで懺悔した。
「ごめんなさい」
浅はかな行動だった。大人なら帰るだろうと思った。彼の忠誠心を軽んじていた。自分から遠ざけることはやめようと、それが償いになるかもしれない。
「エバン、もう二度と貴方の手を離しません。生涯貴方を信頼します」
そう約束した。然し、それは守れなかったことはまだ知らない。
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